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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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乱戦のお話。

いくら集団戦でもチートはそれをひっくり返せるくらいの力を持っています、故にチートなのです。

 「聖也! お前はこっちを頼む、俺は残りを片づける!」


 「おっけ、気ぃ抜くなよ!」


 響は影山に地上戦を任せて自分はジャンプし空中で魔方陣を展開して魔法で風を起こして空中へと飛び上がり低級魔法「マジックバレット」を手当たり次第に木々に向けてばらまいた。


 獣族の生徒たちは頭上にいる響を打ち落とそうと三人ほどがそこへ魔法を放とうとするが影山によってそれは阻まれた、彼らが反応できないほどの速度で攻撃を加えた影山は次々と襲ってくる魔法や生徒たちを華麗に躱しながら次々と気絶させていった。


 「……そこっ!」


 響は地面へと落ちる僅かな時間で木の上から逃走する生徒たちを発見し転移魔法を発動させて一番最初に目についた生徒のもとへと一瞬で転移した。


 急に目の前に現れた響に獣族の生徒は「うわぁぁ!」と驚きの声を上げるが響は一切の慈悲をかけることなく腹部に強烈な一撃を食らわせた、獣族の生徒は白目を剥いてその場に倒れてピクピクと痙攣していた。


 「一人ずつやるのもめんどくせぇな……」


 と、響はそこであることを思い出して影山のもとへと戻っていった。


 「聖也! 飛べ!」


 「了解っ!」


 影山は響の指示通りに飛んだ。

 飛んだと言っても本当に鳥のように飛んだわけではなく「全神全霊アンリミテッドキャパシティ」によって跳躍力を大幅強化して数m以上軽くジャンプした。



 集団で影山と戦っていた獣族の生徒たちは突然のことに動きが止まった、そこへ響が間髪入れずに生徒たちの中心へと転移した。


 「オーバードチェイン!」


 響がそう唱えると、響を中心として無数の触手にも似た黒い鞭のような魔力の塊が次々と生徒たちを拘束していった。それは近くにいる先ほどまで影山と戦っていた生徒たちだけにとどまらず響の牽制攻撃によって木々の上から地上へと降りて逃げた生徒たちのところまでぐんぐん迫り、体に巻きついて捕縛すると、巻き戻るように収縮して、捉えられる範囲にいる獣族の生徒たちを一点に集めた。




 そこへ影山がスタッと地面に着地して二人はハイタッチをした。


 「流石」


 「サンキュ、んで、どうしようかな、これ」


 「ノープランかよ」


 「ノープラン万歳、とりあえずの拘束だ」


 響は戦いが始まる前に話しかけてきた獣族の生徒にアキレアから何か聞いていないかと尋ねたところ一枚の紙を二人に一枚ずつ差し出した。


 「これは?」


 「アキレア様から預かったものです、捕まえられたり組み伏せられたときに渡せと」


 紙にはアキレア直筆の文字で「敗者に指導を」とだけ真ん中に大きく書かれていた。


 「適当だなぁ……あの人」


 響は内心呆れながら生徒たちの拘束を解いた。


 響は影山と目配せしながら拙いなりにも出来る限りの戦術指南を施すことにした、響が魔法面で影山が近接格闘面をという形で。


 その際、獣族の生徒たちからは熱血運動部も真っ青な声量で「お願いします!!」と響と影山に頭を下げた。



△▼△▼△▼△



 「ご指導のほど、ありがとうございました。教官殿、副教官殿」


 「いえ、こちらこそ。上手く教えられたのか分かりませんけど……」


 「まぁな……」


 響と影山はお互いに上手くいったのか分からない不安の混ざった苦笑を浮かべた、二人とは対照的に獣族の生徒たちは次の指示があるんじゃないかと思いながら非常に真面目な顔つきをしていた。


 「あ、そういえば。この後のことについて何か聞いてませんか?」


 「この後、というのは、始動を終えた後のことでしょうか」


 「そうです」


 影山はこの後について獣族の生徒の一人について聞いた。




 生徒の話によれば、アキレアから事前に説明されたことは次の三つ。


 一つは響たち勇者パーティーの面々を見つけたら即座に攻撃しても構わないこと、そしてその時の戦闘に負けた場合教えを乞うこと、それが終わった場合は一度退散して、それからなら攻撃を再び仕掛けても構わないということ。

 それ以外は響たちと同じく自給自足をしてこいとのことだった。



 「あー……なるほど」


 「なるほど」


 「では私たちはこれで一旦失礼します」


 「あ、はい」


 獣族の生徒たちは忍者の如く素早い動作で退散していきその場には響きと影山の二人だけが残った。


 「さて……どうする?」


 「とりあえず拠点でも探すか」


 「そうだな」


 二人が拠点探しに目的を設定して行動しようとしたその時、またしても先ほどの生徒たちがまたしても現れた。


 「教官殿、副教官殿! 再び胸をお借りします」


 「…………早くない?」


 「お覚悟!!」


 それから二人は夜まで訓練に付き合わされることになり、その日は両陣営がぶっ倒れるまで戦闘に明け暮れたという。



△▼△▼△▼△



 その頃、獣王大陸の西端にある湖畔ではフランとマリアが一日の体の汚れを洗い落としていた。


 「綺麗な水でよかったですね、転移した場所が幸運でしたね」


 「そうですわね、でもまさかあなたと組むことになるとは思っていませんでしたわ」


 「もしかして、私と一緒だとやりずらかった?」


 「そんなことありませんわ!! むしろあなたと組めて光栄です、フラン・ヘルヴォールさん!」


 「あはは、そう? ならよかった、私もあなたと組めてよかったわ、マリアさん」


 「呼び捨てで構いませんわ、あなたの方が先輩なのですし」


 「じゃあ私もフランでいいわ」


 「分かりましたわ、フランさん!」


 月明かりが反射する夜の湖で楽し気にお喋りをする二人。

 服も下着もすべて脱いで湖に全身を浸からせているマリアとフラン、風も吹いておらず水面に波も立たない穏やかなその夜を静かに過ごしていたところへとある一人の人物が訪れた。


 「………誰だ?」


 その人物が出てくる前にいち早く気配に気づいたフランが気配のする方へと問いかけた。


 


 マリアもフランの言葉に反応してそちらを見る。





 「こんばんは」


 森から出てきたのはアキレアの側近も務めている獣族の魔導学院生徒会副会長、ソル・リーハウンナだった。


 「こんばんは、ソルさん」


 「こんばんはですわ、ソルさん」


 「水浴びしてたんですか?」


 「えぇ、波も立っていませんし、なにより体の汚れを落とせるいい機会だったので」


 「分かります、女性にとっては大事なことですもんね」


 淡々と、それでいて何か釈然としない様子で話すソル。



 フランはそれを気に留めつつマリアと一緒に濡れた体で湖から地面へと上がり、フランが魔法で温風を起こして二人いっぺんに体を乾かした。



 二人は服を着終えるまでソルは一言も発さずに律儀にその場で待ち続けた、そして着替えが終わるとようやくソルが口を開いた。


 「お着替えはお済ですか?」


 「大丈夫です。それよりも………」


 「それよりも………なんでしょうか?」


 「一人だけで来て、良かったんですか?」


 「えっ?」


 フランのその言葉にマリアが聞き返してしまった、だが質問されたソル本人はうっすらと笑みを浮かべるだけだった。


 「他にいても、私が上手く動けなくなるだけですし」


 「……そう。マリア、戦闘準備をして」


 「………っ! はいっ!」


 「流石【神童】フラン・ヘルヴォールですね」


 そうフランを称賛しながら、ソルは一槍の槍をどこからともなく取り出した。






 「来るぞっ!」






 フランが怒号を飛ばした直後、槍を構えたソルが一直線に二人へ目がけて突進してきた。

月明かりが照らす夜はどんな描写もそれなりに美しくしてくれる、そんな気がします。

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