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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
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相違のお話。

海王勇者登場

 浦島太郎の話は、誰しも一度は聞いたことがあるだろう。

 その話の中に「竜宮城」という場所が登場する、タイやヒラメが舞い踊り美しい乙姫様がいる桃源郷だ。

 


 海王大陸、もとい海底都市。

 そこはまさにその「竜宮城」そのものだった。

 響と後からやって来た影山は棒立ちしてその絢爛豪華な建物の数々が並んでおり、場所の雰囲気としては商店街とかが近いのだろうが何より規模と豪華さが違った。



 「あっすご!! みんな~! 外のお客さんよ~!!」


 「ほんとだー! ねね、あれって人族じゃない?」


 「他の種族って初めて見た!」



 そんな時、海王族の女性たちが響と影山という他種族を見つけるや否や一斉に興味を示しだした。

 いきなり何が起こったのかと響と影山は目配せをしてたじろいだがそれを上回る勢いで二人は海王族の女性たちに囲まれた。



 「響、これ、やばい……!」


 「分かる……分かるぞ……聖也っ!」



 響と影山の二人は顔を真っ赤にして緊張していた。

 なぜなら海王族の女性はほとんどがボンキュッボンのとてつもないスタイルの持ち主だからだ。

 下半身は魚で上半身はそれこそ水着というか下着というか、そんな格好をしてスタイルが良い海王族の女性たちを分かりやすく例えるならば量産型人魚姫。



 常に海王族の女性たちは目のやり場に困る格好でいるため他種族に見られたくらいで今更恥ずかしがったりはしない、海王族の男性たちも常日頃からこのような格好を見ているため今この場でドギマギしているのは二人くらいなもの。




 というか恐らく海王族に衣服の概念はさほどないのだろう、大事な部分だけ隠せていれば大丈夫なのかもしれない、むしろこの海の中で服を着る方がお門違いというものだ。

 それを証明するかのように、ここまで見てきた海王族たちで響たちのように服らしい服を着ている者は誰一人いなかった。



 「あたしこっちの義手の子好みかもー!!」


 「私はこっちのイケメン君かなー!」


 「二人とも、お姉さんたちとー………あ・そ・ぼ?」


 「響!」


 「分かってる!」



 響と影山は咄嗟に「ニュートンの林檎」の発動範囲を広げてお姉さんたちの行動を抑制、その隙にするりと抜け出して走り去った。

 後ろからは「待ってー!」という黄色い声が聞こえたが二人はそれに構うことなく物陰に身を隠した。

 それに響には結婚を約束した彼女が二人もいる、これ以上は浮気事案になりかねない。



 一方で影山は残念そうにしていた。

 その理由は響にもなんとなく分かった、長年の友はまだ恋人と呼べる人が出来たことがなかったからだ。



 「逃げてきて、良かったのか聖也? ハァ……お前のモテ期あれだったんじゃないのか?」


 「冗談キッツイぜ響。あれはもう痴女の領域だ、管轄外」


 「だろうな……」



 響たち他種族が来たという話はたちまちこの街全体に広まり、響と影山の二人だけではなくマリアやハーメルンが逃げ惑う姿がちらほら確認できた。

 やがて自由時間が終わり夕食時、戻ってきた全員は何処か疲れ果てている様子で夕食時の会話も少なかった。

 ただ一つ話題があった、「海王族やべぇ」という抽象的であり具体的な話題が。



△▼△▼△▼△



 翌日、海王族の勇者ネプチューンが帰ってきたらしく響たちは朝からあの大きなホールへとやって来ていた。

 目の前の階段を上った先にある玉座には相も変わらず上半身裸のでっぷりとした体型の王様が頬杖をついていた。

 そこへ扉が開き、一人の若い海王族の男性が女性を何人も侍らせてやって来た。



 そして今更なことだがどうやら海王族の人たちはこの大使館の中では水の中じゃなくても普通に生活している、何か魔法でも使っているのだろうかと響やアリアやフランなどの魔法好き組が色々と思考を巡らせていた。



 「遅っせーぞ、ネプチューン」


 「ハイライン! ひっさしぶりだなぁ! いや、わりぃわりぃ」


 「ネプチューン、貴様は勇者としての自覚を持てと何度も言っているだろう!」


 「へーへー分かってますよー国王様ー」


 「まずはそこの者たちに謝罪しろ、誠意を示せ」


 「あー………すまねぇ客人方、許せ」



 初期のハイラインよりもやる気がなく、それでいてどこかふわふわと浮ついている雰囲気の海王族勇者ネプチューンは頭を掻きながら侍らせていた女性たちをはけさせた。

 それからネプチューンを加えて響たちは場所を会議室へと変えた。



 「そーれでー? わざわざ何の用だ?」


 「お前も知ってんだろネプチューン。地上のことを」


 「……あぁ、まぁな。四年前のあれだろ? そっから魔物の生息区域がどうだのっつー」


 「その首謀者の正体をお前は知っているか?」


 「人族女神アザミって聞いたけど、それがどうかしたのか」


 「どうかしたのかってお前………この状況について何も感じないのか?」



 この中で一番親交のあるハイラインがネプチューンとの会話を進めていく。

 そしてハイラインの言葉に対するネプチューンの応答から察するにどうやらネプチューン、ひいては海王族は地上でのいざこざについては一切関与する気はないとのこと。



 今回響たち勇者パーティーがやって来た一番の理由は四年前の出来事が原因でもたらされた魔物たちの生態系についての究明、失踪した魔王イグニスと女神アザミの行方、そしてやはり最大の目的であるイグニスの討伐や魔王軍の解体のことを話し、共に行動してもらうためだ。



 何度も説明しても協力はしないの一点張りで、その意思は確固たるものだった。

 ネプチューンの話によれば、海王族は遥か昔から、それこそ聖戦武器と呼ばれる太古の武器が生まれる前からこの母なる海に住んでいるらしく、長い歴史の中で地上でのいざこざに首を突っ込むことは片手で数えるほどしかないとのこと。



 曰く、地上でのいざこざに巻き込まれて平和な海を脅かされるのはまっぴら御免だとのこと。

 まさに平行線だった。



△▼△▼△▼△



 「ダメだったか」


 「ダメだったな」


 「まぁしゃあねぇ。切り替えてこうぜ姉御、スライン」


 「………切り替えるのはいいが、これからどうするつもりだ。お前ら」



 交渉決裂。

 響たちは一度海王大陸から地上へと戻り、海岸に立っていた。

 勇者四人はこれからについて一体どうしたものかと考えていた。



 「………一度、竜王大陸うちに戻れ。そこで改めて作戦会議だ」


 「そうだな………ここはゼノの案に乗ろう。どうだ、二人とも」


 「姉御とゼノに一票」


 「私も。みんなもそれで構わないか?」


 『私たちは構わない』


 「だそうだ」


 「うむ。では一度竜王大陸へと戻ろう」





 そして響たち一同は再び竜王大陸へと戻った。

そろそろ戦闘にもつれこみたい

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