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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
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宴会のお話。

大体戦った後は酒盛りって相場が決まってるんですよ

 「いやーははは! 愉快愉快!」

 「師匠、あまり飲みすぎないでくださいっす」

 「ええやないかこんな時くらい。なぁヒビキぃ?」

 「あ、あはは……」



 戦い、もとい親善試合が終われば待っているのは夜の宴。

 もはや恒例行事の一つと化したこの宴は本来「ようこそ竜王大陸へ」みたいな歓迎会として開かれるのだが他の大陸同様大体が何かしらの戦闘の後に行われるのでいつの間にか本来の役割は誰にも残っていなかった。



 あの戦いの後、響たち五人はギャラリーとして試合を見ていた竜族の人たちから鳴り止まないほどの拍手と喝采を浴びた。

 その中でもやはり響は長であるハヅキと互角以上の戦いを繰り広げ、「本気のハヅキ様は久しぶりに見た!」と、ある意味で一番ギャラリーを興奮させた。


 

 「なぁもっとこっちに寄ったらええのに、何を恥ずかしがっとるん?」

 「いやその……近い、です、から………」

 「可愛いなぁ。あー、もしかしてこんなかの誰かと付き合うとるん?」

 「………まぁ」

 「ほんまに!? えぇなぁ、青春やなぁ」



 現在宴会はよくある一般的な宴会と同じ感じに進んでいた。

 場所は王室という名の完全な和室、畳の上に座って料理を響たち客人は楽しんでいた。

 並び順はバラバラでハヅき自ら「今日は無礼講や」と各々自由にしてほしいと言ってくれたため皆失礼にならない程度に羽目を外していた。



 現在宴会が始まってから二時間少々が経ち、勇者組は段々と酒が回ってきたようでハイラインを始めとしてハヅキも気が大きくなってきた。

 グリム・スライン・ゼノの三人はまだほろ酔い程度で収まっているがそろそろグリムが怪しくなってきている。

 ハヅキは酒の入ったグラス片手に右にソフィー左に響を侍らせていた、どうやら響は先の試合で気にいられたようだ。



 そしてさっきのハヅキの質問――――彼女は居るのかという質問に対して響がはいと答えたことによってハヅキの酒の肴が増えより一層やかましくなり、何を思ったのか梓とアリアの二人が並んだ響の横を陣取った。

 


 宴会もそろそろお開きかという頃、片づけを使用人の人たちに任せて一同はゆっくりしていた。

 ハヅキは煙管を吸いながら響に質問をした。



 「そやそや、ずぅっと気になっとったんけどなぁ?」

 「あ、はい。なんでしょうか?」

 「あの時、あてを殺そうと思えばいつでも殺せたやろ。手ぇ抜いたな?」

 「………いえ、そんなこと」

 「いーや、あった。それに、あての幻に感づいた時にも色々と対策出来たやろ? アザミはんに転生させられたんやったら何かしらの能力貰うとるんやないの?」

 「貰っていますが……殺しかねないので」

 「やっぱり手加減しとったんやないか。どんな能力なん?」



 響は自分の適合能力の事を少し話した。

 ハヅキは響の能力を聞いて「なるほどなぁ」と相槌を打った、恐らく響の適合能力は転生者の中でもトップクラスの殺傷能力がある適合能力だろう。



 話してくれたお礼としてハヅキは自分の適合能力について話してくれた。

 能力の名前は「変幻自罪ウィッチズ・ドリーマー」、最大四人まで全く気付かれないレベルで相手に簡単な幻惑を見せ続けるというもの。

 そんな話をしていると後片付けが済み、響たちはお風呂に入ることにした。

 男性用の浴場と女性用の浴場が分かれているためそこで別々に分かれ、男性陣はむさくるしい空気の中温泉に浸かって疲れを癒した。



 「はぁ~………極楽極楽」

 「足伸ばせるって良いなやっぱ」



 響と影山は十数年ぶりの天然温泉に浸かりながら至福のひと時を味わっていた。

 風呂上がりにキンキンに冷えたお茶を飲んで食堂から胃にかけてを急速に冷やしていった。



 「はふーっ! いい湯だった—!」

 「ほんとですわね、今度フォートレス家にも導入しようかしら」

 


 女性陣も続々と上がってきたようで、風呂上がりの女子というなかなかお目にかかれない男性特攻シチュエーションを引っ提げて梓たちが響たちの元へやって来た。

 それからハヅキの計らいで大部屋を貸してくれることとなり、ベッドではなく馴染みのある布団で寝ることになった。



△▼△▼△▼△



 「ふぐっ………!」

 「ししょ~…………ぅぇへへへ…………」

 「ソフィーさん寝相悪い系か…………」



 響は夜中、ソフィーに腹部をかかと落としされた衝撃で目が覚めた。

 「兵器神速(ノア・ウェポン)」で時計を作りだして低級魔法で小さな灯を作り出して時間を確認した、午前一時だった。



 「なーんか………毎回毎回碌に眠れんのはなんでだろうか……」



 響は頭をポリポリと書きながらため息を吐いて布団から抜け出して欠伸を何回かしながら夜風に当たるべく部屋から出た。

 途中、水の流れるサラサラとした音が聞こえ、その方向に歩いていくと池のある庭園へと抜けた。



 「あれ、ハヅキさん?」

 「んんー? なんやあんさんか、どないしはったんこんな夜中に」

 「……ちょっと目が覚めちゃいまして。ハヅキさんは?」

 「あてもそんなところや」



 庭園にはハヅキの姿があった。

 もう酔いが覚めていたようで口調も出会った時のそれに戻っていた。

 響はハヅキの隣に立って夜空に浮かぶ綺麗な満月を眺めていた。



 「そう言えば、あいつと会った日の夜もこんな感じだったか………」

 「あいつ?」

 「あ……えーっと、神族の奴と知り合ったんです、夜じゃなくて昼でしたし戦場でしたが」

 「ほほほ! それはもしかしなくても妾のことかえ?」



 響は椿と出会った時のことを思い出していると、その背後から懐かしい声が聞こえた。

 響はその声に振り向く前に一度軽く笑った。



 「随分と遅れた挨拶じゃないか、椿」


 

 響はそう言ってからようやく後ろを振り返った。

 そこには子供くらいの背丈で赤と黒の着物を着て高下駄を履いた黒髪長髪の少女が立っていた。



 「久しいの、ヒビキ。会いたかったぞ」



 椿はにっこりと笑った。

椿「次回は妾が主役じゃ!」

作者「………えっ?」

椿「えっ?」

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