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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第七章:絶対的な力が待ち受けているようです
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妖王勇者のお話。

妖王大陸編、開幕!!

 「起こしてくれって言ったろ」


 『すまん、あまりに気持ち良さそうに二人が寝てたものだからつい……な』


 「なにー? なんかあったのー?」


 「気にするな」

 『気にするな』


 「え、あ、はい」


 馬車から降りて妖王大陸の門のところまで歩きグリムがそこの門番と何やら話をして、まもなく正門が開かれて大陸内への道が開かれた。



 「人族、並びに獣族の勇者様とそのパーティーメンバーが参りました!!」



 門がゴゴゴとゆっくりと開き響たちはグリムとハイラインの後ろに並んでついて行く。




 すると街は沢山の人がずらーっと並んでおりグリムたちを見るや否や「おおおおおお!!!」という歓声を上げて来訪を歓迎してくれていた。

 拍手をするものや歓声を上げるものなど様々な喜び方をしてグリムたちを出迎えてくれた、そして群衆たちの間の道を歩いていくと奥から絢爛豪華なマントを身につけた人物とその横にレイピアを装備した人物が現れた。


 「ようこそ妖王大陸へ。歓迎するよ」 


 「こちらこそ、妖王。これほどの出迎えとは、思っていませんでした」


 「民も興奮しているのだよ、今回はハイライン殿も来てくれているからな」


 「そりゃあどうも、んで、そっちの奴は相変わらずの風体だな」




 そう言ってハイラインは隣に立つレイピアを携えた長身細身の妖族の男を指差した。その男は肩くらいまである長く若干ウェーブのかかった金髪をかきあげ、花冠のようなものの位置を調整しながら「フン」と鼻を鳴らした。




 「相変わらずだなぁスライン、ちゃんと食ってんのかぁ?」


 「君に言われたくはないな、ハイライン。そっちこそもう少し野菜を食べるべきだ。そんなことより――――」



 すると「スライン」と呼ばれた男はハイラインを無視してグリムの眼前に立ち、跪き手品師のようにどこからか真っ赤な薔薇と思しき花を一輪手の中から出現させた。




 「メイガス嬢……相変わらずお美しい。その高貴で凛とした貴方のことをずっと想っておりました。私と結婚してください……」




 突如プロポーズし始めた。




 すると群衆の中の、特に女性層が「キャーー!」と黄色い声を上げた。


 「出たー! スライン様の本気マジプロポーズぅー!」


 「もうこれで()()()かしらぁー!!」




 ……ん? ()()()


 その一言で響たちは唐突に聞いてはいけないことを聞いたような気がしてしまったが時すでに遅くスラインとそれを取り囲む群衆たちはヒートアップしていた。


 


 だがそのテンションに反してグリムは淡々とただ一言、


 「断る」


 とあっさりスラインの愛の告白を切り捨てた。


 「くっ……今回もダメだったか……」


 「一体何度私はお前の告白それを断ればいいんだスライン」


 「私の愛が覚めるまで……」


 「あのーグリムさん? これはその、なんですか」


 たまらず梓がグリムに今目の前で行われた摩訶不思議な光景に対して説明を求めるもグリムはため息を一つ吐きながら「見て分からんのか、タイプじゃないやつから告白されただけだ」と疲れた顔で答えた。



 グリムに言わせればどうやらスラインはグリムに一目惚れを下らしくそれからというもの会うたび会うたびこうして言い寄られているのだという。そしてその数なんと累計五十回前後だという、流石にこれには響たちも苦笑いをせざるを得なかった。


 「がははは! お前も懲りないやつだなスライン!」


 「お前には関係のないことだろハイライン。愛ほど人を美しくさせるものはないよ、僕みたいにね」


 「はいはいてめぇの自画自賛はもう聞き飽きたっつーのこのナルシストが」


 「ふん、好きに言うがいいさ。それよりもまずは皆を城へ案内する、ついてきたまえ」


 「相変わらずの野郎だ」




 何やら仲がそこまで宜しくない様子のハイラインとスライン。

 全員はスラインと国王の後に続いて妖族の国民たちの道を闊歩しながら妖王大陸の王城、妖王城へと辿りつきそこの使用人たちにも温かく迎え入れられた。


 その後大部屋を与えられた響たちは各々気を緩めて体を伸ばした、しばらくは獣王大陸の時と同じく休息の時間を与えられ何か仕事があればその都度出撃するという感じになっている。


 「あれが妖族の勇者か」


 「タイプか? アリア」


 「僕の好みはヒビキ君一択だし、それにあの人は少々自己陶酔が多そうだからね」


 「それでも国民からは人気なんだよなぁ顔いいから」


 「そう言えばハイラインさんは仲よろしくないんですのあの人と?」


 「別に嫌ってるわけじゃねえけどよ。ただ性格が合わないだけだ」


 ハイラインはそう言うと立ち上がって、暇だから外へ出歩いていると言って部屋から出ていった。次いでアリアが「僕も出よーっと」と言って響を連れ出しそれに伴って梓も後を追いかけていった。それにつられて次々と外出していったがグリムは「疲れたからいい」と一人で部屋に残った。



 「……やはり私も出るか。嫌な予感がする」



 何やら不穏な気配を感じて最低限の物をもって城を出た。

 それとすれ違いにスラインが部屋に来てグリムに会いに来たが空振りに終わったことを本人は知らなかったのである。

終着点をどこにするかはまだこれから。

とりあえずよろしくお願いします!

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