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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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出発のお話。

獣王大陸編終了!

 ナインとの戦闘、そしてアザミとの再会から数日が経ち、とうとう響たちは次なる大陸の勇者のもとを訪問するべく獣王大陸を旅立つ準備をしていた。


 今回からはハイラインも同行していく。


 今後の予定としてはまず妖王大陸の勇者から会っていきそれから海王族と竜族のもとへ行くという流れになっている。




 だが旅立つ前、響とグリムとハーメルンはスラム街のあの教会跡に足を運んでいた。言わずもがな、あの少年と話をするためだ。


 「何か、気になることでもあったのか」


 『気になることと言うよりは……ちゃんと、伝えた方が良いかと思って』


 「そうか」


 どこか悲し気にハーメルンは淡々とグリムの質問に答えた。無理もない、かつて自分がいた組織が全然違う方向に歩んでしまっているというのだ。しかもハーメルンが気づいていなかったということはハーメルンとグランが捕らわれたのとすれ違いでそうなったのだろう。


 

 響は何か声をかけるべきだろうかと考えたがいい言葉が思い浮かばなかった、下手に言って余計ハーメルンを考えさせるのなら言わない方が良いと、響は結論を出して黙ってついて行った。


 

 三人は教会跡地に到着すると中に入りシャルルを探した、というより探す間もなく見つかった。


 「あっ、あの時の」


 とシャルルは瓦礫の上に座った状態で響たちを見つけて、たたたと走ってきた。


 「ねね! ナインのお兄さんは? 最近いないんだー!」


 『ナインはな………死んだよ』


 「え?」


 ハーメルンは単刀直入に一切包み隠すことなくシャルルにそう伝えた、ハーメルンは『外で待っててくれ』と悲し気なトーンで響とグリムの二人に伝えた。




 何かを察した二人は無言のまま教会を出た。








 二人は、教会の今にも崩れそうなボロボロの壁に寄りかかった。





 後ろからは、子供が泣きじゃくって怒る声がこれでもかと聞こえていた。その声は十数分間収まることはなく、やっと落ち着いてきたと思ったら今度はえっぐえっぐと呼吸に詰まっているような嗚咽が聞こえてきた。


 それからさらに待ってようやくハーメルンが教会から出てきて『行こう』と短くそれでもって元気なさそうに言い二人は何も詮索することなく後ろをついて行った。



 『私は………かつて道化と呼ばれたこの身ですら、子供一人泣かせずに事を話すことが出来なかった』


 

 『未熟だ……』と大層忌々しそうに低い声で自分自身を呪った。





 ハーメルンの頬には、一筋の涙の痕があった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「んじゃ、行ってくるぜ。フィリル、城を頼んだぞ」


 「お任せを」


 「リナリア、何かあったら呼べよ。暇になったらこっちから行く」


 「それは勘弁してほしいな」



 獣王城の周りにはグリムたちとハイラインを見送るために大勢のギャラリーが集まっていた、魔王を倒すために出発する勇者たちの誉れ高き姿を一目この目に焼き付けようと思ってきたのだろう。



 「では、行って参ります」


 「汝らに加護を、グリム殿、ハーメルン」


 

 獣王とギャラリーらに見守られてグリムたちは馬車に乗り込んで獣王大陸を旅立った。



 後ろからたくさんの声援を浴びながら目的の地、妖王大陸を目指して馬車はガラガラと音を立てて道を進んでいった。馬車の中の座席はこの獣王大陸に到着した時と同じで響は梓とハーメルンと同じ客車で梓はいち早く寝ていた。しかも響の手の上に自分の手を重ねて頭を響の肩の上に置きながら。


 『相変わらずの中だな』


 「まぁ、付き合い長いからな」


 『その上アリアまで手にかけるとはな』


 「……人聞きの悪いことを」



 静かな馬車の中で、二人はここに来た時と同じように話していた。



 「………」


 『静かだな』


 「そうか?」


 『何か考えている顔ですねぇ? 私が当てて見ましょうか?』


 「なんだよ、いきなり口調変えたりなんかして――――」


 『あの女神の事でしょう?』


 「………」


 『ほうら図星だ』


 ハーメルンは、響がどこか上の空な理由を見事当てた。というより元々分かっていたんだろう。


 『そりゃぁびっくりするよな。他種族から見ても驚く、それに、リナリアがあんなに怒ることなんてあまりないからな』


 「お前一回怒られてたろ。王城戦の時に。リナリアが怒って魔物全滅させてさ」


 『そう言えば、そうだったな………でもまぁ――――』


 気にすることないさ、と、ハーメルンは諭した。

 いずれ真実を知る時が来る。それまで気長に待てばいいじゃないかと優しく諭してくれた。


 琳はその言葉を聞いてどこか心が軽くなった気がして「あぁ……そうだな」と答えた。確かに今考えていたって仕方がない、だったら機が熟すのを待った方が得策だろうとそう思った。


 「少し、寝る」


 『ああおやすみ。到着したらまとめて起こすよ』


 「あぁ、そうしてくれ」


 そう言って響は瞼を閉じて梓の頭に頬を重ねて寄りかかり寝た。




 それから妖王大陸まではすぐで、起こす役目のハーメルンがいつのまにか寝ていたというハプニングが発生し結局グリムに起こされることとなったのは内緒。

次回から新章突入&妖王大陸編!

自称天才のあの子ももちろん登場します。

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