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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
159/221

過激派のお話。

椿「……妾は主役?」

作者「……前半だけ」

 「………ほぉ? また可愛らしいのが来たなぁ」

 「おいヒビキ、なんじゃこの妾とキャラ被りしとるやつは」

 「キャラ被りとかあんま言うな。この人はハヅキさん、竜族の城主様」

 「ハヅキ・タカミネや。よろしゅうな」

 「椿じゃ。言っておくが妾は神族じゃからな、敬えよ」

 「いいからお前は事をややこしくするな………すみませんハヅキさん」

 「ええよ、気にせんといて」



 満月の夜、先ほどまで静かだったこの夜は椿の登場によって一気に賑やかになった。

 久しぶりの登場ということで若干テンションが上がっているのであろう椿を響が抑え、ハヅキは面白いものを見るようにケタケタと笑っていた。



 「にしても随分と遅い登場じゃないか椿。疲れてたのか?」

 「あれだけの大魔法を撃ったんじゃ。しかも起爆剤は妾じゃぞ、疲れない訳なかろう!」

 「ま、俺も昏睡状態だったけど……」

 「おかげで魔力がすっからかん、お主の魔力がなければもう数年は消えてたじゃろうな! かかかかっ!!」



 椿は笑っていた。

 このまま話を続けると椿のペースに飲み込まれて朝まで話し込むことになりそうだったのでまた寝床に戻ることにした。

 ハヅキに先に戻りますと伝え、復活したばかりで元気な椿を連れて行って再び布団に潜ってスヤスヤと寝た。



 「………なんで布団に入ってんだよ」

 「二人の方が温かいじゃろ?」

 「まぁ……いいか」


 


 翌朝になって響が目を覚ますと椿はくるんと丸まって響の抱き枕要員になっていた。

 そして何故か先に目を覚ましていた他のメンバーにまじまじと見られていた。



△▼△▼△▼△



 その日、響たちは竜族の冒険者ギルドで様々な任務をこなしていた。

 基本的には固まって行動していたが度々竜族の冒険者の人たちと共に組んで協力し合っていた。



 「稼いだ稼いだ!」

 「上機嫌じゃねぇの響、どした」

 「ここんとこ暴れ足りなかったからさ、さっきまでトリガーハッピーだった」


 

 おかげで竜族の人たち引いてたけどな、と響は影山に軽く茶化すように言うが周りの冒険者たちは響を見るなり少なからず一回は会釈なり挨拶なりをしていた。



 「………お前、異世界こっち来てから変わったな」

 「……仕方ないだろ。ほら、郷に入れば郷に従えって言うし。お前はどうだった?」

 「まぁ………軽く二段ジャンプを少々」

 「人の動きじゃないな」

 「お互いにな」



 などと話していると何やら周りがざわざわし始めた。

 最初はどこかのパーティーが会話しているくらいの程度でそれほどでもなかったのだが、次第にギルド中に広まっていき、誰かに聞かなくても会話の断片が聞き取れた。



 「観測所が―――――」

 「―――――が波みたいになって―――――――らしいぞ」



 あまりに多くの会話が混然としていたために断片的にしか聞こえなかったが不穏な会話であることは予測できた。

 それからすぐにギルドの上にある鐘楼の音が鳴り、周りの竜族の冒険者たちが慌て始めた。



 「なんだなんだ?」

 「分かんねぇ……敵襲か? ほら、ここって魔王大陸と近かっただろ」

 「あぁあんた! さっき一緒にパーティー組んだあの………凄い武器のやつと二段ジャンプのやつ!」

 「ヒビキ・アルバレストです」

 「セイヤ・フォルテインです」

 「丁寧にどうも。俺は――――――ってそんなことしてる場合じゃねぇ! 何のんびりしてんだよ!」

 「…………何が起こっているので?」

 「そういやあんたら他種族か。なら仕方ねぇ、教えてやる。魔王軍の奴らが攻めてきた! やつらここ()()で急に激しさを増しやがった―――――!」

 「四年………」



 ここ四年、ということはアザミが本性を表してから響と椿によって撤退を余儀なくさせられた後ということに他ならない。

 響と影山は立ち上がってともに来ていた梓たちと合流し全員街へと出た、街では非戦闘員が流れるように避難場所へと移動し、冒険者ら戦闘員は襲撃があったと報告されている場所へと向かっていった。



 「聖也、グリムさんたちとの連絡を頼んだ。俺は先に行って様子を見てくる」

 「分かった。梓たちは響と一緒に行ってくれ。あ、あとハーメルン、念のためについてきてくれないか?」

 『構わないよ。何か騒動があった場合は私の能力の使いどころだからね』

 「私も同行しますわ! 交渉くらいならば私もきっとお役に立てると思いますわ!」

 「……よし。じゃあ響、そっちは任せた」

 「おう。そっちも気を付けろよ」



 響たちは二手に分かれて片方は件の戦場へ、もう片方はグリムたちやハヅきたちの元へとそれぞれ大急ぎで駆けつけた。



△▼△▼△▼△



 「怯むな! 相手はただの魔物たちだ! こんな…………うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 「あぁちくしょう! もうこんなことばっかだ! 一体どうなっちまったってんだ!!」

 「嘆いてももう遅いわ!! どうにかしてやらなきゃ………あの光は?」



 戦場にて、冒険者たちが殺し殺されていた。

 そして舞台は竜王大陸の領土である荒野と、魔王大陸の領土である暗き森との間で行われていた。



 

 とある冒険者の一人が嘆く冒険者を叱り、自分も覚悟を決めると暗き森の中から怪しい光源を確認した。

 冒険者がその正体に気付くより一歩早く、一直線に紫色のレーザーが放たれた。



 「防御――――」



 気づいた冒険者も即座に防御魔法を詠唱し始めるが遅い。

 冒険者は途中で詠唱を止め眼前に迫りくるレーザーに対して目を瞑り死を覚悟した。






 だがいつまでたっても何のダメージも自分になかった。

 不思議に思い恐る恐る目を開けるとそこには片手で防御魔法を発動させてレーザーを完全に防いでいる少年の姿があった。



 「……無事ですか?」

 「え………えぇ、助かったわ」

 「それは良かった」



 その少年―――――響は更に防御魔法に魔力を込めると障壁はレーザーを吸収してその色に怪しく発光しながら縮小、それを響は真っすぐに放ってリリースすると森の中へと吸い込まれるように消えていき、その数秒後爆発し紫色の爆炎を黙々と立てた。



 「すご………って、え、なに? 体浮いてる!?」

 「お、俺もだ!? な、なんだなんだ?」

 「これより皆さんを一時の間、全員後退させます。その隙に物資の補充や回復を」

 「うおおおおおおおおおおお!!?」



 響は「ニュートンの林檎」を使って自分より前に出ている冒険者たちを全員後ろへと後退させ、響は全員の避難が終わったことを確認して適合能力である「兵器神速ノア・ウェポン」を発動して多種多様な銃火器を自分を中心として左右にいくつも作り上げて浮遊させた。



 それを見た竜族の冒険者たちは突如として目の前に現れた未知の武器の数々に絶句して驚いたが、何よりも驚いたのが自分たちを勝手に移動させてその武器群を作り上げた響に対してだ。




 「ここを最終防衛ラインとして設定、一掃する!」




 響は腕を組みながらはっきりとそう言った。

 その瞬間無数の銃火器が轟音と共に銃弾を発射して森の木々もろとも削り取っていった。

 轟音に掻き消されつつも森の奥からは魔物たちの悲鳴や断末魔が微かに聞こえ、やがて全ての弾薬が無くなると戦場は静寂に包まれた。










 『ああああああああああああああああああああああああ!!!!! っもうさいっっっっっっっあく!!! 何なの一体いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!』

 

 「……………」

 



 木々が銃弾によって削られて薙ぎ倒され、視界が開けた先にいたのは唯一無傷で大声で嘆き叫び不満を粟原にする褐色肌の人物だった。



 『ああああああ……………あんただろ!! 今のやったの!』

 「そうだが」

 『はぁ……ったく、ふざけんじゃねぇよ! 規格外過ぎんだろうが!! もう仕方ねぇ………』



 褐色の魔族の人物は地面に巨大な魔方陣を展開させた。

 するとなんと先ほど殺したはずの魔物たちが屍の状態のまま立ち上がりまた動き始めたのだ。




 「これは……禁術か?」

 『そんな生易しいもんじゃねぇよ! アザミ様から頂いたこの力………存分に試してやる!』

 「アザミ!? まさか……お前らの後ろについているのはイグニスではなく……」

 『ああそうさ。もうイグニス様はいない、でもその代わりにアザミ様がやって来てくれた! 強大な力を、私たちに与えてくださったのだぁぁあぁあああああああああああぁぁぁぁあぁあぁぁぁあああああぁあぁあああああああああぁぁああああああああああ!!!!!!』




 奇怪な高笑いを上げるその魔族を響は睨みつけて、両手にデザートイーグルを作り出して装備した。




 「お前には色々聞かなきゃならないみたいだな。悪いが捕らえさせてもらうぞ」

 『そりゃこっちの台詞なんだよなあぁああああああああああああああああああああああ!!?』

 「来るぞ」



 響の後ろに控えていた梓たちも戦闘態勢を取って前に出た。

 屍たちと生者たちの戦い、その幕が切って落とされた。

フラン・リナリア「「次回は私たちが暴れます!」」

作者「善処します……」

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