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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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再戦のお話。

人の子VSケモミミ戦闘集団

 獣族の生徒たちはその日熱気に溢れていた、アキレアの後ろに並んでいる者たちだけではなく魔法学校の生徒たちまで何故かいつもよりやる気のある生徒たちが多かったという。


 



 何故か。





 それは今日が、記念すべき響たち人族の生徒たちとの二度目の戦闘が行われるからだ。




 「わざわざご足労頂いたことに感謝する」


 「こちらこそ、呼んでくれてありがとう」


 制服姿のアキレアとフルアーマーでアロンダイトを帯刀した姿のグリムががっしりと握手をするその後ろでは獣族の生徒たちの何人かが感嘆の声を上げたり「本物の勇者様だ……」とグリムを見て頬に涙を伝わせるものもいた、人族の勇者でこうなるのならもしここにハイラインが来たらどうなるのかは想像に難くない。


 「早速訓練を始めたいのだが宜しいだろうか?」


 「ぜひそうしてくれ、こういう場合は長々と話をするより拳を交わした方が早いだろう」


 「了解した。おらお前ら! 部隊ごとに分かれろ!」


 アキレアのその号令で生徒たちは一糸乱れぬ動きで四つの塊にそれぞれ分かれた、響たちもそれぞれの部隊に二人ずつ別れ獣族の生徒たちと向かい合うように並んだ。


 「お前らの前に立っているのがそれぞれの部隊に属する教育係、いわば教官だ。大半がお前らより年下だがお前らなんかよりもずっと強い、今回の訓練で盗める技術は盗めるだけ盗め! いいな!!」


 「「「「はい!!!」」」」


 生徒たちの大きな返事が部屋中に響き渡る。響たちは第一部隊からそれぞれ自己紹介をしていった。




 第一部隊は教官がアリア、副教官が梓

 第二部隊は教官が響で副教官が影山

 第三部隊は教官がハーメルンで副教官がリナリア

 そして第四部隊の教官はフランで副教官がマリアという内訳になっている。




 今回グリムは総指揮ということで特別枠となっている、流石に勇者が参戦してしまってはアドバイスこそ的確だろうがあまりにも実力差が大きすぎるということで別枠での参戦である。



 「ではやろうか」



 そう言ってアキレアはパチンと指を一回鳴らした、するとアキレアとグリム以外の全員の足元に赤い魔方陣が現れた。


 


 その光景は、響たちがこの世界に連れてこられる前、東雲アザミによって転移させられた時のことを響・梓・影山の三人に思い出させた。











 そして二人を残して他の全員がアキレアによって転移させられた。


 「…………こんなことになるとは、聞いていないぞ」


 「なぁに、ちょっとしたサプライズだよサプライズ。あいつらもおたくらも、より過酷な環境で修練しなきゃこの先生き残れない………そうだろ?」


 「流石は女神、といったところか」


 「リナリアから聞いたな?」


 「あぁ」


 「それでぇ? 女神さま相手に敬語もなしか」


 「確かに本来ならば敬って話すのが礼儀というものだ。しかし、恐らくこれから行われるのは言葉などもはや不要の代物になる真剣勝負だろう。ならば、そんなものは一切合切切り捨てて、拳で語り合うのが筋というものだ!」


 その瞬間、グリムの醸し出す闘気が激しくなった。




 「……くくく…………かっはははははははははははははは!!!! その通りだグリム・メイガス!! やはりこうでなければ……こうでなければ血が滾らんというものよ!!」


 そして、アキレアの纏う闘志もより一層高まった。



 グリムはアロンダイトを鞘から抜き、アキレアは拳と拳をぶつかり合わせ、可視出来るのではないかというほどに膨らんだ殺気を互いに心の内に孕ませながら今、同時に地を蹴り、交わり合った。



△▼△▼△▼△



 一方その頃、響と影山は山奥にいた。


 「油断したな」


 「だな、どうするよ」


 「どうするって言われてもなぁ………まずは周辺探索じゃないか?」


 「そうだな、そうするか……ってあれなんだ?」


 影山が指さす方向には木の枝に何やら紙が結び付けられていた。二人はそちらまで行き紙を破かないように枝から取り外して広げるとそこには「今回の予定」とタイトルの書かれた日程表みたいなのが書いてあった。


 「なになに………『今回の訓練は訓練と名ばかりのアキレア様の暇つぶしみたいなものです、アキレア様に代わって私魔導学院生徒会副会長ソル・リーハウンナがお詫びいたします』…………は?」


 ソルのお詫び文章から始まったこの手紙、それは二人が読み進めれば読み進めるほど頭が痛くなるようなものだった。





 まず前提条件としてこれはアキレアがその時の気分で準備したほぼ無計画なもの。そして今回の訓練は訓練という名のサバイバルゲームで、その範囲は獣王大陸全域というスケールの大きなもの。

 これらがまず箇条書きで書かれてあり、その下にもまたソルのお詫び文章が書いてあった。本当苦労の耐えない人だなと二人は驚き半分情け半分で読んでいた。




 「『なおこの訓練は今日から三日間昼夜問わず行われ、学院の全生徒たちがあなたたちを襲います。正直なことを申してしまえば、部隊に分けた意味はありません』だってさ」


 「いやだってさってお前……てことはあれか? 部隊に分けたのはこういう考え方にいかないようにするためのフェイクとかそういう話か?」


 「知らん、ほんとにアキレアのその場で思いついたことかもしんねぇぞ」


 「考えるだけ意味ないか……つまり三日間獣王大陸全部を戦場として学院生徒戦えーってことだろ? とりあえず戦闘面はお前に任せるわ、響」


 「ふざけんなお前も戦うんだよ」


 「うるせぇ! 彼女二人も作りやがって! うらやましいぞこのやろう!!」


 「今それ関係ないだろ!?」


 響と影山が二人で騒がしくしていると周りの木々がこれに呼応するかのようにガサガサと揺れ始めた。二人はそれを感じ取ると一瞬で警戒態勢に入り冷静に分析を始めた。


 「風か……? いや、木が揺れるほど強いのは吹いていない……」


 「風じゃねえな。響、何かあったら防御頼む、俺は動くもん見つけたらそっちに行く」


 「分かった。ただしあまり深追いはするなよ」



 二人が短く会話を終えるとそれを見計らったかのように一本の短刀が飛んできた、響は魔法を使うまでもないと判断し体を捻って躱し短刀の柄を掴んだ。


 「聖也っ!」


 「分かってる!」


 影山は短刀が飛んできた方向に体を向けて踏み込みたった一歩で飛んできた木のところに着地する、そして足を枝の上に置いたその時、魔方陣が展開して茨が影山の足に絡みつこうとしていた。


 「なっ……!?」


 そして魔方陣は枝ごと爆発し煙がその木を包み込んだ。



 影山は間一髪人の反応速度を超えた反射神経で枝を蹴りつけ茨が絡みつく前に脱出し空中で一回転して響の隣へと着地した。

 響は爆発する光景を表情一つ変えないでただ黙ってみていた。



 「よぉ聖也、どうだった?」


 「ん? あぁ、予想通りのトラップで逆にびっくりした」


 「拘束魔法も入ってたろ」


 「やっぱりお前も予想ついてたか」


 「だって結構考えつきやすいだろそのトラップ、つーか向こうこっちのこと殺す気じゃねえか」


 「ほんとだよ………響、敵の数は?」


 「凪沙じゃないから正確な数じゃないけど、感じる分にはざっと十から十五ってところか」


 「いけるな?」


 「当たり前だ、お前こそへまするなよ」


 「おうよ」


 


 そして二人の前に十人の獣族の生徒が囲むようにして木から降りてきた。



 「男のけもみみとかあんま見てもなぁ………」


 「それすっげぇ分かる、その点ソルさんはやっぱいいよな」


 「なんだ聖也、惚れたのか?」


 「付き合えるなら付き合いたいな、この訓練終わったら食事にでも誘ってみるかな」


 「死亡フラグ頂きましたー!」


 「しまったー!」


 「…………少々、気を抜き過ぎなのではないだろうか? 教官、副教官殿」


 二人の馬鹿なやり取りに痺れを切らしたのか生徒の一人が鋭い目つきで声をかけた、それに対して二人は不敵な笑みを浮かべて答えた。


 「いえいえ、気を抜いているわけではありませんよ?」


 「むしろこれがちょうどいいんです」


 「……? どういうことだ?」


 「分かりませんか?」



 二人は中指を立ててこう言い放った。





 「「お前らくらい、この程度の注意力で十分ってことだよアホンダラ!!」」





 ある程度油断していても勝てる、そういう意味が分かったことで獣族の生徒たちは自分たちが年端もいかない目の前の二人にコケにされているのが頭に来たのだろう。





 二人を囲っている十人は一斉に武器を携えて襲ってきた。

次回より本格的に戦闘シーンが入ってきます

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