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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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決闘のお話。

戦闘回、というよりは戦闘回の前座的な

 場所は再びスラム街、だが今回は時間帯が違った。



 時間は深夜、良い子はとっくに寝静まっている頃、そこにマリアとリナリアはリナリアお手製の黒ローブを着て気配を消しながらやって来た。



 目的の場所は言わずもがなナインと遭遇したあの教会跡地、二人は周囲をこれでもかと警戒しながら足音と気配を消して教会の中へと侵入した。


 協会は嫌というほどに静かで誰もいないのかと思われても違和感がないほどにしんとしていた。二人は目配せをして一度頷き二手に分かれた。



 マリアは教会の壁に魔方陣をいくつか張り付け、リナリアは教会の中心部に五角形にまた違う魔方陣を張り付けた。

 そしてマリアはローブの袖から拳銃を取り出してステンドグラスに向けて数発発砲、ステンドグラスの割れる音と発砲音とが同時に響き夜に聞くには五月蠅い音だった。





 それが終わると今度はすぐさま転移してその場から姿を消した。



 すると次はその音に誘われたものが一人いた。


 『………』


 件の人物、ナイン・オブライエン・サー・メビウス。


 銃声、というこの異世界では聞きなれないであろう音を聞いた彼は相手の出方が分かるまでじっと待機していたが突然の沈黙に不思議に思い姿を現した。


 『今の音……ステンドグラスの割れる音ともう一つ、聞いたことのない音………』


 ナインはこの事態がハーメルンたちによるものだろうと想像はついていたが未だに銃声という未知の音に翻弄されていた。


 ぶつぶつと独り言を言いながらナインは教会の中をコツコツと足音鳴らしてゆっくり歩く。







 すると、床の魔方陣と壁一面の魔方陣がセンサーのように反応して赤く光った。



 『……!!』


 





 二人が教会に仕掛けた魔法は、対象が範囲内に入ると爆発する自動爆発術式。

 



 つまりはセンサー爆弾である。火薬ではなく、魔力の。




 爆音を鳴らして煙を黙々と上げて崩壊する教会、その煙の中からナインは飛び出して空中でくるりと一回転して地面に着地して土埃を払う。





 そしてそこへマリアとリナリアが間髪入れずに急襲を仕掛けた、ナインはそれを回避して距離を取りながら魔法を放ちわざと地面に当てることで二人の視界を奪い行動を抑制した。



 だが二人はそれに臆することなく真っすぐナインの方へと走り魔法を放ちながら突撃した、ナインはそれを素手で弾きながら二人に向かって走ったがマリアとリナリアは突然急ブレーキをかけて斜め後ろへと跳んだ。



 そのまま後ろに着地し二人は夜のスラム街に佇んだ。


 『……ハーメルンの仲間か……』


 「まぁ、そんなところかな?」


 「そう言えばリナリア、攻撃しても拘束されませんわね?」


 「狙って当ててるわけじゃないからね。裏技みたいなものだ」


 『……その魔力、女神リナリア』


 「おや? 知っていたのか」


 『依然イグニス様から聞きましたから、そっちは魔力的に人族ですか」


 魔力の感覚で二人の素性をある程度把握したナイン。ならばとナインは余計なことをされる前に速やかに二人を葬り去ることに決めて一気に加速して距離を詰めて自分の得意な近接戦闘の範囲にまで縮めようとしていた。


 「マリアっ!」


 「分かってます!」


 二人はそこから全速力でナインから逃亡した、マリアは逃げながらもいつの間に覚えたのか新たな魔法を発動させる。


 その魔法は所謂機雷のようなもので一定時間か一定範囲内に敵が違づいた瞬間にドカンと爆発するタイプの魔法、この魔法は分類的には上級魔法に属しているが今回マリアは複数個の機雷をふよふよと漂わせている、これは技術的には緋級魔法に相当するもので個々を維持させておくのにある程度の魔力を使う。


 だがそこは魔王軍幹部、多少受けながらも大したダメージにはなっておらずスピードも衰えていない。それどころか攻撃を受けて煽られたためか余計スピードが上がっている。


 「やっぱり付け焼刃じゃダメですわね……」


 「仕方ない、今回の作戦での私たちの役割は今のところ順調に果たしている」


 そう、今回二人はナインを討伐するために出向いたわけではない。




 今回、響たちは作戦を練って挑んでいる。その作戦内容で言えば現在マリアとリナリアは立派にかつ順調に自分たちの役割を果たしているのだ。


 『いい感じに煽ってくれますねぇ………やりがいがありますよぉ!!』


 目を大きく見開いて先ほどとは打って変わって戦闘モードに入ったナイン、『クハハハハハハハハァ!』と邪悪な笑いを上げながら蹴るたびに衝撃波を発生させながら二人との距離をどんどん縮めていく。


 『まずはお前!』


 「……分かってましたわよっ!」


 


 ナインの最初の狙いは響たちの中で最も戦闘力が低いマリアだった、だがマリアはそれを「分かっていた」と一蹴、反転させてナインに向かって突進した。


 『そっちから来るか! 面白い!』


 「あまり舐めないでくださいまし」




 ナインはマリアを捉えようとその手を伸ばした。



 だが、



 『なに……?』


 ナインの体が空中でピタリと止まり、自由落下をし始めた。



 マリアはそのナインの体を踏み台にして高く跳躍した。



 



 響のオリジナル魔法、「ニュートンの林檎」


 マリアはそれを、ほんのわずかな時間だけ、扱えるようになっていたのだ。



 勿論ただの付け焼刃であり響のように完璧に扱えるわけではない。ただそれでも要は使いどころ、ナインの動きを止めて踏み台にするくらいの時間なら確保できる。




 「ナイスだ、マリア。成長したな」


 「あ、ありがとうございます……えへへ……」


 リナリアのもとへと着地したマリアは褒められて嬉しそうに顔を緩めて笑った。








 しかしいつまでもそうしているわけにはいかない、もうすでにナインにかかった「ニュートンの林檎」はほとんど解けてしまっている。



 ナインはすぐに拘束から解放され、地面に着地した。



 『私を踏み台にしたか……人族の分際でぇ!!!』


 「相当怒ってますわね、あれ」


 「問題ない、そっちの方がやりやすい。それに――――」



 

 「――――もうポイントだ」とリナリアが呟くとナインの頭上から無数の氷の礫が風を切りながら振りそそぎナインは防御魔法を展開してそれを防ぐ。


 

 『ちぃ……! なんだ!?』



 







 







 「あっはははは! やっぱりこういうのは楽しいね、僕大好きだ!」


 「アリア、あまりはしゃぎ過ぎないようにね?」


 「予定通り、ですわね」


 「よしよし、順調だな」




 上空から、アリアとフランの天才コンビがマリアとリナリアのもとへと落ちてきた。

数の暴力で訴えよう

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