表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第七章:絶対的な力が待ち受けているようです
138/221

転生者vs転生者のお話。

タイトル通り

 『これは見ものだな』


 「あぁ、僕も混ざりたいくらいだよ」


 「そう言えば二人は戦わなくていいの?」



 フランが影山と梓の二人にそう質問すると二人は黙って首を縦に振って頷いた。

 


 「俺らが行ってもね」


 「多分、巻き添え食らっちゃうから」


 「……巻き添え、ね」



 フランはいつぞやの獣王大陸で響がハルク・モーグラン率いるならず者集団「豪傑の獅子」を一方的に返り討ちにした時のことを思い出していた。

 あの時、響は全くと言っていいほど全力ではなかった。

 そしてその後のナインが呼び寄せた魔物の大群の殲滅、あれでさえまだまだだったはずだ。



 「よし、やるか!」



 そんな外野のことなど気にもせず完全に戦うことしかない転生者たちは、各々構えをとって戦闘態勢に入っている。

 響はたった一人で複数の天性社を相手取るという圧倒的不利な状況に置かれながらも、先ほどから武者震いが止まらずに思わず笑ってしまう。



 「来いよ、お前ら」


 「んじゃ、やっちゃうから!」



 なんの合図もなしに始まった響きたちの戦い。

 まず初めに絵美里が適合能力「我淀引水デコレーション」で全員の魔法命中率をほぼ百パーセントに底上げして、智香が適合能力「統同伐異コントラストマネジメントで生成した三種類の精霊たちを全員につけて自動的にサポートを行うようにした。



 「ほぅ……」


 「こっちもやるぞ、凪沙」


 「うん!」



 続いて賢介と凪沙が響に向かって突撃してくる、響はそれを迎え撃ち二対一の白兵戦を繰り広げた。

 まだ近接戦だけならよかったのだが賢介と凪沙の後方からは琴葉・絵美里・智香の三人が魔法でバックアップしているため響はいわば三つを相手取っている状態である。



 「ちっ……!」



 響は隙を見て自分も魔法を放ち、智香たちの魔法にぶつけて相殺するもすぐに前衛の二人が間合いを詰めて息の合った連係プレイで響を追い詰める。

 負けじと響も近接戦を仕掛けるのだが、凪沙には当たっても賢介にはほとんど当たらない。



 それもそのはず、賢介は適合能力「王行闊歩ルート・イズ・マイン」を発動させており未来予知によって響の攻撃パターンは全て把握できていた。



 「(……? なんだこれは)」



 と、賢介の予知に、響が地面に向かって魔法を放つ未来が見えた。

 一体どうしてそんなことを、そう考えたが何か狙いがあるのだろうと予想して凪沙に後ろに飛び退いて回避するように、アザミから貰ったスキル「意思疎通」によって瞬時に合図を出して凪沙はそれを受け取って後ろに飛び退いた。



 そして賢介の予知通りに響は自分の足元に魔法を放ち、その瞬間土煙が響を丸ごと包み前衛二人の視界を断った。

 後衛組は構わず魔法を撃ち続けるが、銅にもあたった気配がしない。



 「賢介のはやっぱりめんどくさいな、さっさと潰そう」


 「……ようやく本気出したって訳か、水無月」



 煙が晴れて響の姿が再び現れる。

 響はアロンダイトを複製して地面に剣先を突き刺し、黒色の鎧を身に纏って仁王立ちをしていた。



 「アロンダイトっ!?」


 「それにニーベルゲンの鎧か……」



 聖剣であり本来ならこの世に一振りしか存在しないはずのアロンダイトを響が持っていることにカレンは驚きを隠せていなかった、グリムは冷静にその事実を受け止めて響が纏っている黒い鎧の正体をポツリとつぶやいていた。

 後方からは流石にやばいと思い始めたのか絵美里がさらに魔法に威力が倍になる属性を付与して放ったがアロンダイトの発する見えない障壁によって全て霧散していった。



 「嘘っしょ! 何あれ!」


 「た、多分、グリムさんの持っている剣と同じ気がします!」


 「確か上級魔法以下の魔法は無効化だっけ、厄介ね」


 「じゃあ緋級以上でいけばいいんでしょ、うちらだって伊達に訓練してないし!」



 その言葉の力強さ通りに絵美里は少しばかし魔力をチャージしてから大火力の緋級魔法を放った。

 まともに当たればそれなりのダメージにはなるが、響はそれを同じ魔法で完ぺきに相殺して封じ、転移魔法で三人の中心に一瞬で移動して範囲攻撃魔法である「ビーストハウル」で一切の慈悲をかけずに三人を吹き飛ばした。


 「くっ!」

 「きゃっ!!」

 「うわぁっ!」


 そして三人を吹き飛ばした直後、突然響の体に大きな衝撃が走り、痛みが全身を襲った。


 「なっ……!」


 「……はぁ、はぁ……良かった、当たった………!」


 「あぁ……そう言えばそう言う能力だったな、琴葉のは」


 響がダメージを受けた原因は、琴葉の適合能力「同病操麟ペインウォーフェア」によって自分のダメージをそっくりそのまま響に返したからだ。

 琴葉の能力の恐ろしいところは、いくら防御魔法を重ねていようがどれだけ堅牢な鎧を着こんでいようが本人に直接ダメージを与えることだ。



 勿論、琴葉が気絶したりしなければの話だが、使い方によっては転生したメンバーの中で最も厄介な能力とも言えなくもない。



 「(凪沙、今のうちに!)」

 

 「(うん、分かってる!)」



 賢介と凪沙は今が絶好のチャンスだと思い攻撃を仕掛ける。

 賢介の未来予知に移る響は動かなかった、ということは攻撃を仕掛けるまで響は動かないということを表している。



 そして賢介と凪沙が響に襲い掛かる。

 確かに響はその場から動かなかった、自分の攻撃を返されてスタン状態のまま中庭の地面に跪いてた。

 痛みで動けなかったわけではない、ただ()()()()()()()()()からだ。



 「なっ」


 「うそっ」


 「……捕まえた」



 もはや響の代名詞ともなっているオリジナル空間魔法「ニュートンの林檎」。

 それによって賢介と凪沙は響に襲い掛かる寸前でピタリと止まっていた。



 「よぉ賢介、お前にはどんな未来が見えてたんだ?」


 「なるほどな……動いていなかったのはそういうことか」


 「……動く必要がなかったって、事だね」


 「大正解。つーわけで――――」



 ――――吹き飛べ。

 響は低い声でそう言い残して、両腕を前に伸ばして親指と人差し指を伸ばして銃のような形を作った。

 そして響は一言「バンっ」と言いにこっと笑うと二人は「ニュートンの林檎」の作用によって吹き飛ばされた。

 それはまるで、響が銃の形を作った手の人差し指から見えない弾丸が二人に発射されたようでもあった。



 「んで、どこまでが勝敗基準?」


 

 響の問いかけに、全員が答えた。



 「ギブ!!」と。



 これによりたった今響の勝利が認められ、転生者たち転生者軍の戦いはまさかの響の単独勝利という結果に終わった。

 まぁ外野の連中や賢介たちも途中から薄々分かってはいたのだがまさかこれほど圧倒的だとは思わなかった、というより、思いたくなかっただろう。

 まさに圧倒的、今の模擬戦で唯一響が貰ったダメージは琴葉の能力によって返された「ビーストハウル」のダメージのみ。

 


 これがもし全員の能力がフラット、つまり何もない状態だったならばこのダメージすら与えられていないということになる。

 それに他の奴らが適合能力をフル活用しているにもかかわらず響が適合能力を使ったのはアロンダイトを複製した時の一度のみで直接的なアロンダイトによる攻撃はしていない。



 近接格闘と範囲攻撃魔法に転移魔法そして空間魔法の四つの攻撃だけで響は物量差をものともせず勝利したのだ。

 厳密に言えば転移魔法は空間魔法の派生なので三つとも言えるであろう。

 これにより響の認識が改められ、グリムが響に敬愛と称賛の意味を込めてこう呼んだ。


 

 「規格外」と。

チートはチート

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ