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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
110/221

散歩のお話。

注意:作者はこんな経験したことないので一部デートとして不自然なところがあると思います、ご了承ください。

 「お前らギルド行くのは控えろ」


 「何故だハイライン、私たちはちゃんと魔物も討伐しているし報酬だって正当なものを受け取っている。禁止される理由などないはずだが」


 「やりすぎなんだよ! どこの世界にたった二日で一つのギルドの討伐依頼の8割を完遂させる化物がいるんだよ!!」


 「ここにいるじゃないか」


 「確かに魔物が減ったのは事実だ、だがそれと同時に獣族うちらの冒険者が任務受注できなくて仕事ねぇんだっつーの」


 「なら他のギルドに行けば――――」


 「全部のギルドが全部違う任務やってると思うのか姉御ぉ!?」


 朝から凄い剣幕でグリムと口論するハイライン、その理由は暇すぎたグリムたちがギルドの任務を暇つぶしがてらほとんど片づけてしまったという頭の悪い出来事の所為である。

 確かにやってしまった後で響たちもやり過ぎたなとは思ったがまさか勇者直々に怒鳴りに来るとは思わなんだ、どうりで響たちが街を歩くだけで周りの冒険者たちがざわつくわけだ。


 「いいか、これ以上ギルドを荒らすんじゃねえ、いくら姉御だからってあまり勝手なことはしないでくれよ」


 「はぁ……分かった、しばらくは大人しくしている」


 「よーっしそれでいい。ヒビキ……じゃなかったちび助、姉御の制御頼むぞ」


 「なんで言い直した!? てか制御って――――」


 「んじゃぁーなー」


 ハイラインはそのまま響の言葉を聞かずにガチャリとドアを閉めてどこかへ行ってしまった。ギルドで任務を受けるという最高の暇つぶしは今後許可が出るまでできない、だからといってこのまま部屋でうだうだしているのでは体が鈍ってしまうしそもそもいる意味がなくなってしまう。


 「あっ! そうだ!」


 突然梓ががばっと飛び起きて同じベッドに座っている響のところへハイハイしながらやって来た。


 「響! デートしよ、デート」


 その梓の言葉を聞いた時、微かにアリアとハーメルンが動いた。


 「あぁそうだな。最近お前とそういうのもなかったし、行くか」


 「ぃやったー!」


 「んじゃ行くか……って、なんすか?」


 二人の前に立ちはだかる二つの影、アリアとハーメルンが物凄く悪い顔をしながら二人を見下ろしていた。


 「つれないな~ヒビキ君は。僕だって彼女なんだから、連れて行っておくれよ」


 「あっ……す、すみません」


 『ついでだ、連れてってもらおうか!』


 「いやなんでそんな自信満々なの?」


 アリアはまだしもなぜハーメルンまでこんなに自信満々にドヤ顔で立っているのが響には分からなかったが恐らく暇すぎてキャラも忘れるくらいになってしまったのだろう。元魔王軍幹部の威厳が無くなってしまっているがそれはもう仮面を外した時点で若干危うかったのでもう手遅れだろう。


 断るに断り切れず、彼女二人の許可もあってハーメルンがパーティーメンバーに加わった。



△▼△▼△▼△



 「ふんふんふふーん!!」


 「えらく上機嫌だな梓」


 「そりゃ、そりゃぁ久しぶりの響とのデートなんだからぁ! テンション上がらない訳がないでしょ~!」


 「やめろこっち向いて笑みを浮かべるな照れるから」


 「響顔真っ赤じゃん!」


 響と梓は恋人つなぎをしながら誰がどう見ても分かりやすい惚気話をしながら獣王大陸の街を歩いていた。ただそれが二人だけの空間ならまだしも梓がいる反対側、左側にはアリアが同じく手を繋ぎながらぷくーっと珍しく頬を膨らませて不満そうな顔をしていた。


 「ヒービーキくーん?」


 「はい?」


 「『はい?』じゃないだろう、僕だって彼女なんだからもうちょっと優しくしてくれたっていいじゃないか」


 「あ、えと、すいません……」


 「いや、僕も少し意地悪だったね。ごめんよ、彼氏君」


 そう言ってアリアは恋人つなぎをしたまま左手を響の左手に回して体を密着させる、その瞬間響の心臓が大きく鼓動し先ほどよりも顔が赤くなる。

 響の左腕からはアリアの体温や温もりのみならず心臓がドクンドクンと早く高鳴っているのが微かに伝わってくる、それにアリア本人もいつも通り接しているつもりなのだろうが明らかに頬が赤くなっている。



 梓もそれに負けじと響にくっつき、響は両側から二人の温もりを感じながら今まで感じたことのない高揚感に襲われていた。


 『両手に花とはこのことですねぇ』


 ハーメルンはその三人の後ろを茶化しながら歩いていく。



 四人は獣王大陸の街を歩きながら露店で食べ物を買ったりしたりと有意義に時間を過ごす、ハーメルンも人王大陸とは違い素顔を知られても手配されたりするわけでもなく、またハーメルンのこと自体を知っている人物がほとんどいないため伸び伸びと過ごしていた。


 ここだけ切り取れば、昔からの仲間のような、そんなシチュエーションである。





 だが安息とはあまり長続きしないもの。


 響たちが街を歩いているとどこからか悲鳴が聞こえた、瞬間、四人は打って変わって真剣な顔つきになり先ほどまでのラブラブモードから戦闘モードへと切り替えた。





 「がはははははははははははは!!! 暴れろお前らぁ!!」



 突如として現れた謎の屈強な男性の集団は海賊やマフィアのようにいきなり街で暴れ始め、店のものやひ弱な人たちを脅し始めた。


 「おいおいおいおいおい!! こんな真昼間からデートか糞餓鬼共ぉ!?」


 「ここを俺らの縄張りだと知った上での行動だろうなぁ!?」


 その男たちの横暴な行動は響たちにも飛び火した。響たちはこの場を上手く丸める方法を表情を変えずに考えていたが、中でもリーダー格の屈強な大男が腰にさらしを撒いて上着を一枚肩にかけて大声を上げた。


 「てめぇら! そいつらはうちの種族じゃねえだろうが目ぇ腐ってんのか? あぁ?」


 「す、すいやせん!!」


 「折角だ、その餓鬼どもに俺らのことを教えてやれ!」


 「へい!!」


 すると男たちはちょうど響たちの目の前に来るように一か所に集まった。



 「よく聞け人族の餓鬼どもぉ! 俺らこそが獣王大陸一の荒くれ者集団っ、『豪傑の獅子』だぁ! 覚えておけぇい!!!」


 大男はそう格好良く名乗りを決めてさらにビシッと決めポーズまで決めた。




 男たちの熱気とは裏腹に、街には静寂が訪れたという。

おっさんはいいなぁ…(キャラ的な意味で)

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