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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第七章:絶対的な力が待ち受けているようです
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前兆のお話。

そろそろ展開をば

 響たちが魔導学院に向かっている頃、カレン・凪沙・ミスズ・グラン・ハイラインの五人はとある任務を受けて魔物の討伐を行っていた。



 それというのも、ここ最近魔物が活発化していたりこの地域では普段現れないような魔物たちが現れるようになったため調査の一環として訪れていた。



 「カレン大尉、周辺に適正反応は感じられません」

 

 「そうか、了解したナギサ」



 こういう調査任務の際に凪沙の能力は他の転生者のどれよりも秀でている上に扱いやすいため重宝される。

 広範囲の索敵というのは実はあまり魔法ではできない、もし出来ているのならグランやカレンが確実に使っているだろう。


 

 『………』


 「お姉ちゃん、どうしたの?」


 『……少し、気になることがあってね』


 「気になること?」



 しゃがんで魔物たちの死体を観察していた、そして立ち上がってミスズの頭を撫でてカレンたちのもとへ向かった。

 グランはカレンに何やら話している様子でミスズはそれをただ見ているだけ、賢介と凪沙はそんなミスズのもとに歩みよってどうしたのかと尋ねるもミスズ自体グランが何を考えているのか分からないのでその場は「なんでもない」と気丈に振る舞って答えた。



 「うっし、ひとまず切り上げるか」


 『いや、待ってほしい』


 「あん?」


 

 ハイラインがそろそろ切り上げようかと言った矢先、グランがそれを引き留めた。

 その場の全員がグランに注目しているなかグランは少し気になることがあると言った切り口で話を始め、先ほど調べていた魔物の死体のもとへ連れて行った。



 『これを見て欲しい』


 「何だこりゃ」


 『さぁ……どこかで見た気もするけど、何だったか思い出せないのよね』



 グランは死体の体内から禍々しくそれでいて妖しく光沢を放つ多角形の中くらいの石を取り出した。

 ハイラインとカレンは首をかしげていたがグランはどこかで見たことがあるような気がすると頭を悩ませていた。

 そしてグランはこの石こそが今回の魔物たちの行動の原因だと推測しているらしいが確たる証拠がないため一度持ち帰ってから改めて考えるとのこと。



 それから全員はその場から引き上げて妖王城に戻ることにした。

 その数時間後、響たちが戻ってきて各々今日の成果を話し合いグランは先の石のことをグリムや響にも伝えた。

 


 「ほぅ、珍しい物を持ってきておるの」

 

 「椿……人の体から頭だけ出すのやめろ。びっくりする」


 「良いではないかお主と妾の仲じゃろ?」


 『神族……ちょうどいいわ、これ何かわかる?』


 「当たり前じゃ。妾の見立てだとこれは多分魔石じゃ魔石」


 『魔石?』


 「通信石や拡声石などの鉱物とは違って生物の体内に埋め込むことによって効果を発揮する鉱物じゃ」


 『………思い出した。以前イグニス様が配下に集めさせていたんだ!』


 「……それが今妖族にある、と。偶然か、それともイグニスが埋め込んだのか。椿、魔石についてもう少し詳しく」


 「ええぞ。簡単に言えばハーメルンとやらの能力の劣化量産型じゃ、理性を飛ばせて簡単になら操れる」



 こんな石ころ一つでそんなことが出来るのか、と響たちは思ったが勇者たち三人と元魔王軍二人はこれがイグニスの手によって埋め込まれたものなのだろうと直感的に感じ取っていた。

 そしてその翌日もこの近辺では普通現れないはずの魔物たちが出現し響たちはそれを討伐した、それが幾日か続きそれはどうやら他の大陸でも起こっているらしいのだ。



 人王大陸からはグラキエスからの報告が、獣王大陸からはアキレアから報告が、そして他にも竜族の住まう竜王大陸からも報告が上がっている。

 この由々しき事態に各国の重役たちが重い腰を上げて本格的に調査に乗り出した、その重要な手がかりとしてグランが発見し椿が解析した「魔石」を手掛かりとして各大陸が調査を行った結果、魔物たちのくる方向から逆算して考えたところその出元は魔王大陸からのものと推測された。



 このことからまず調査部隊が報告の合った各大陸から魔王大陸を目標の場所と設定して派遣された、グリムたち勇者パーティーが出向くのはその調査部隊が戻ってきてからとのこと。

 理由としては何が起こっているのか分からない場所へいきなり最高戦力の塊である勇者パーティーの面々を送るリスクが高いからという理由。





 だが――――


 

△▼△▼△▼△



 「どういうことだ!」


 「んなもん俺が知りてぇよ姉御、まずは落ち着け」


 「ハイラインの言う通りだ、まずは落ち着いてくれグリム嬢」


 「これが落ち着いていられるか!! 調査部隊が消息不明になったんだぞ!?」



 だが、帰ってきた報告は吉報ではなく悪い知らせだった。

 調査部隊が消息不明になるという最悪の事態に陥ってしまったのだ、生存して帰って来たものがいないため全滅しているのか生きているのか、連絡が取れないためそれすらも分からないのだ。

 グリムがハイラインとスラインになだめられている時、ドアがノックされてカレンたちが入ってきた。



 「失礼します。王国騎士団各員並びにヒビキたち勇者パーティー各員準備できました」


 「おういいとこ来てくれた、姉御を抑えつけてくれ。頭に血が上ってる」


 「何が悪い。調査部隊は出撃頻度こそ少ないが実力と諜報・潜入技術は折り紙付きで、それが消息不明なんだぞ。全滅ならばまだ分からなくはないが誰も帰ってきていない……これが異常事態だと分からないのか?」


 「勿論それくらいの事は私とハイラインも重々承知している。だが議論を深めるのであれば一度その事実を受け入れた上で冷静になって考えなければならない。それが私たち勇者という役割を課せられたものの使命だ」


 「………少し、風に当たってくる」


 

 そう言ってグリムは一度部屋から退室して十数分後に再び戻ってきた。

 グリムは「すまない、少々熱くなりすぎたようだ」と謝罪をしてから席に着いてようやく議論を始められるような状態になった。



 


 しかしこの時からすでに歯車は狂い始めていたのだ。

 ゆっくりと、それでいて確実に、響たちの元へ魔の手は忍び寄って来ていた。



 調査部隊の消息不明事件から更に魔物の数は増えていき冒険者たちを動員しての掃討作戦が行われた。



 そして――――


 

 『サテ……ソロソロ出向クトスルカ……』



 巨大な力が動き始めた。

絶対者、動く。

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