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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第八章:再び歩み始めるようです
151/221

習得のお話。

今年も一年、ありがとうございました!

よいお年を!

 「皆さん、一度集まってくださいませ」



 人王大陸に帰ってきて五日ほど経った頃、マリアは響たちをフォートレス家の中に設けられている一室へと集めた。

 響たちは一体なんだろうかと思いながらその一室へと向かい、全員が揃ったところでマリアが口を開いた。



 「集まりましたわね。早速ですが、皆さんの今後について少しお話をさせていただきます」


 「今後……ってことはまたグリムさんたちと一緒に?」


 「今から説明しますわ、セリア」


 「はい、お嬢様」


 「あ、セリアちゃん久しぶりに見た」



 マリアがパチンと指を鳴らしてセリアの名を呼ぶとセリアがノータイムで部屋のドアを開けて入ってきた。

 梓がうっかり漏らしたように久しぶりに、というかこちらへ帰ってきてからまだ一度も見ていなかったセリアはマリアよりも大人っぽくなり背も高くスレンダーで誰が見ても振り向くような美人さんになっていた。


 セミロングの茶髪やマリアに対する敬愛の意など、外見こそ大人びたもののこちらも根本的な内面は変わってい無いようで響たちは懐かしさを覚えた。


 

 「ではまず、こちらをご覧ください」



 そう言ってセリアがテーブルの上に一枚の大きな地図を広げた。

 そこには大陸の名前や種族の名前、それから主な魔物の出現位置・魔物の名前それから魔王軍に侵攻されている場所などが書かれてあるものだった。



 「これはヒビキ君たちが戦った後、新しく作られた最新のものです。これによると、魔王大陸の隣国である竜王大陸それから次に近い海王大陸が魔族との確執を作っていることが分かります」


 「海王大陸って、海なの? 大陸なの?」


 「正確には、海の中に都市がある形になります」


 「なるほど」


 「先ほど、騎士団の伝令役の方がグリム様より響様が目覚めたことを転移を駆使して報告したところ、準備が出来次第海王大陸で合流との言伝を残されたようです」


 「……便利だなぁ転移」



 改めて魔法という超技術の凄さを感じたところでセリアからマリアへとバトンタッチ、すぐさま今後の方針を立てるべく話を進めていった。

 ひとまずの目標はグリムたちが提示した海王大陸へ行くということだが、その海王大陸……正確には海の中の海底都市へと行くのは少々難しいらしいのだ。


 というのも、行くのは転移魔法などで可能なのだが、いくらなんでも酸素のない海の中で響たち人族は生きられず魔族であるハーメルンでさえ体の構造は人族とあまり変わらないので、多少長く潜れるとは思われるが生活したり会話するのは不可能という根本的な問題があるからだ。


 

 「ですが、ただ一つだけ方法がありますわ」



 マリアはそう言って高らかと方法を話した。

 その方法というのが、海の満ち引きを待つというもの。


 海王族の住む海は特殊な海で、満潮の時はそれはそれはとてつもない量の海水で満ち溢れるまさに大海なのだが、一定の周期で潮が引き、海底都市へと下ることのできる砂の一本道が現れるというのだ。


 

 「でもそれだと、海王大陸に入ることは出来ても呼吸は出来ないんじゃないのかい?」


 「うぐ……」


 『海中で生活する種族がわざわざ他の種族のために空間魔法などで済みやすくするとも思えない』


 「そ、それはー………その……」



 アリアとハーメルンの正論に言葉が詰まるマリア。

 マリアはうーんうーんと数秒思考した後にハッと何か思いついたような表情をして響を指差した。



 「ヒビキっ!」


 「え!? なに!?」


 「何か良いアイディアは!」


 「えー……えーっと、そうだな……」



 急に振られた響は多少困惑しながらも正論に潰されたマリアの案の代わりとなるアイディアを考えた。

 そして一つだけ思い付き口に出そうとするも実際に出来るのかどうか自分でも分からないのでそこでまた少し考えた。

 しかしマリアはそれを見逃しておらずすかさず響に「何か思いつきましたの?」とどことなく目を輝かせながらズイっと前に出て聞いてきた。

 観念した響は出来るかどうかわからないけど、と最初に言って考え着いたアイディアを言った。



 「空間魔法で、自分たちの周りだけ水を押しのけたりとかできないかなーって……」


 「……具体的には?」


 「具体的は……俺がいつもやってる()()みたいな感じでどうにかならないかな?」


 

 響がそう言った瞬間、全員が黙り込み思考した。

 何かまずいことでも言ったのかだろうかと不安になって、響は冗談だと付け加えようとした矢先、響を除く全員の口から一斉に同じ言葉だ出た。



 


 『「「「「「それだぁ!!!」」」」」』と。




△▼△▼△▼△




 「……え、あのさ、ほんとにやるの?」


 「当たり前ですわ!」


 「……ほんとになんであの案が通ったのか」



 現在、響たちはフォートレス家の中庭にいた。

 梓・影山・マリア・アリア・ハーメルンの五人が横一列に等間隔で並び、その前に教官のように響が立っていた。



 なぜこうなったか、理由は簡単、先ほどの響の案が採用されたからだ。

 響の案を噛み砕いて言うのなら、海の中で呼吸が出来ないのなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という頭の悪い理論だ。


 そして響の言った「アレ」とは空間魔法を応用した「ニュートンの林檎」のことで、これを自分たちの周囲に展開させて海の水をまるで自分たちと水の間に透明な壁があるかのようにはねのけるというもの。

 そのためにはこの魔法を長時間維持させることが何よりも重要、というわけで響が教官役となって五人にニュートンの林檎を習得させるということになった。



 しかも海底都市までの一本道が発生する日にちは明後日、しかし準備やグリムたちとの連絡その他諸々のことを考えて余裕を持たせなければならないため実質的には今日明日の二日間でマスターしなければならないのだ。



 「そういやマリア出来てなかったっけ?」


 「復習だと思ってください」


 「あぁ、うん。それじゃ早速教えるとします!」



 とは言ったもののこれが意外と難しい。

 何故かというとこの魔法は実体があるわけではない不可視の魔法、そのため頭で考えたりするよりは感覚で覚えなければならないのだ。

 

 いつも使っている響も、いざ教えるとなるとどういう風に教えたらいいのだろうか分からず、梓たちは感覚を掴めないでいた。


 そこでまず、自分たちの周りに展開するのではなく、遠隔で物を掴んだり動かしたりするところから始めた。



 「意外と難しいねこれ」


 「やっばい、頭おかしくなりそう」



 などとアリアや影山が弱音を吐いても時間は待ってはくれない。

 ニュートンの林檎の習得、ひいては空間魔法の使用技術向上を目指したトレーニングは昼夜問わず続いた。



△▼△▼△▼△



 そして、海王大陸へと向けて旅立つ日がやって来た。

 響は両親とカレンに行ってくると告げ、無き左腕を擦った。



 「……そう言えば、あれから椿見てないな」



 ぽつりと呟いた響。

 確かに響が目覚めてからというもの一向に椿を見ていない、それどころか誰も話題にしなかった。

 もしかしてと不吉な考えが頭をよぎるが響はそれをすぐに払った、自分が生きているのだからそんなはずはないと思ったからだ。



 二日間みっちりトレーニングした結果、全員無事「ニュートンの林檎」を習得し、準備は万端。

 今回カレンたちは同行しない、元々妖王大陸であったのはただの偶然だったためである。



 そして全員の準備と海王大陸へ行くための手順を確認し終えると、一人の兵士がやって来てグリムたちが海王大陸へと出発したとの知らせが入り、グリムたちとも待ち合わせ場所も確認したところで一行は出発した。

次回投稿は年明け。

新章入るかどうかは検討中…

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