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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第七章:絶対的な力が待ち受けているようです
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第二ラウンドのお話。

すまん!

遅れた!

 「派手にやられたなヒビキ」


 「どうして………」


 「リナリアから応援願いが来てな、そしたらフリージアも一緒だったんだ」


 「フリージア?」


 「お前に回復魔法かけてくれている奴だよ。妖族の管理を担当する女神だ」


 「初めまして。フリージアと申します」


 「ど、どうも」



 フリージアはぺこりと会釈して響の回復を助ける、切断された左腕からの出血はほどなくして止まり、そればかりか痛みも引いている。

 響はフリージアに感謝をして立ち上がり、再びイグニスと戦うために武器を構えた。



 「ヒビキ、あまり無茶をするでない。一旦さがれ」


 「いや……まだいける………まだ魔力も残ってるから魔法で……!」


 「自惚れるな! お主だけが戦力ではないわい!」


 「椿……だったか? の言う通りだ。一度下がれ」



 共に神である椿とアキレアに叱責され、響は下唇を噛みながら一度前線から離脱して後方からの遠距離攻撃を試みることにした。

 響が後ろへ下がるとその交代としてフラン・レイ・ヴィラの三人が前線へと赴き、響の側には梓やアリアが駆けつけた。



 「響!!!」

 

 「ヒビキ君!!」


 「梓……フラン先輩……ぃ!?」



 響が言葉を言い終わるか言い終わらないかの瀬戸際に梓は響にダイビングハグをして、まず響が生きていることを喜んでいた。アリアもアリアで普段よりどこか過保護的に心配してくれている。

 そこへ影山も合流して「大丈夫か!?」と心配してくれる、響は「あぁ、なんとか」と返事を返して梓をなだめながら戦況を見る。



 「……どうしたものかな」

 

 「ヒビキよ」


 「どうした椿」


 「妾は前へ出る、その間一人でも大丈夫じゃな?」


 「……あぁ」



 それだけ聞くと椿は頷いて一足地を蹴ると一瞬でアキレアたちがイグニスと戦っている場へと到着した。

 響は失った左腕にせっせと包帯を巻いてくれているフリージアを見ながら残った自分の腕を見る、切断されたのは肘と二の腕の中間あたりでこれではもう使い物にならない。

 残されたのは無傷の右腕だが、先ほどのように接近戦を仕掛ければまた同じような過ちを繰り返してしまうだろう。

 しかも対イグニス戦はアキレアや椿が本格参戦したことによってより一層激しさを増していた。



 『ハハハハハハハハハハ!!! イイゾ、血ガ滾ル!!』


 「堅い上にすばっしこいやつじゃのう、攻撃も重い」


 「……イグニス、お前………その力は……」


 『ホゥ? 気ヅイタカ女神アキレア?』


 「当たり前だ。こと響たちならともかく、私みたいな女神と互角に戦えるほどの力なんざ禁術うを使ってもギリギリだ」



 アキレアは拳を一振りしてイグニスを殴り飛ばす、その拳は炎を纏っており殴るというよりは肉を抉るよにしてイグニスに攻撃を食らわせ、イグニスはその重い一撃を両手でガードして数mほどノックバックした。

 アキレアは拳だけでなく至る所から炎を噴き上げながら怒気を孕んだ声でイグニスにこう言った。



 「てめぇ、一体()()()()を受けていやがる!」


 『………オ前タチノ仲間内ノ誰カ、トダケ言ッテオコウカ?』


 「……そうか、やっぱりそうか……」



 寂しそうに俯き気味にアキレアはそう言った、恐らくもともと予想していたのだろう。いつものあの血気盛んなアキレアがこんな顔をするとは、と、遠目から響はそう思った。

 イグニスはアキレアの拳を受けた両手を軽く振って一度二度捻って何かを確認するとアキレアの方を向かって笑いながら右足を一歩引くと、赤黒いオーラを纏った。





 比喩ではなく、視認できるほどのオーラ。

 その場の全員があれが魔法によるものではなく単純に魔力だけによるものだと肌で感じ取った。

 思わず身震いするほどの魔力、やはり、これまでは一切力を出してこなかったということだ。



 「ふぅむ? まだまだいけるとはいえ、中々厄介な気がするのう」


 「そういや、さっきから気になってたんだがあんた誰だ? 私はアキレア、獣族の管理をしている女神の一柱だ」


 「ほほほ、そんなことはとうの昔に知っておる。ずっとヒビキの中にいたからのう」


 「……どういうことだ?」


 「まぁあまり気にするでないぞ。妾は椿、神族じゃ」

 

 「神族……あぁ、なるほど。どうりでやけに神秘的な雰囲気のはずだ」


 「そう褒め称えるでないぞ!」



 アキレアにおだてられて目に見えてご機嫌な椿、着物の袖を口元に当てているおかげで口元は見えないが笑っているだろうことは容易に想像できる。

 だが忘れないでほしいのは二人の数m先にはイグニスが立っているということ、それでもこれほどの話が出来るのは、それが強者たる所以なのだろうか。

 イグニスは談笑する二人に話はもういいかと確認を取るように言い、二人はイグニスの方に向き直って無言で「来いよ」という雰囲気を醸し出す。



 『クハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』


 「……なんじゃあやつ、いきなり笑い出しおって」


 『ナルホドナルホド、神族ダトハコレ意外! 実ニ愉快ダ!!』



 イグニスは椿の正体が神族だと分かるとさぞ楽しそうに心の底からの笑いを上げた、腹を抱えてゲラゲラと笑う様はさながら無邪気な子供を彷彿とさせた。

 アキレアと椿はその様子に不信感を抱いてより一層警戒するがイグニスはそんなこと気にせず、今度は二人の方に目もくれずに響たちの方に向き直した。



 「まさかっ……!」


 「椿……!」



 その瞬間椿は一目散に響たちの方へと向かった、それも全速力で。

 アキレアはイグニスのその行動の真意に椿より数秒遅れて気づき、自分は椿とは反対にイグニスの方へと向かった。

 だがイグニスはアキレアに接触される前に障壁を作り出してアキレアを弾き飛ばした。



 「ぐっ……この程度の障壁!!」


 『割ラレルダロウナ、ダカラソノ前ニ手ヲ打ツトシヨウ』



 イグニスは左手で障壁を作り、残る右腕に魔力を集中させて禍々しい光球を作り出した。その光球は大きくなったりしぼんだりを繰り返しながら徐々に形を安定させていく。

 


 「ヒビキ!!! 全員そこから離れろ!!」



 椿がそう吠えた瞬間、イグニスの手から光球が放たれ真っすぐに響たちの方へと飛んでいった。

 その間に椿が割り込みその光球を受け止めるも椿はこれまで見たことがないくらいの苦悶の表情を浮かべて歯を食いしばっていた。

 やがて椿は光球を真上の遥か彼方上空をへと辛くも弾き飛ばした。








 光球は打ち上げ花火のように天高く舞い上がり、眩い光を放った。

 そして今までのどの魔法よりも大きな轟音爆音を鳴らしながら空の一部を飲み込むように巨大なエネルギー爆発を起こした。

 規模から言えば、恐らく椿が弾き飛ばさなければ響たちはおろか妖王大陸の国土の何割かが消し飛んでいたと推測される。



 「はぁ……っ! はぁ……っ!」



 それほどのエネルギーを持った光球を素手で受け止めた椿の手の平はぐじゅぐじゅに焼け爛れており、衣服の一部が焦げている。

 椿は肩で呼吸をしながら汗を流していつもの余裕を失っている様子だったがすぐさま焼け爛れた手の平を回復魔法で癒し衣服も元通りに戻していく。



 『マサカ、凌ギ切ラレルトハナ。流石ダト言ッテオコウ』


 「今の魔法、冥級はくだらなかったの。それで息一つ乱れんとは、末恐ろしいやつじゃ」


 『ダガ今ノデ膨大ナ魔力ヲ消費シタノモ事実デハアル。ソコノ餓鬼ドモヲ殺シタカッタンダガナ』


 「……なんじゃ、怖いのかこやつらが。いつか自分の寝首を掻く可能性のあるこやつらを今の内に摘んでおこうという魂胆じゃな?」


 『怖クハナイ……ガ、イズレ厄介ニナルノハ事実ダナ』



 確かによく見てみればアキレアの攻撃を受け止めている障壁が薄くなっている。

 勿論単純にアキレアがそうなるまで障壁を攻撃し続けたという理由もあるのだろうが、明らかに障壁への魔力供給が足りていない。

 そんなプラスチックのように割れやすい障壁などにアキレアが苦戦するはずもなく易々と障壁を粉々に粉砕してイグニスを蹴り飛ばした。



 魔力不足からか一瞬反応が遅れイグニスはもろにアキレアの攻撃を食らってしまう。

 が、しかし、そこは数多の戦闘を潜り抜けてきた戦闘経験からすぐに体勢を立て直して反撃を試みた。

 そこへ、



 「とおぉぉ!!」

 


 ソフィーがするりとイグニスとアキレアの間に割って入り、なんといとも簡単にイグニスを地面に叩きつけたのだ。

 


 「いぇい」


 『貴様………』


 

 それを遠目で見ていた響たちはあれがすぐに合気道ではないかと推測出来た。

 それと同時になぜソフィーが合気道という武術を知っているのかも気になった。

 響の疑問に賢介はかつてソフィーが自分たちが初めてソフィーの合気道を見た時のことを言うと響たちは目を丸くしてこう呟いた。


 

 「日本……だと?」


 「あぁ。それに間違いなく師匠がどうのこうのって言ってたな」



 つまり響たちの他にも、ミスズのように先に転生した先駆者がいる可能性が浮上するということ。

 賢介たちもそれについては独自に調べていたらしいが正体は依然として分からないままだという。


 イグニスは地に背を着けたまま無言で起き上がり続く追撃を片手で払った。

 そして静かに言ったのだ、『我ヲ地ニ伏サセタカ、貴様!!』と。



 

 途端に今までもバカでかかった魔力がさらに膨れ上がった。


 「自分、もしかしてやっちゃったすかねぇ……」


 「言ってる場合か! 離れろ!!」


 ソフィーとアキレアは飛び退いてその場から離れる、直後イグニスの体から無数の影のような手が何本も飛び出して来て危うく二人はそれに掴まるところだった。

 その影の手たちは響たちのところへも飛んでいき、フラン・アリア・響・椿・グリム・ハイラインは自分と自分の周辺を囲むように防御魔法を展開してその影の手たちを防いだ。

 

 影の手たち自体の耐久力はさほど無いようで防御魔法の壁にぶつかっては次々とマッチ棒のように次々と折れていってしまった。



 『一度地ニ背ヲ付ケテシマッタカラニハ、コレ以上遊ンデハイラレヌナ!』



 第二ラウンドト行コウカ!!

 そうイグニスは言って無数の影の手をゆらゆらと陽炎のように従えてこちらへと向かってきた。

もうちょっと続きます。

具体的には後一話二話くらい

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