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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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暇つぶしのお話。

暇つぶし(魔物大量討伐)

 パーティーの楽しさと貴族たちのしつこさ、そしてハイラインの秘密を知った翌日、響たちはとてつもない壁にぶち当たっていた。

 


 そう、暇なのである。



 今回この獣王大陸に来たのは響たち新勇者パーティーの面々を他の種族の勇者たちと合わせて知り合わせるためだし今後の予定をどうするかを決めるためでもある。

 だが今現在急を要すような決め事も特になく、また急いで討伐しなければならないような魔物たちもいない。加えて仮にこれから執務などがあったとしてもその経験のない響たちがいたところで邪魔にしかならないだろう、もし使えるとしてもリナリアやフランくらいなものだが実際グリム一人で何とかなる。


 では今グリムはどこかでそういう事務的な仕事をしているのかと聞かれたのならば答えは「いいえ」だ。現在グリムもやることがなくてさっきからずっと鎧やアロンダイトの手入れを行っている、とっくに綺麗になっているというのに。


 『今私たちは何をすればいいのかなぁ勇者様』

 

 「そうだな………強いて言うなら『何もない』だ」


 『……暇ですねぇ』


 痺れを切らしたのかハーメルンがグリムに気だるげに聞くも何もすることがないと言われ振出しに戻ってしまった。


 

 静寂が訪れる。



 これならば、魔導学院でソルやアキレアたちと稽古している方がまだ有意義なはずだ。


 そんな空気が漂っている大部屋のドアが勢いよく開き、この静寂を一蹴するほどの大声がけたたましく響いた。


 「おいお前ら! 元気……か……ってなんだどうした!? 毒でも盛られたかぁ!?」


 「ちょうどいいところに来たハイライン。全員暇なんだ、勇者であるこの私でさえな」


 「おーおーそりゃ随分だな。まぁ俺も暇してるわけだが」


 がはははとハイラインは笑うが響たちは誰一人として笑えなかった。


 「それで? 茶化しに来ただけか」


 「いやー、国王からちゃんと指示預かってんだ」


 「お、それなら早く指示を出してくれ」


 「しばらく何もないから自由にしてていいってよ。多分向こう一週間くらい」






 ハイラインのその報告で部屋は種類の異なる静寂に包まれた。

 向こう一週間することがない、それはつまり一週間何もすることがないということだ。



 だが救いはある。

 それは自由にしていていいということだ。



 この時、ハイラインを除く全員の考えが一致した。

 響たちは無言で立ち上がり部屋の外へと出た。


 「え、おい。どうしたんだよ姉御たち……おーい?」


 響たちは行き先も告げずに、呆気に取られているハイラインを置いて獣王城から獣王大陸の市街地へと出陣した。



△▼△▼△▼△



 「ようこそ獣王大陸冒険者ギルドへ! 受注ですか? 依頼ですか?」


 「……………け………っこい」


 「すみません、もう一度仰っていただいてもよろしいでしょうか?」


 「この……に……………依頼……ってこい」


 「えと……もう一度仰っていただいても――――」


 「このギルドにある討伐依頼、あるだけ持ってこい!!」


 「ひいぃぃぃ!? た、ただいまぁ!!!」


 『酷いものを見た』


 おおよそ勇者だとは思えない様子でグリムは受付嬢に凄い剣幕で凄いことを言った、そしてその一連の流れをハーメルンは信じられないような目で見て冷静にツッコんでいた。


 程なくして受付嬢さんが山積みになった依頼書を持ってきてくれた、途中何度かよろけて転びそうになっていたがギリギリのところでバランスを保っていた。


 「お、お待たせしました……。とりあえず五十枚ほどご用意いたしましたが……」


 グリムは何も喋らずにざっと依頼書を見ていく、響たちも下半分の依頼書の塊を取ってパラパラと荒く見ていく。


 「あの………」


 「上級ばかり……」


 「え?」


 「上級魔物ばかりだ。ヒビキ君、そっちは?」


 「こっちは中級魔物が多いですね、上級が数体で緋級はいません」


 「なるほど……」


 「えーっと……どういたしましょうか……?」


 「全部受けよう、このくらいすぐだ」


 「ぜ、全部ですか!?」


 受付嬢さんはグリムの言葉に大声で驚く、流石に五十枚ほどある討伐依頼をすべて受けるとは想定していなかっただろう。普通はそうだ。

 だがグリムたちはいたって真剣である、緋級魔物が一体もおらず中には中級魔物を討伐するという暇つぶしにもならないような任務ばかり。これならば冗談抜きにすぐ終わる。




 割り振りとしてはグリムが十枚の依頼を受けて響たちが残りの四十枚を五枚ずつ受ける、これでちょうどピッタリ全員に割り振られる。



 全員は座っていた席から立ち上がり衣服を直しながら、鎧の帯を締めながら、魔法で鎧を作りながら、颯爽とギルドの外へと出ていった。



 それから約一時間と少し、一切の傷を負うことなく九人は全ての任務を完了させた状態で再びギルドに戻ってきた。






 その日を境に獣族の冒険者の間で「人族の冒険者はやばい」という噂が流れたのはまた別のお話。

マリア……結構強いお嬢様

それ以外全員……実績ありのチート

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