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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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王手《チェック》のお話。

王手、チェック、チェックメイト。

意味合い同じなようにも感じますけど、微妙に違うんですね。

 氷の礫を降らせながらアリアとフランはマリアとリナリアのもとへと到着し、四人は「計画通りに」と呪文のように呟いた。


 『かあっ!!』


 ナインは一度咆哮を上げて範囲攻撃魔法で氷の礫を弾き飛ばした、パラパラと砕け散った氷はまるでガラスの破片のようにキラキラと月明かりを反射させて煌めいていた。


 『目くらましだなぁこの程度……』


 「それでも不意を衝くことが出来た、なら僕たちの思い通りだよ」


 「ま、ここからが大変なんだけどね」


 イライラと殺気立つナインを前にまだ余裕綽々のアリアとフラン、その後ろでリナリアは二人の背中に手を当てて魔方陣を一つずつ張り付けた。


 「おっ」


 「体が……」


 「体を軽くする補助魔法をかけた、これで動きやすくなるはずだ」


 『敵の目の前でそんなことしやがって、随分余裕なことで』


 「ああ余裕だとも、たかが一人に、私たちが負けるとでも?」


 


 その言葉が引き金となりナインは再びブーストを噴かせたように真っすぐにこちらへ向かってきた。


 「来ますわ!」


 四人はナインが来るのを確認してから後ろへと退避して家の屋根伝いや地面を走って魔法の射線を切りながら扇状にそれぞれ違う方向に移動していく。


 ナインは四方向に走っていく四人の後姿を見ながら数秒目を閉じる、そして思いっきり地面を蹴ってある一人の方へとものすごい勢いで走っていく。



 「……やっぱり来ましたわね……」



 マリアの方だった。

 それもそうだろう、その理由はマリア自身も分かっていた。




 事実、マリアは響たちの中で一番弱い。同年代の中では強い方なのだろうが、世界を救う戦いへ赴くにはまだ実戦・魔法の腕共々足りない。

 マリアも常日頃から自分の実力不足は痛感している、そのために日々フランに特訓に付き合ってもらっているのだ。だがそれでもまだ足りない、ほど遠い、欠落している。



 それでも諦めるわけにはいかない、投げ出すわけにはいかない。マリアは全てを覚悟して受け入れてその上で困難を跳ね除けねばならないのだ。





 それが自分が勇者パーティーに選ばれた意味、王国騎士団で頑張っているセリアへの手向けだからだ。


 「行ったな」


 「そうね」


 「手筈通りに、やるぞ」


 マリアがナインに追いかけられる様子を他の三人は走りながら視界の端で捕らえ、集まって短くこの後の予定を確認した。


 そしてナインの後ろを追いかけていった。



△▼△▼△▼△



 『はははは、中々逃げるじゃないかぁ……人族』


 「はぁ……はぁ……逃げ足には、自信あったんですけど、ね」


 『魔族と人族だ、基本性能が違うんだよ……さぁて、まずはお前から殺す』


 「あら、お怖いこと」


 マリアは、いつぞや獣族魔導学院との時にフランと共にソルと戦ったあの湖畔へと逃げていた。リナリアに身体能力を魔法で強化されているとはいえ本来のスペックは魔族と人族では大きくかけ離れているのだ。

 元来、人族とは他の種族よりも基本的な身体能力や魔力量は一番低い、とてつもない格差があるというわけではないが仮に順位付けするのなら一番下に来るだろう。だからこそ他の種族との外交などで今の位置を維持しているのだ。




 その人族であるマリアは今、魔族の中でもトップクラスの戦力を持った集団である魔王軍の幹部に属するナインと相対している。今の実力差でまともにやり合えば勝ち目は絶無に等しい。


 『ほら、命乞いでもすればいいんじゃないですか?』


 「そんなことしませんわ、私は、私の役目を果たしましたから」


 『あっそ………じゃ、さっさと殺します。あとでハーメルンも送りますから心配しなくていいですよ、お仲間もいずれ。何か言い残すことはありますか? 最後の情けで聞いてあげます』


 「じゃあ、一つだけ宜しいですか?」


 『どうぞ』


 「……王手チェック、ですわ。ナイン・オブライエン」


 『なに……?』






 それが合図になったのか、ナインの後ろの茂みから横の茂みへ何かが超速度で駆け抜けた。


 『……っ!』


 ナインはそれに驚き首をそちらへと動かす。


 『(なんだ……)』


 



 ガサッ………


 『後ろかっ!』


 ナインが振り返ると茂みから一本の刀がナイン目がけて発射されていた、ナインは体を横に逸らしてそれを胸の辺りでかわし、その刀の柄を掴み地面へと突き刺した。



 

 直後先ほど何かが移動した茂みからもう一本の刀が飛ばされるもナインは先ほどと同じ要領でそれを掴み今度は突き刺さずにしっかりと受け取った。



 「まだまだぁ!」


 

 そこへマリアが魔法を放ちながら突撃したが、魔力を纏わせた刀で魔法を断ち切ってその勢いのままマリアをも切り伏せようとした。





 




 しかし、そこへ茂みの中から梓と影山が飛び出して後ろと横をそれぞれが狙った。




 突然の二人の登場に一瞬思考を巡らせて何をどの順番で処理するべきかナインは迷った。目の前にいるマリアをこのまま切り殺すか、二方向を取られているため一方向をガードしつつもう一方にカウンターを仕掛けるか。



 ナインは迷った、そしてその迷いの隙を一番近くで見ていたマリアが見逃さなかった。



 見逃すことのないように、普段からフランから言われている。


 

 マリアはその迷いを確認したのとほぼ同時に自信に迫っている刀をナインの腕ごと「ニュートンの林檎」でほんの僅かな時間だけ硬直させた。




 『しまった……!』


 「遅いんですわああぁぁぁ!!!」







 後ろからは梓の斬撃、横からは影山の蹴りが、そして前からはマリアの拳が。





 同時に三方向からナインに対して強力な物理攻撃が浴びせられた。

もうちっとだけ続くんじゃ。

というかどれくらいで終わるかな、獣王大陸編。

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