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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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メイドのお話。

世の中は案外狭かったりするのかも知れません、そういう経験はございませんか?

 「さて諸君! 三日間に渡る特訓サバイバルご苦労だった!!」


 



 響とハルクの戦闘の翌日、ようやく三日間に渡る特訓期間が終わり獣王大陸魔導学院には今回参加した生徒たちと響たち人族の勇者パーティーが一堂に集まっていた。


 女神の一柱であり生徒会長でもあるアキレアが皆の疲労を労い、それを称えるべく演説をしていた。生徒たちは真剣にアキレアの話を聞いていたが響たちはぐったりとしていた。




 三日目、どこの部隊でも追い込みをかけようとする生徒たちが押し寄せて朝から晩までずっと戦闘漬けだったようでまだ疲れが全然とれていないのだ。




 アキレアの演説は手短に行われ、その後グリムが数分ほど話したところで今回のアキレア直々の頼みによる特別特訓期間が終わり、響たちは魔導学院の校門のところで大勢の生徒たちに見送られた。


 「勇者グリム、今回は無理を言ってすまなかった。おかげで有意義な三日間を過ごすことが出来たことを生徒たちを代表して感謝する」


 「いやこちらこそ、新人たちが学ぶいい機会でした、女神アキレア。この三日間で培ったことを生かして魔王討伐への一手へと繋げることを、お約束いたしましょう」


 アキレアとグリムは互いに互いを称えると握手をしてそれからハグをした、二人の間には何かこの三日間で芽生えたものがあるらしい。



 


 その後敬礼をしている獣族の生徒たちやソルとアキレアに見送られて現在の拠点である獣王城へと帰っていった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「それじゃあみんな、お疲れ様。またすぐ動くことになるとは思うが、それまで体を休めていてくれ」


 「フランさん! 稽古を!」


 「帰って来てもう? まったく……少しは休ませてよー」


 帰って来て早々、いつになくやる気のマリアはフランに稽古の相手を申し込み、フランは困った顔をしながらもマリアと一緒に中庭へと駆けていった。


 「なんかあったの?」


 と、梓が響に聞いてくるが、響も詳しいことは知らない。




 ひとまず今は特にすることもなく時間も正午を回った頃、響はベッドに体を委ねて体を伸ばした。





 だがそれだけでは暇を潰すことも出来ない、かといってこの近くのギルドにはハイラインから出入り禁止の命令がかかっているためわざわざ離れた場所へと行かなければならない。


 転移をすれば一発だがあまり目立つのも好ましくはない、響はそう考えて気晴らしに獣王城の中を散策することにした。



 よくよく考えればこの一室と浴室、あとはここに来た最初に通された獣王の王室くらいしかまともに利用していない。


 獣王城の中は絵画などが廊下に飾られてあり度々甲冑や装備のレプリカなどが置いてあるもののごちゃごちゃしすぎておらず良いアクセントになっていた。



 響が適当に歩いているといつの間にかバルコニーへと出た、陽の光が眩しく照らして清々しく気持ちの良い場所だった。そこからは中庭が見え、大きくてシンプルな造形と装飾の噴水があるのが確認できてそこには小鳥たちが止まっていた。





 するとどこからか人の声が聞こえそちらをよく見るとフランとマリアが今まさに稽古をしている最中だった。


 「はぁっ!!」


 「そうです、その調子です………けどっ!」


 「きゃぁっ!」


 「まだ軸がぶれています、それではすぐに倒されますよ」


 「……もう一度、お願いします!」


 「はい……っと? あれはヒビキ君ではありませんか」


 「えっ?」


 二人はバルコニーからこちらを見ている響に気が付いて手を振る、響もそれに気づいて手を振り返す。フランは響の方へ手招きするようなジェスチャーをして響を呼んだ。



 響はバルコニーから飛び降りて二人のもとへと歩み寄る。


 「ちょうどよかった、ヒビキ君にもマリアの動きを見てほしくて」


 「はぁ、でも俺そんなに人に教えられるほどじゃないですよ?」


 「少なくとも私よりは出来ますから。お願いしますわ」


 「……はい」


 響を監修役として加え、マリアとフランはまた稽古を始めた。


 マリアの戦い方はまだどこかぎこちなくて探り探りといった印象を第一に受けた、フランはマリアの攻撃を完璧に受け流して防御し必要最小限の力で倒している。マリアはすぐに立ち上がって息を整えながら「もう一本!」と熱意に満ち溢れながら立ち向かっていった。


 途中、響も気が付いたことなどをアドバイスしながら自分もマリアと手合わせをして教えていった。



 


 「精が出ますね、フラン様、マリア様、ヒビキ様」




 と、一人のメイドさんが人数分のタオルと飲み物をもって現れた。誰も何も頼んでいないのに最適なタイミングで持ってくるあたり、メイドとして慣れていることが分かる。


 「あっ……いつぞやハイラインさんを追いかけてたメイド長の……」


 「おや、見られていましたか。お恥ずかしい」


 「ありがとうございますわ、フィリル」


 「ありがとうございます、お嬢様」


 「あれ? 二人知り合いなの?」


 「ええ、たまに会うのです。ヒビキは似た人を見たことがあると思いますわ」


 「似た人?」


 マリアにそう言われて響はじーっとフィリルと呼ばれた人物を見た、見た感じ二十代近い感じもするがあと少しといった雰囲気で大人っぽい佇まい、何より「フィリル」という名前の語感と会ったことのある人物を照らし合わせて答えを見つけようとしたがさっぱりわからなかった。


 「分からん……」


 「フィラデリアのことを覚えておりますか?」


 

 その言葉で完全に記憶が一致した。


 「あぁっ! 言われてみれば確かに似てます! ということは姉妹か何かで?」


 「ええそうです、その節は姉がお世話になりました。お屋敷でお嬢様とセリアお嬢様を助けていただけて感謝です」


 「フィラデリアは三姉妹の長女でして、もう一人他の大陸にいますわ」


 

 フォートレス家の屋敷でメイド長を務めるフィラデリアの家庭事情が分かったところでマリアの稽古はキリが良いのでここで一旦休憩することになった。



 フィリルは再び仕事に戻り響も獣王城の探索に戻った。








 しばらく散策しているといつの間にか獣王の住まう王室へと着いてしまったので引き返しそうと思った矢先、王室から「本当か!?」という大きな声が聞こえてきた。

 響はそれを気に留めずにどこかへ行こうと思ったが好奇心には逆らえず、つい聞き耳を立ててしまった。



 中からは二人の人物の声が聞こえてきた。


 「これハイライン、声が大きい。誰かに聞かれたらどうする」


 「大丈夫だっての、そうそう聞かれねぇよ。メイドたちには近寄るなって言ってあるからな……それより、本当なのか?」


 「まだ疑惑の範囲を抜けてはおらん、一概にそうとは確定できぬ。だが、可能性は十分にある」


 「にわかには信じられねぇな………グリムの姉御たちの中に、元魔王軍幹部がいるなんて」


 




 響は扉越しに聞こえるその会話を聞いた瞬間、心臓がドクンと飛び跳ねた。




 何故ハイラインと獣王がそのことを知っているのか、このことを知る者は数えるほどしかいないはず。響はあまりの出来事にめまいがして足元が少しふらついた、そしてその勢いで王室と廊下とを隔てる扉が微かに動いてしまって「ギイィ……」と音が鳴った。




 「誰だっ!?」




 ハイラインはトップスピードでドアを開けて外を確認した。










 だがそこには誰の姿もなく、ハイラインは不思議に思いながらもドアを閉めて再び国王との話を進めた。

ハーメルンの秘密に気づかれた……?

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