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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第七章:絶対的な力が待ち受けているようです
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視察のお話。

間空きました、すみません。

 ある日、響たち勇者パーティーに初めての仕事が舞い降りた。

 先の会議によって、ひとまず魔導学院の学生たちの戦闘レベルを視察兼指導するということになった。

 選出メンバーはスライン・グリム・響・フランの三人、そして王国騎士団のメンバーからもソフィー・凪沙・セリア・絵美里の五人が選出されて残りはギルドに向かったり妖王城で執務をすることになった。



 「毎回学院には出向くんですね」


 「まぁ、ある意味その大陸の戦闘育成レベルがどの程度達しているかの目安になっているからな」


 「なので、他の大陸から重役の人たちが人王大陸に来ると今度はこっちが視察される側になったりするっす」


 「なるほど」



 グリムとソフィーに捕捉されて、響は改めて魔導学院という場所の重要性を知った。

 魔導学院は平たく言えば成績優秀者しか入れないエリート校のような場所、そんな場所に在学する学生のレベルが低ければ総じて若い芽は育っていないということに直結するということだ。

 


 「残念ながら、今年の新入生はあまり育ってなくてな、グリム嬢たちにはあくまで潜入調査という名目で視察をお願いしたい」


 「潜入………学生として潜入できそうなのは限られているが」


 「だから役割分担をしようと思っている。私とグリム嬢は学校長たちに挨拶をして話し合いを、残りのメンバーは魔法学校からの体験入学者ということで」


 「体験入学とは、また変なことをするもんだなお前も」


 「仕方あるまい、私たち勇者が来たと知れば否が応でも頑張らざるを得なくなるからな、あくまで自然体の学院たちの巣の戦闘力を知りたいのだ」



 確かに、自国と他国の勇者が二人も来るのであれば色々と緊張したり手を抜いたらどうなるか分からないため真面目にやらざるを得ない。

 真面目にやったら、もしかしたらお眼鏡にかなうかも知れないチャンスでもあるからだ。

 魔法学校の生徒としてなら、学院生たちは自分たちより格下の相手として響たちに接するため多少手を抜いたところでばれはしないだろうという輩もいるはずだ。

 こうして響たちは妖族魔導学院に向かうこととなった。



△▼△▼△▼△



 妖族魔導学院に到着した響たちは予定通り二手に分かれた。

 響たち潜入組は現在学院の生徒の一クラスが訓練中を始めるところだという場所へ学院の先生に連れて行ってもらった、勿論名目上は魔法学校から来た見学生徒としてだ。



 先生連れられて訓練室のドアを開けると中からは剣と剣のぶつかる音が聞こえてきた。

 だが吼えるような声だとか気合を入れる声だとかはほとんど聞こえてこない。



 「みんな、ちょっと聞いてくれ」



 先生がそう呼びかけると訓練していた生徒たちは剣を下ろしてこちらを見た。

 先生が響たちのことを説明していると生徒たちの中から響たちに向かって「あっ!」と驚いたような声を上げる人物がいた。

 そしてその人物に響たちも気が付き、こちらも「あっ」と声を上げた。



 「ヒビキ……さんたち……ですよね?」

 

 「…………ナンノコトデショウカ?」


 「あぁ! 棒読みした! 棒読みしましたよね今!?」


 「なんだラフィーリア、知り合いか?」


 「知り合いも何も、第一あなたたち魔法学校生じゃなくて魔導―――――」



 恐らくラフィーリアは「魔導学院の生徒じゃないですか!!」とでも言いたかったのだろうが、残念ながら声に出すことは出来なかったようだ。

 その理由は、響が転移してラフィーの後ろに回り込み口を手の平で押さえたからだ。

 ラフィーリアは「んぐぅ!?」と情けない声を出して「んー! んー!」と必死に抵抗していた。



 そして響はラフィーリアの手を抑えながらハッと我に返る、そして痛感した。


 やっちまったと。


 魔法学校の生徒という名目で来ているのにいきなり転移ぶちかました挙句ラフィーリアに一切抵抗させずに言葉を封じさせてしまったのだ。

 普通はそんなことできない、明らかに戦闘慣れしているものの動きだ。



 「す、すごいじゃないか、君」


 「あ、あははは………ありがとうございます」


 「(阿保じゃね?)」

 

 「(うるせぇ)」


 教官役の先生が引きつった笑いで響を称賛し、絵美里が意思疎通で罵倒する。

 ラフィーリアにいたっては完全に諦めたようで腕をだらんとさせて沈黙していた。

 響はラフィーリアの口から手を離して申し訳なさそうに元いた列に戻った、学院生たちは呆気にとられた様子でこの一連の流れを各々頭の中で整理させている様子だった。



 珍事はあったものの、とりあえず響たちと学院生たち合同での稽古を行った。

 だが先の響の行動によって、全員戦闘力がやばいんじゃないかと学院生たちに思わせてしまったようで学院生たちはここに入ってきた時よりも数倍やる気を出して声も出していた。



 「ラフィーリア!」


 「はい、先生!」


 「お前はさっきの男子の相手をしてやってくれ!」


 「お断りします!!!」



 断固拒否するラフィーリアだったが規則には逆らえない真面目ちゃんなので渋々響の相手をすることになった。そして若干涙目だった。


 まぁその、なんだ。

 結果としては響たち相手ではまともな試合になるわけにもならず、途中から接待戦闘をするという舐めプをする始末になった。

 何とか学院生たちには気づかれていないようだったがラフィーリアにはバレバレだったようでそれが癪に障ったのかもう無我夢中で響に立ち向かってきていた。



 「スラインよ」


 「何か、グリム嬢」


 「多分あいつら失敗するぞ」


 「まぁ、そうだろうね」



 そしてそんな事態になるのも、グリムたちにはお見通しだった。

この辺りはサラッとね

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