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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
120/221

激突のお話。

そろそろ、主人公無双させたくない?

 「いやー良く寝た」


 「俺さ、朝から教われるんじゃないかって思ってた」


 「俺も俺も」


 午前九時頃、目が覚めた響と影山はマリアたちと同じく朝食を探すべく森の中をウロウロと歩き回っていた。道中木の実を採ったり魔物たちを倒しながら森の中を散策していると、周りからなんだか嫌な気配がする。それを響だけではなく影山も感じ取ったらしく二人は目配せをして一度頷くとわざとその気配に気づいていないふりをして進んでいった。




 すると一切の音を立てずに二人の背後の木の上からナイフを持った獣族の男女ペアがそれぞれ響と影山目がけて飛び降りてきた。


 



 もらった。





 獣族の生徒二人はそう思ったことだろう。



 だが響と影山の二人から数十cm離れた空中でその生徒たちの体はピクリと動かなくなった、腕を動かしたり足をばたつかせようと試みるも指一本すら動かない。まるで自分だけ時間が止まったかのように。


 「相変わらずチートだな、その魔法」


 「教えよっか? コツ掴めば結構簡単だぞ」


 「あじゃあ頼むわ。接近戦の時とか何かと使えるし」


 「おーけー、まぁそれよりも――――」




 二人は響のオリジナル魔法「ニュートンの林檎」で空中で無様に滑稽な姿をさらしている生徒二人を見上げた。




 「こっちの処理を先にしないとな」


 「くっ…………! 馬鹿な、気づかれていたのか……?」


 「だいぶ前から。止まってる原因は俺じゃなくて響の方ですけど」


 「いつぞや手合わせをしたあの不可視の魔法か………まさかここまで範囲が広いとは」



 生徒二人は汗を滲ませて苦悶の表情を浮かべていた。他の生徒たちの気配もまだするが襲ってこないところを見るに二人が空中で止まった場面を見たことで色々と作戦を立て直したり分析をしているのだろう。





 だがどうにも釈然としない、獣族の生徒たちではなく、今いる森がだ。


 「響」


 影山は低い声で短く響の名を呼ぶと響は頷き事の状態を察した。


 「魔物か?」


 「そんな気がする。頼んでもいいか、俺はこっちの相手するから」


 「分かった。ってかあれだな、こういう時凪沙が居れば楽なのになー」


 「確かにな」


 響と影山はふいに凪沙の適合能力のことを思い出した、こういう索敵の場面では恐らく右に出る者はいないであろうあの能力を今使えたのなら、二人はそんなどうにもならないもどかしさを払拭すべく戦闘準備をした。



 響はアサルトライフルを二丁袖から出すような動作で作成した、傍目からは動きの通り響の服の袖の中から大きな武器が出てきた、という風に見えただろうが響がやったことはそう見えるように銃を作っただけという完全な見せかけ動作である。


 「んじゃ、そっちは任せた」


 「おう。あ、流れ弾に当たんなよ」


 「気ぃつけるよ」


 二人は拳を一度コツンと合わせると響は森の奥へと消えていった。それと同時に「ニュートンの林檎」が解かれて先ほどまで空中で止まっていた二人が地面にドシャッと落ちた。



 それを皮切りに今まで潜んでいた他の獣族の生徒たちも次々と地上に降りまだ何人かは中~遠距離要員として木々の上に潜んでいる。



 そしてその数秒後、連続した発砲音と魔物の声そして銃弾が木々を貫通する鈍い音が聞こえてきた。



 「……さってと。俺も頑張らないと、あいつをぶっ倒せるくらいには」



ぽつりと影山は独り言を漏らし、獣族の生徒たちへと向かった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「んでまぁ、俺が勝って響の魔物討伐し終えたんだけど近くにいた他の魔物の群れが響を怖がって一気に逃げちゃって。それでさっきに至るって訳なんだけど」


 「そうだったのですか……にしてもなんですの? その『あさるとらいふる』というのは」


 「あれ、知らなかったっけ? 響―!」


 「んー? どしたー?」


 「マリアさんがアサルトライフル見たいってよー」


 「これか?」


 響はさも当然というように虚空からアサルトライフルを記憶から複製してマリアに見せつけるように動かすとマリアは目をキラキラさせて響のもとへと走っていきじっくりと眺め始めた。


 「こんな武器見たことありませんわ………近接武器ではないですわよね? どうやって使うんですの?」


 「ここを引いたら銃弾が出て……」


 「ここですのね?」


 「あ! ちょっと! 危ないって!」




 ババババババババッ!!




 「………わぁ」


 「こうなるから、分かった?」


 「はい………」


 引き金を引いたことによりフルオートで銃弾が空高く打ち上げられ、発砲音が湖畔に響き渡り近距離で警戒心ゼロの状態で聞いてしまったマリアは耳を抑えながら反省していた。





 一方獣族の生徒たちはソルを見つけ、その隣にはまだ見ぬフランという強者がいることに気付き挑んでは返り討ちに合い挑んでは返り討ちに合いを繰り返していた。




 

 そしてそんな時、向こうの方からガヤガヤと人の、それも集団の声が微かに聞こえてきた。



 「ボス、ここらへんじゃないですか?」


 「ああ近いぞ!! おっし野郎ども、気合入れてけよ!!」


 

 その声は何処か聞いたことのある声だと響は瞬時に感じ取った。



 そしてその声の主たちが目の前に現れた時、響の記憶は完全なものとなって復活した。




 「あーっ!!!」


 「んん?? あん時の餓鬼じゃねぇか! 確か名前は……そう! ヒビキだ!」


 「そっちは確か、ハルクさんでしたっけ?」


 「がっはっは! なんだ覚えてたのか! えらく律儀だなぁ、がっはっはっはっは!!!」


 


 声の主たちのボスであり獣王大陸のならず者集団「豪傑の獅子」をまとめ上げる巨漢の大男ハルク・モーグランが両手を腰に当てて野太い声で見た目と同じく豪快に笑っていた。


 「響、お前知り合いか?」


 「まぁちょっと」


 「ヒビキ! さっきの爆発音はお前か? ババババババっていう」


 「ああ、ええ、まぁ」


 「はぁーん………」


 ハルクは響を舐めまわすようにして見ると影山たち他のメンバーも一瞥して何かを決めたように「よし」と言った。



 「お前らよく聞け、今日は楽しめるぞ」


 「ていうことは……!」


 「あぁそういうことだ」


 

 ハルクは大勢の仲間に主語もなしに告げると子分たちは揃って武器を構え始めた。


 「あー……そういうこと」


 「はっはー! ヒビキ、お前ぇも中々に勘がいいじゃねぇか」


 「それほどでも」


 「どういうことですの?」


 何かを察した響と何も察せていないマリア、他のフランや影山そして獣族の生徒たちにソルはこれから何が起きるのかすでに分かっているようだった。


 「俺たちゃ獣族のならず者………好きなように生きて好きなように死ぬ。それがモットーよ」


 ハルクは一拍置いて再び言葉を繋げる。



 


 「だから俺たちは今からお前たちと殺し合うつもりで戦う! お前らが拒否しても無駄だ、生憎俺らは人の意見を聞かねぇんだ!」


 「へっへっへ………」







 何という横暴、何という身勝手さ。


 何一つとして理論として成り立っていないその理由を簡単に説明するとするならば、戦いたくなったから響たちとこれから戦う。拒否権はない。


 ということだろう。




 「何という頭の悪い理論だろうか………」




 響はぼやくように言いため息を吐くと一人で前に進んだ。


 「聖也、ちょっと避難しててくれ。こいつらは俺一人でやる」


 「き、危険ですわ!」


 「なまってた体を動かすにはちょうどいい」


 マリアの制止も聞かずに響は数歩前へと出て、王都戦で使ったあの白い鎧を纏った。




 それを見て響の胸中を察した影山はマリアを連れて周りにはなれるように指示して全員で森の中へと避難した。


 「どうして止めるんですの。いくらなんでも一人で戦うのはあまりにも……」


 「あまりにも危険だって?」


 「そうです」


 「ま、大丈夫でしょ。あいつ、梓の影響でだいぶ負けず嫌いになっててな。しかも一回やるって決めたら手加減しねぇんだ」


 長年の経験と勘から導き出された影山の推測はどうやらマリアには上手く伝わらなかったようでそれでも制止しに行こうとするマリアを今度は魔法で物理的に拘束して動きを抑制した。


 「今行っても、巻き込まれて死ぬだけだって」


 絶対に響のもとには行かせようとしない影山に観念したのかマリアは大人しく森の茂みから響の戦いを見守ることにした。







 「ヒビキ、お前、舐めてんのか?」


 「舐めてる? そんなわけないじゃないですか」


 「じゃあなんで一人で……!」


 「決まってるじゃないですか」




 響は右手にアロンダイトを、左手にはアンチマテリアルライフルをそれぞれ一つずつ記憶から複製して携えた。



 「一人でも事足りるからだ」



 明らかなその挑発に青筋を立てて怒りを八つ当たりさせるようにして仲間たちに号令を飛ばすハルク、その憤怒の号令を聞くと一斉に響き目がけて襲い掛かってきた。






 響は眼前に迫りくる敵を、ただ冷ややかに見ていた。

次回、戦闘パート

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