二日酔いのお話。
苦労人ハーメルン
カレンが暴走して響たちのテーブルが好奇の目で見られてから小一時間ほど経った。
響たちは運ばれてきた料理を平らげて満腹になりそろそろ出ようとしたがそこで再びカレンに絡まれた、絡まれたと言っても被害にあったのは響くらいなものだが時折梓や影山やマリアも被害を被った。
グリムはそんなカレンを横目で見ながらため息を吐いていた、そしてカレンの隣にいた小柄な女性は名前を「ソフィー」と名乗ってぺこぺこと響たちに謝っていた。
「なぁソフィー」
「な、なんでしょうかグリムさん……」
「カレンはあんなに酒癖が悪かったのか……?」
「いやー、自分も今日知ったばかりでして……」
「そうか……」
よほど以外でショックだったのか今度はグリムの方が悪い酒になるのではないかと心配になるくらい酒をおかわりしていて、量だけならハイラインよりも多く飲んでいた。
響はグリムも悪い酒になる前に「すみません……すみません……」と恐らくこの場で一番冷静で大人な対応を取っていたことだろう。
その後無事に酔いつぶれたグリムをハイラインが背負い、同じく酔いつぶれたカレンをソフィーが背負ってそれぞれ帰っていった。
「じゃあね~ヒビキ~! またね~!」
カレンはふにゃふにゃとした笑顔で響に手を振ってソフィーの背中に乗って帰っていき、グリムはグリムでハイラインの背中の上で何やら暴れながらブツブツ言っていたが、誰も相手をしなかったので不運にもグリムから指名を食らったハーメルンが帰り道ずっと酔っ払いの相手をすることになった。
△▼△▼△▼△
「ああああぁぁぁぁぁ…………頭痛い…………」
「当たり前だグリムの姉御、今水持ってくっから」
「すまん……」
「後ハーメルンに謝っとけよ、あれからずっと姉御の相手してたんだから」
「そうだったのか………すまないハーメルン」
『別に構わない、グリムだってストレスが溜まるんだろう。たまには発散した方が良い』
「ハーメルン~………」
『こっち来るな酒臭い』
まだ完全に酔いが抜けておらず二日酔い状態のグリムは目が覚めたばかりのハーメルンにくっつこうとするも酒臭いと一蹴されてしまい、ベッドに顔を埋めて不貞腐れた。
『というか、今日はあのナルシスト入ってる勇者となんかあるんじゃなかったのか?』
「あーうん……妖族の冒険者たちの育成に向けてどうしたらいいかってさー……自分で考えろよって話なんだが他の種族からも見てもらった方がいいからとかなんとか………ぐぅ……」
「ほら水持ってきたぞ………って何二度寝してんだよ姉御!?」
「あんまり大きな声出すなよハイライン、頭に響く……」
完全に二日酔い状態のグリムを無理やり連行してハイラインは響たちを連れてスラインや冒険者ギルドの重役ポジションの人たちが待つ会議室へと向かった。
その頃、騎士団の宿舎では――――
「ソフィー………水……」
「はいはい、今持ってくるっすよー」
「あ、あの、何があったんですか?」
琴葉がソフィーに尋ねるとソフィーは「二日酔いっす」と断言して水道水をカレンに飲ませていた。琴葉たちからすれば昨日夕食を食べに外に出たと思ったら帰ってくるときにはべろんべろんに酔っていたのだから何があったのか聞いて当然である。
「でも昨日、凄く幸せそうな顔して帰ってきてたわよね?」
「あー……確か義理の息子さんに偶然会いまして、ヒビキ君とかって言ってたっすねー」
「「「「「「響!?」」」」」」
「うわぁびっくりした!? え、なん……えっ!?」
ソフィーが「響」という名前を言っただけでその場の全員が反応した。
座っていたものは立ち上がり、作業をしていたものはそれを中断させ、うたた寝していたものは目を覚ました。
「あの子そんな凄い子……なんすか?」
「凄いというか………」
「チートじみたスキル持ちで」
「空間魔法バリバリ得意で」
「その上彼女持ち」
「二人もな」
ソフィー以外のメンバーが響について補足説明をして、改めて響の超スペックを反芻していた。ソフィーはそれを聞いて「へぇ~……」と大層意外そうな顔をしていた、そしてその横でカレンは二日酔いで弱弱しくそれでいて誇らしげに「凄いだろ……」とニヒルに笑っていた。
「あ、そう言えばカレン先輩。今日ってスライン様とギルドのお偉いさん方が来る会議あるじゃないっすか」
「………ボイコットしたい」
「………グリムさん方も来るらしいっすよ」
「よしすぐ行こうほら皆も行くぞさぁ我が息子との二度目の再会だ何してるソフィーさっさと準備するぞー!」
「……わっかりやすぅい」
その後急いで準備して無事に会議に余裕で間に合ったカレンたち人族の王国騎士団メンバーはスラインたちとギルドの重役たちに挨拶をして各自席に着いた。
そしてそれからグリムたちがやって来るとすぐさまソフィー以外のテンションが静かに上がり、ソフィーを除いたメンバーが立ち上がったためスラインやギルドの重役たちは軽くパニックになったという。
酔っ払いは書いていて楽しい