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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
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冒険者のお話。

エブリデイノープラン

※本文の一部を以前物語の都合上書き直したのですが、反映されていなかったので再度編集しました。ご迷惑をかけてすみませんでした。

 学校からノンストップダッシュで約十五分。アリアにつられてやって来たのは、やはりこの世界に実在したレンガ調の建物、冒険者ギルド。

 入り口を抜けると、左手には事務員のような佇まいのお姉さんたちが待っている受付が五つほどあり、入り口正面の奥には沢山の張り紙で埋め尽くされた掲示板が。そして十席ほどの円形のテーブルが並んでおり、それぞれ装備を身に纏った冒険者の方々が複数、あるいは単独で己の実力に合わせて任務を受けている。話をするなり装備を見せ合ったりとその会話内容は多種多様である。



 そして現在、響とアリアはテーブルの一席に座っていた世紀末三人衆に囲まれてた。



 「坊主、見ねえ顔だな。新入りか?」



 やばい、からまれた、と響はアリアの方に助けを求めようとするが、アリア本人は全く動じることはなくただただ微笑を浮かべるだけだった。

 とりあえず何か反応しておかないと、そう思う響だったがその考えはアリアの一言によって明後日の方へと飛んでいってしまった。


 「やあゲイルさん、お久しぶりですどうも」



 その一言で響の目が点に変わる。

 ゲイル……さん? え? 何? 知り合い? 今度はその考えが響の頭の中を埋め尽くし、支配する。

 落ち着け、落ち着くんだ響。これは俺の早とちりだ、見た目が完全ヒャッハーの世紀末集団だからといって何も初心者狩りされると決まっていたわけではないじゃないか。ほら、案外こういう見た目の人の方が優しかったりするし。



 「おう! ゴーレムの嬢ちゃん! こいつ、嬢ちゃんの後輩か?」

 「ああそうさ、僕の可愛い可愛い後輩だよ。今日は冒険者登録のために無理やり引っ張って来てね」

 「なるほどな、そういうことなら俺達が手取り足取り冒険者とは何たるかを教えてやろうじゃねえか!」

 「すみません状況が飲みこめないんですがそれは……」



 何の説明もなしに会話を始めるアリアに戸惑い疑問を問いかけるも、二人の会話は勢いが止まらず、他の世紀末の二人を交えてさらに響の疑問はまるで始めから無かったかのようにされ、心が折れそうになった。



 「なあ嬢ちゃん、そろそろ後輩君に説明した方がいいんじゃねえか? 呆けてるぞ?」



 世紀末三人衆の一人、ゲイルと呼ばれた巨漢の男性が助け舟を出してくれたことでようやく事が進展することになった。「ああそう言えばそうだったね」と、ここに連れてきた張本人アリアによって状況説明が為される。

 曰く、この人たちはアリアが生徒会に入りギルドの任務の受注を出来るようにするためにここへやって来た時に知り合ったという冒険者の方々だという。その見た目に反して意外と優しいというギャップからよく話すようになり、度々お世話になっているという。



 「それじゃあまずは冒険者として登録しようか、ついておいで」

 「え、あ、はい」



 よく分からないままとりあえずアリアと受付まで付いて行き、本来の目的である冒険者登録を済ませることにする。心なしか響には、アリアの顔がどこか楽しそうにも見えていた。



 「ようこそ冒険者ギルドへ、任務の受注でしょうか?」

 「いや、こいつの冒険者登録をやりたいんだが」

 「それでしたらこちらの魔方陣に利き手をおいてください」



 そう言って受付のお姉さんがカウンターの下から魔方陣が少しだけ浮いた状態で描かれた石板を取り出し、響の目の前に差し出す。右手をその魔方陣の上へ乗せると、淡い光が発せられ、下の石板に刻まれた複数の線にも光が移り、その線をなぞるように光が走っていった。



 受付のお姉さんに手を離していいと言われたので手を離すとその上に、金属で出来たと思われる一枚の薄い板が、石板と魔方陣との隙間に差し込まる。そして再び石板と魔方陣から光が発せられ、板に文字が刻まれていく。

 十数秒経っただろうか、受け付けのお姉さんがその板を取り出し傍らにあった紙に目線を移しながら何やら記入している。時々、顔をしかめることがあったが一応滞りなく終わったようで、その板を響へと差し出す。



 「お待たせいたしました、こちらネームプレートになります。以上で冒険者登録は完了です」

 「ネームプレート?」

 「はい、これにはご自身のお名前と年齢や性別、各身体能力を表示されるようになっています」

 


 要はゲームとかでキャラクターの情報を見た時に筋力や敏捷などが表示されるようなものだというもので、それがゲームキャラクターにではなく自分自身に置き換わったということだ。



 「こちらのプレートはそのままお持ちになられるか、刻印として処理しますか?」

 「そんなこと出来るんですか?」

 「ええ、刻印の場合ですと別途料金がかかりますがなくす心配はありません」

 「お金は学校から出るから好きにしていいよ。ちなみに僕は刻印式にしてる。なくしたら先生から怒られるからねぇ」

 「じゃあ刻印でお願いします」

 「かしこまりました」



 再度右手を出してその上にネームプレートを置かれ、受け付けのお姉さんが何やら詠唱をし始めたかと思うと、ネームドプレートがその形を幾何学的に変化し響の手首へと張り付いた。最後にお姉さんが手の平を包むように手首に被せ再度詠唱を始める。



 「終わりました。何か違和感を感じたりはしませんか?」



 軽く手首を曲げたりして確認したが、特に違和感も無かったため大丈夫だと伝えた。

 その後、冒険者のランクなどについての説明を受けることになった。



 まず冒険者にはブロンズ・シルバー・ゴールド・クォーツ・オブシディアンの五つのランクで分かれており、登録したばかりの響はブロンズ、アリアはシルバーに刻印の色が変化している。ランクの上昇には一定数の任務の遂行、または上昇に値する功績が認められればランクがより上位の物に変わっていくという仕組みになっている。



 「よし、じゃあ一回学校に戻ろうか。フルーエン先生に報告しなくちゃいけないからね」

 「また走りませんよね? 流石に……?」

 「……ヒビキ君、いいことを教えてあげよう。僕はね、愉しかったことは何回もやりたくなってしまう性格なんだよ……」



 結果、響は再びアリアに無理やり走らされ、学校に着く頃には息も絶え絶えになった状態でフルーエン先生に心配されたそうな。冒険者ギルドを出る際、ゲイルさんに「今度は任務で会おうや、新入り」と言われ、この人は優しいと確信して引っ張られていった。

 フルーエンに報告を済ませた後、アリアと生徒会室に向かい、生徒会室のドアの前で見知った人物がウロウロしていたのを目撃する。



 「マリアさん? 何してんの? セリアさんも一緒に……」



 「ひゃい!」と、肩を上げてびっくりするほど分かりやすく驚くマリア、そしてその様子を見て横で呆れた顔をするセリア。そしてマリアがブリキ人形が壊れたようなギギギという音を立てそうなほどゆっくりとこちらを振り向く。



 「ききき奇遇ですわねヒビキさん。あなたも生徒会室に何か御用なのですか?」

 「用と言うか、一応生徒会メンバーですし……」

 「ああなるほど……生徒会のメンバーなら仕方な……ん? え? 今なんと?」

 「生徒会メンバー……です、けど」



 文字通り開いた口が塞がっていない様子のマリア、それを見て頭を抱えだすセリア、何かまずいことでも言ったのかと思う響、そしてこの三人のやりとりを見てにやけるアリア。

 正直、何も知らない人がここを通りかかろうとしたら無言で回れ右して引き返すレベルで異様な空気が流れていただろう。無論、響自身もこの異様な空気には気が付いていたが、収集のつけ方にどこから手を付けていいのか分からずにいた。



 「あー、えっと、とりあえず生徒会長のアリア・ノーデンスという方はあなたで合ってますかね?」

 「僕かい? そうだよ、僕が生徒会長のアリア・ノーデンスだ。セリア・ロット・サイトさん?」

 「ご存じだったとは光栄です。実は本日ここにお伺いしたのはその、ヒビキさんのことで……」

 「え? 俺?」



 立ち話もなんだとアリアが全員を一旦生徒会室へと招き、詳しい話がなされた。

 セリアの話によると、マリアが自ら生徒会のメンバーに立候補しようと意気込んだが直前でおっかなくなってしまってウロウロしていたところに響とアリアが立ち寄り、今に至るという。

 意気揚々と立候補するつもりが直前で怖気づき、さらには同級生がその立候補するつもりで訪れた組織のメンバーだったことに驚きを隠せず、体育座りでソファの上で丸くなっている。



 「フォートレス嬢、一先ず機嫌を直してほしいんだがね?」

 「……拗ねてなどいませんわ……」

 「そうには見えないが……まあいい、君はここへ自ら立候補しに来た、そうだね?」

 「そうですわ……」

 「僕は基本、来るものは拒まない精神でね、折角その気があるんだったら是非とも入ってほしいと思ってるんだ」

 「ええそうですか……それはそれは……今なんと仰いました!?」



 体育座りの体制のまま顔だけをガバッと上げ、またしても口をあんぐりとするマリア。次第に状況が呑み込めたのか徐々に口角が上がり始め、目をキラキラさせていく。



 「ほ、本当によろしいんですの!?」

 「よろしいも何もそれが目的で来たんだろう? 僕は歓迎するよ、マリア・キャロル・フォートレス。ヒビキ君も異論はないね?」

 「それはもちろん」

 


 かくしてマリアの生徒会メンバー入りが決定したのだった。

 その後ルンルン気分でスキップしながらセリアと帰り「やりましたわあああああああ!!!」と、生徒会室で叫びながら年相応なのかは分からんが、ピョンピョン跳ねてこれ以上ないくらいの喜びを体全体で表していた光景を響は今後忘れたくても忘れられないだろう面白すぎて。



 マリア達を見送り先輩と別れて家路につく。帰るころにはすっかり夕方になってしまい、父様に若干心配されてしまった。冒険者ギルドで登録を済ませたと報告したところ、「やはりお前は俺の子だな」と何をもってそう言ったのか分からなかったが、よくよく考えれば元冒険者だったななどと浴槽でお湯につかりながら考えていた。

 途中、カレンが乱入するというちょっとした事故があったがなんとかやり過ごせた。

 純真無垢な十歳なら多少なりとも照れたりするんだろうが、すでに中身は二十五歳前後、それくらいでは動じない。ただし童貞は除く。



 翌日から妙にテンションの高いマリアが、クラスでテンションが高すぎるが故に心配され、マリア派の方々からはより崇拝されたというが、真実は誰にも分らない。というか分かってしまったらなんとなくだが、負けな気がする。



△▼△▼△▼△



 その週の週末、日曜にあたる日にアリアの提案で、マリアの冒険者登録も兼ねて任務に行くことになった。

 低難度の討伐任務だったので、誰一人として任務が難航するとは思っていなかった。

 無論、ゲイルさんらギルドの人たちも誰も思わなかっただろう。

 完全なイレギュラーだったその存在によって、任務地である平原は文字通り焼け野原と化し、ゴールド級の冒険者と一部の王国騎士団の人たちが駆けつけるという異常事態になった。

 そしてその問題の任務中心にいた、響はその光景を見てこう思った。




 「やり過ぎた……」




 その嘆きを呟いた時はすでに後の祭りのことだった。

タイトルのネタが段々と無くなってくるという危機感。

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