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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
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先人のお話。

はんなり系(?)城主

 今この場には本来この世界の住人ではない「転生者」が四人いる。

 中身こそかなりの大人だが外見はまだ少年少女の三人、そしてもう一人は煙管を吹かしている着物に身を包んだ竜族の長。



 「まぁ立ち話もなんやから、適当に座ったらよろしよす」

 


 響たちは促された通りに畳の上に座った。

 響と影山と梓の三人はなんとなく正座で座り、それを見た他のメンバーがそれに倣って正座をした。

 慣れない座り方なのだろうか若干辛そうだった。



 「にしても……ソフィー、ほんま変わらんなぁ。まだまだ子供やのぅ」


 「そ、そうっすかね師匠。自分これでも成長したつもりなんすけど……」


 「まだまだ子供や、正確に言えば胸のところがまだ未発達……」


 「そこは結構気にしてるんだから言わないでくださいで欲しいっす!!」


 「あははは! 冗談やよ、ちょっとは大きくなったんやないか?」


 

 しばらくハヅキとソフィーの談笑が続き、響たちは中々本題に入れなかった。

 というよりもそもそも何を話すのかを勇者組以外はあまりよく分かっていない状態で、一応海王族の時と同じようなことを話すのだろうなと何となく思ってはいるのだが、あくまでも予想の範疇を出ない。



 そろそろ足が痺れてきた頃、ハヅキは「そやそや」と思い出したかのように響と影山と梓の三人をピックアップして近くに寄るように手招きした。

 果たして行ってしまっていいものかと三人はちらりとゼノの方を見るとゼノは無言で頷いたため三人は立ち上がって畳の淵を踏まないようにハヅキの近くに座った。



 それからハヅキは他の皆にも足を崩していいと言って、響たちは正座から足を崩して楽な座り方を各々取った。

 ハヅキは響たちの方を何やら品定めをするような目で見ていた。



 「あの……何か?」


 「んん? いやいや、あて以外の転生者も珍しいなぁ思って。初めて見たわ」


 「………まだ他に六人くらい人王大陸に残ってますけどね」


 「六人!? はぁー、そんなにおるのか。集団で来たのかえ?」


 「一人は違いますけど……まぁ、はい」


 「そら賑やかで楽しそうやねぇ。あ、忘れとったわ。今お茶用意させますんでちょいと待っててください」


 「あ、お構いなく」


 「ふふっ、久しぶりに聞いたなぁそれ」



 ハヅキは使用人の人にお茶を用意させるように言うと戻ってきて座り直した。

 グリムは上手く雰囲気の変わった空気の中でハヅキに話を切り出した。



 「ハヅキさん。最近魔王大陸の様子はどうでしょうか」


 「なんや急に。別にいつもと変わらへんよ………ああでも、最近はちょっと変わってきてるかなぁ……?」


 「……変わってきてる、ですか?」


 「まぁ、その話はお茶が来てからゆっくりしましょ? あては今、この子たちと話がしたいんよ」



 そう言ってハヅキは響たち三人にずいっと顔を近づけて三人の反応を楽しんでいた。

 グリムたちはその光景を奇妙なものを見る目で見て、響たちの真実を初めて知ることとなったソフィーやハイラインにスラインそしてグリムは目を丸くしていた。



 「おい姉御、ヒビキたちってそんな奴らなのか? 転生者って言ってたぞ?」


 「……そのようだな」


 「そのようだなって、軽いなぁおい」


 「仕方ないだろう。とやかく言うようなものでもない」


 「世の中には不思議なことがあるものですね」


 「師匠も大概っすけどあの三人も凄いっすねー………マリアさんは知ってたっすか?」


 「ええ。魔法学校の頃に。懐かしいですわ」



 他のメンバーがそう話している頃ハヅキと響たちも会話をしていた。

 話の話題はお互いが転生者ということもありこの世界に来てから変わったことや印象など、留学生にこの国のどこが好きですかと聞くようなベタなものばかりだった。

 そして話題は自分たちを転生させたものについて変わった。



 「そやそや、あんさんらはどうやってこっちに来たん? そないに集団やとかなりの魔力を消耗するはずやけど」


 「………東雲アザミ、という人物です」


 

 響は半ば答えずらそうにアザミの名を出した。

 影山と梓もアザミの名を聞いてやや俯いてしまう、あんなことがあったのだから仕方がない、むしろアザミの本性を知った上でなおも変わらずに接しようというのであればそれはよほどのお人よしに違いないはずだ。


 しかしハヅキはそんな三人とは真逆に声のトーンが一つ二つ上がるくらいに喜ぶような反応を見せた。

 先ほどからずっと積極的な感じではあったが今度はより好奇心が増したように響たちに詰め寄った、それはまるで世紀の発見をした科学者のようでもあった。



 「ほんまに!? あてもや! こんなことってあるんやなぁ」


 「……一緒?」


 

 影山がそう呟いて人差し指を曲げて顎に当て、考え事をしていた。

 ハヅキが「どしたん?」と声をかけるも考え事に思考を持っていかれていたのか一拍半遅れて「あぁいえ! なんでもないです!」と返事していた。

 影山が何を考えているかは響と梓には分からなかったが、すぐさまスキル「意思疎通」によって二人の脳内に影山の声が鳴り渡った。



 「(なぁおい二人とも。ちょっと分かっちまったんだけどよ)」


 「(なんだどうした)」


 「(ただ気になっただけなんだけど、もしかして東雲さんが関わってるのってやっぱりなんかあんのかなって………)」


 「(それって、アザミちゃんが初めから何か作戦を企ててたってこと?)」


 「(かもしれない)」


 「どないしたん、三人とも黙って」


 「(とにかくまだ確証はないからあまり……)」


 「(分かってる)」



 響たちは一度意思疎通を切ってなんでもないことをハヅキに伝える、ハヅキは怪訝そうな顔をしていたが「まぁええわ」とあっけらかんとしていた。


 そうこうしている内に使用人の人が湯呑から湯気の立つ人数分のお茶を持ってきた。

 湯呑越しの熱さに翻弄されながらも一口お茶を啜り、響たちは一息ついた。



 「そう言えば、三人は適合能力もってはるん?」


 「はい。ということはハヅキ……様も?」


 「様なんて畏まらんでええよ。ハヅキでええ」


 「ではハヅキさんも適合能力をお持ちで?」


 「勿論。アザミはんに貰ったわ」



 そこまで言うとハヅキは一つ手打ちをして「そや!」と何か思いついた。

 


 「折角来たんやし、腕試しでもしませんか?」


 「あー…………」



 響たちは思った。

 やっぱりこうなるのかぁ………と。


 やはりこの世界には血の気の多い人がたくさんいるらしい、しかもそれはどうやら転生者にも感染するようだ。

 結局いつも通り竜王城の屋敷の中………ではなく、竜王大陸が公的に設けられている決闘場なる場所へと響たちは連れて行かれた。

 昔から竜族は何か揉め事やどうしても決まらない事柄があった場合に拳で語り合うというなんとも雑な方法で解決しているらしく、公的な場合は必ずこの場所で戦わなければならないらしいのだ。



 「さて、ゼノとソフィー。こっちへ」


 「はい」


 「了解っす!」


 

 ハヅキは自分の種族の勇者であるゼノと直接の弟子のソフィーを自陣に引き入れて戦闘は三対十となった、が、流石にそれでは数の差が凄いのでメンバーが選出されて響・影山・梓・アリア・フランの五人が代表して戦うこととなった。



 「ふふふ、ぞくぞくしはりますなぁ」


 「ハヅキ様。お怪我だけはなさらぬように」


 「師匠は自分が守るっすよー! 成長したとこ見せて見せるっす!」


 「頼もしいなぁ。ほな、行こか」



 そう言っていつの間にか集まっていた観衆の中、手合わせは行われた。

次回、戦闘パート?

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