突発的のお話。
前半は割とほのぼのしています、前半はね。
「んぅ…………もう朝……ですの……?」
「そうだよ、おはようマリア」
「……おはようございますわ、フランさん」
朝日が眩しい自然の中で目覚めたマリアはにこやかなフランに優しく挨拶された、それから湖の水で顔を洗って目を覚ますとマリアは当たりをキョロキョロと見渡した。
「ソルさんはもう、行ってしまったのですか?」
「うん、私が起きた頃にはもういなかったよ。代わりにこんなものが」
フランは服のポケットから一枚の紙きれをマリアに差し出した。
それは手紙で、そこにはソルの直筆で昨日についての事がたくさん書き連ねてあり文章中には『先日はお世話になりました、おかげで、自分の力をさらに高めることが出来ました』と二人に対しての感謝の言葉が書かれてあった。
マリアはそれを読み終えるとフランに返し、湖の水で髪を濡らして寝癖を直した。訓練開始時にはいつも通りテンプレお嬢様キャラよろしく、綺麗な金髪を縦ロールにしていたがここでは櫛やブラシもないので髪を束ねて魔法で氷で出来たかんざしのようなものを作りだして髪を後ろで留めた。
「へぇ、そういう髪型も似合うじゃん」
「そ、そうでしょうか? ありがとうございます、嬉しいですわ」
「余計お嬢様っぽくなったんじゃない? ふふっ、可愛い」
「あ、あまり言わないでください。恥ずかしいですから……」
普段と違う髪型にするのが慣れていないのかフランに褒められてどことなく照れくさくなるマリアは、「きょ、今日は何をするんですの?」と無理やり話題を逸らしていた。
まだ早い時間ということもあり朝食も取っていないのでひとまずは何か食料になるものを探してから決めという方針で今日の予定は決定した。
なんなら魔物も食料として代用できるためタンパク源としては申し分ない、二人は重い腰を上げていざ森の中へと食料探しを開始しようとした。
数十分後、二人は木の実や魔物の生肉を朝食としては差し支えない量もってきて湖のほとりで簡単な調理を始めた。
今日の朝食は魔物肉の直火焼きに取れたて木の実、それに湖にいた魚を焼いたもの。食料も何もない状態からにしては中々に充実したメニューを二人は朝から豪快に食べしっかりと体力をつけた。
それから二人は特に獣族の生徒たちとも出会わなかったためフランがマリアに基礎戦闘能力向上の講師としてじっくり教えることになり、マリアはフランに食らいつくかのように盗み取れる技術は盗み取ろうと貪欲に学んでいた。
マリアも魔法学校にいた頃より断然戦闘能力が上がっている、戦闘面だけでなく精神面も鍛えられておりまだまだ半人前ではあるが戦士としては着実に花が開いてきている。
二人は数時間の特訓を終えて今度は昼食を求めて行動し、朝と同じようなものを食べた。
「ふぅ……食べた食べた。なんだか眠くなっちゃうねー」
「そうですわね、でもそんなこと言ってたら誰か来るんじゃないんですの?」
「確かにね、そうなったらそうなったらで正面から戦えば――――」
二人がそんな会話をしていると何やら森の方が少しだけ騒がしくなってきた気がした、それを二人ともが感じ取りじっとそちらを見つめて目配せをした。
「私……なんだか言ってはいけないことを言ったような気がしますわ……」
「あっはは………」
騒がしさはより一層五月蠅くなり、流石にまずいのではと思った二人は立ち上がって戦闘態勢を取った。
音は段々と自分たちの方へと近づき、森からは複数の魔物の群れが勢いよく飛び出してきた。
「フレイムエヴォ――――」
「ちょっと待って」
「――――ルヴ………ってどうして止めるんですの、フランさん」
魔物たちの群れに魔法を放とうとしたマリアをフランは直前で制止した、マリアはフランに何故止めたのかと反射的に聞き返したが、その次の瞬間、マリアは驚くべき光景を見た。
何故なら、魔物たちは二人を襲おうとせず、二人を避けるようにして逃げていったからだ。こんなこと通常ならばあり得ないことでその様子は、魔物たちが自分たちより強大なものから逃げているようにも見えた。
「な、なんですの……?」
「何かから逃げてるみたいにも見えたけど………行ってみよう」
「は、はい」
二人が森へ立ち入ろうとした瞬間、森からは複数の雄叫びが聞こえてきた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「なんだなんだなんだ?」
「聖也ぁ! 周り込めんで退路を断て! 皆さんは私の銃撃の後に突撃してください!」
「了解!!!!!」
「あれ? ヒビキにセイヤ……? 何やってるんですの?」
森からは雄叫びを上げながら魔物たちを追っている獣族の生徒たちとそれを束ねている響と影山の二人が出てきた。
影山は適合能力「全神全霊」により一気に身体能力を強化して加速していき一瞬にして魔物たちの正面へと回り込み逃げ場を断った。
そこへ響が適合能力「兵器神速」でアサルトライフルを二丁複製して一人飛び出し、走る勢いをそのままに右足を前に出して滑るようにブレーキをかけながら前方にいる魔物たちの群れに発砲した。
それを合図に獣族の生徒たちは流れ弾を一切気にすることなく魔物たちに突撃していき瞬く間に討伐していった。
十数体いたであろうその群れはたった十数秒で壊滅し、肉塊と成り果てた。
「良い動きです、全員が他の人の邪魔をすることなくスムーズかつスマートでした。お見事です」
「感謝いたします、教官殿」
「あのー………何やってるんですの?」
「えっ? あっ、マリア、それにフランさんも」
「久しぶりー」
完全に魔物たちに夢中で気づいていなかった響と影山、何をしているのかと聞かれればただの魔物討伐である。
なぜこんなことになったのかは、今から約数時間ほど前に遡る。
響と影山は小鳥のさえずりという名のアラームで目を覚ました。
獣族の生徒たちは変なところで真面目なんですかね