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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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不穏のお話。

諸君、派手に行こう。

 『シャルル、奥の部屋に行ってなさい』


 「はーい!」


 シャルルと呼ばれたその子供はパンの入った紙袋を両手に抱えて教会の奥にある木製の扉を開けてその中へと入っていった。恐らく、かつて懺悔室として使用されていた場所だろう。


 『さて……どういう要件なのかなハーメルン』


 『分かっている癖に何を――――』


 『ああ分かっているとも、人族の勇者なんぞ連れてきて、戦う気満々じゃないか』


 「残念ながらこんなに早く会えると思っていなかったのでな、ナイン・オブライエン・サー・メビウス」


 そう言いつつもグリムは装備しているアロンダイトに手をかけておりいつでも抜刀できるようにしているがナインは表情一つ変えていない。


 『それでそこの男の子は?』



 ナインの注意が響へと向いた。


 「ヒビキ・アルバレスト、人族の勇者パーティーメンバーです、お見知りおきを」


 『はは、これは丁寧にどうも』



 ナインは丁寧に響に一礼した。

 今のところ、ナインからは敵意が感じられない三人だが相手は現役の魔王軍幹部。何をしてくるか分かったものではない。



 『それで勇者よ、君は私の存在を確認した。で? どうする?』


 

 人族の勇者一人、元魔王軍幹部一人、女神から直接能力を貰った転生者一人、この面子ならそう簡単にはやられないだろう。



 だがナインはすでにハイラインを瀕死の状態に追い込んだという過去がある、それが単騎であれ複数であれ、ハイラインを倒した事実は変わらない。しかも戦闘能力はハーメルンよりも格段に高い、本人が言うのなら間違いはないだろう。そして獣族の勇者を倒したのであれば、人族の勇者であるグリムも倒される可能性が高くましてやこの中で一番戦闘経験が少ない響ならもっと早くに倒される可能性だって浮上してくる。




 ならばどうするか、


 「………いや、戦う気は今のところ持ち合わせていない。そちらが来るというのなら容赦はしないがな」


 



 情報がしっかりと揃うまで、戦わない。

 今、ナインについては不明な点が多すぎる、それ故に、感情任せに戦ったものならば返り討ちに合う可能性が非常に高い。それならば、しっかりと準備をした後に万全の状態で戦った方が良いに決まっている。



 それにまさか三人ともこんなところで出会うとは思わなかったのだ。



 『ふふっ………あははははははっ!!』



 グリムの休戦宣言を聞いてナインは大きく笑った。



 『はははははっ!! まさか勇者ともあろうものが魔王軍幹部である私を見逃すとは!』


 「くっ………」


 『まぁいいでしょう。私も今戦うのは流石に分が悪い、先のハイライン・オーヴェールとの戦いの傷が私もまだ回復していないものでね……』


 「それは、好都合だな」


 『それに、しばらくは何もする気はありませんよ。今のところはね』


 「大人しくしてくれるのなら、こちらとしても喜ばしい限りだ。その間に準備を整えられる」


 

 「お前を殺す準備をな」とグリムは冷たく言い放ち、響とハーメルンに引き上げるぞと伝えナインに背を向けた。響とハーメルンもその後ろをついて行き警戒しながら教会の出口まで歩いていった、そして帰る間際にハーメルンがナインの方を向き、一つ質問をした。


 『ナイン、一つ聞く』


 『なんだ? ハーメルン』


 『なぜ獣族の子供などと一緒にいた、しかも孤児と』


 『………信頼関係の一つだよ、怪しいままだと最悪ここにもいられなくなるから。ここは隠れ家としてはちょうどいい場所なんでね』


 『しっかりと食料を買ってあげるのも、信頼関係の一つか?』


 『………なにが言いたい?』


 『いや、何でもない』



 ハーメルンはナインとの会話を終わらせてグリムと響のもとへと駆けていった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「……で、どうするんですか?」


 響はグリムに尋ねた。


 「まずは今の戦力を強化せねばなるまい、二人には特に手伝ってもらうぞ」


 『当然だ、尽力する』


 三人は獣王城へと戻り、全員を中庭に招集した。





 グリムは両端に響とハーメルンを立たせて皆に向かって話し始めた。


 「どうやら、私たちはあぐらをかき過ぎていたようだ」


 「いきなりなんだよ、グリムの姉御」


 「遅すぎたんだ、準備も何もかも」


 

 グリムは一つ深呼吸をして再び口を開いた。



 「先ほど、私たちはナイン・オブライエン・サー・メビウスとの接触を果たした」



 その言葉で全員がどよめくもグリムは話すのを止めない。


 「私たちは自惚れていたんだ、魔王の脅威をさほど感じていない場所に居たがために牙を抜かれ従順に飼いならされたペットにまで成り下がった。ならば、今ここで、自覚した今こそ、立ち上がらなくてはいけない。眼前の敵を情け容赦なく打ちのめさなければならない」




 グリムは勇者という誉れ高き称号を授かりながらもこの退屈で普遍的な毎日に飽き飽きしていた、なぜ自分はこのような称号を貰っていながら未だ死の淵を彷徨っていないのか。






 それは自分がそんな経験をするほどの戦いを行っていないからだ、そのことに気付いたのは今更の事ではない。





 「今回、ナインが我々の前に立ちはだかったのはきっと偶然ではない。今こそ、抜かれた牙を取り戻す絶好の機会なのだ!!」


 グリムの心からのその言葉に全員はただ黙って聞いていた、だがその時の顔は自信と覚悟に満ち溢れ「やらねばなるまい」といった表情だった。



 「きっちりと作戦を練り、完膚なきまでに奴を叩きのめす!! それが我々から魔王への宣戦布告だ!」




 そしてグリムはアロンダイトを鞘から抜き、天高く掲げて宣言した。










 「諸君! 戦争を始めよう!!」

さて、そろそろテンポアップしないといけませんね

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