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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第六章:勇者パーティーとして動き始めたようです
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安息のお話。

第一次睡眠ブーム

 ハイラインが自己紹介した後、獣族の国王、獣王の計らいによって響たちはとある一室へと案内された。


 「本日は遠路はるばるお疲れ様でした。こちらのお部屋は勇者様方のお部屋ですのでゆっくりとお休みください」


 「ああ、ありがとう。そうするよ」


 獣王城のメイドに案内された部屋は日本のホテルなどと比べ物にならないくらいに綺麗で尚且つ落ち着きのある部屋だった。

 響たちは荷物を部屋の隅に寄せて体を伸ばし、ここまでの疲れを取った。


 「んー……疲れましたわね」


 「お疲れ皆。しばらくは何もないだろうから、ゆっくり休んでいてくれ」


 グリムがそう言うとマリアは、人数分用意されている部屋のベッドの上へと顔から倒れ込んだ。やっぱりお嬢様でもああいうことやるんだな、と響はしみじみ思った。


 

 すると、体を休めているマリアの後ろへと気配を消しながら梓がじわじわと歩み寄った。そしてマリアはそれに気づいておらずふかふかのベッドに体を沈めていた。


 そして梓は「とうっ!」という声と共にマリアへと乗りかかった。マリアは「きゃあぁ!」という声を出して混乱していた様子だったが梓はマリアの上に乗ったままマリアの体をくすぐり始めた。


 「ちょっ……アズサ……やめ、やめてくださいま……あっはははっはははっはははは!!」


 『……奇怪な行動してますねえ』


 「さっき寝たから元気ありあまってんだろうな……あいつは昔からああなんだよ、元気すぎると阿保になるんだ」


 小さい頃から元気一杯だった梓は体力がありすぎるとそれを放電するかのように周りの人間に突貫することがあるのだ。

 事実響も体験したことがあり、幼少期に体力がありあまった状態の梓に付き合わされてへとへとになった過去がある。


 一度、幼心ながらに「なんでこんなことするの?」と聞いたことがあったのだが、梓の答えは「暇だから!」といったものでその時響は初めて諦めという感情を覚えたのだ。


 一心不乱に何かに憑りつかれたのだろうかと思うほどにこれでもかとマリアをくすぐる梓、少し経つとマリアは息を乱しながらヒィヒィ言っていた。


 響はそれを横目にしながら自分も体を休めることにしてベッドに体を預け深い溜息を吐いた。ちらりとグリムの方を見ると、アロンダイトの手入れをしていた。

 流石本物の勇者、こんな時でも凛とした態度は崩さないのか。響はグリムの姿に感心していたのだが、グリムはアロンダイトの手入れを終え「よし」というとアロンダイトを鞘にしまい、鎧を脱いでインナー姿になるとこれまでの誰よりも深くベッドに沈み込んだ。


 「……………」


 そのまま夢の世界へとエスケープした。


 『これはこれは、珍しい光景で』


 「勇者も人ってことだな」


 そのグリムの姿をハーメルンとアリアの似た者コンビが面白いものを見る表情で眺めていた。ていうか並ぶと似てるなこの二人。


 「なんか似てますよね、二人って」


 「おやおや」


 『それはそれは』


 「面白いことを言うじゃないか」

 『面白いことを言うじゃないか』


 「ハモんじゃねえ」


 そう、アリアとハーメルンは似ているのだ。

 二人とも常に何かを含んでいそうな言い回しをし、髪はアリアがクリーム色でハーメルンがブロンド、目の色がアリアが青でハーメルンが水色と、違うのは髪型と背丈くらいなものだろう。


 「第一私はこいつに殺されかけてるんだぞ? ヒビキ君」


 『……それについてはすまない』


 「素直だね?」


 『だって……ほんとのことだし……』


 「口調変わってるよ?」


 『あ……』


 完全に元々のキャラがあやふやになっているハーメルン。もしやこいつは仮面を被っている時と脱いでいる時でキャラが違うタイプの奴なのではないだろうか、そんな考えが響の頭をよぎる。

 響はアリアを見るとどうやらアリアもそんな感じのことを考えているような表情をしていたことに気が付いた、これからどういじってやろうか、そんな顔だ。


 響はそんな二人のやり取りをBGMにしながら自分もベッドの上で大の字に天井を仰いだ、そこへマリアをくすぐり終えた梓がやって来て響の伸ばしている左腕を枕にして横になった。


 「……えへっ」


 「なんだお前可愛いなこのやろう」


 梓はそのまま目を閉じグリム同様寝てしまった。

 こうなっては響はもう動くことが出来なくなって自分も少し仮眠しようかと思った矢先、アリアが開いている右腕の方にポスッと横になり響を見た。


 「ずるいじゃないか、二人だけでいちゃつくなんて。私だって彼女なのに」


 「ずるいって言われましても……」


 若干嫉妬しているアリアは梓と同じく響に密着して目を閉じ寝始めた。


 響は二人の彼女が自分の両手を枕にして寝ている光景を見ながら、窓から入る心地よい風に眠気を誘われてゆっくりと瞼を下ろしていった。








 静かな時が流れる。


 だがそれを穏やかな気持ちで見ていないものが一人。


 「神なんていなかった」


 「女神ならここに居るぞ」


 「誰がうまいこと言えと」


 影山が、両手に花状態の響を見ながら何やら絶望していた。

 リナリアは影山の呟きに意図的なのか分からないがシャレを被せるも完全にうなだれている影山の前には無力だった。


 影山はその状態のまま開いているベッドに寝ころびふて寝をしようかと思っていたところへリナリアがやって来て響と同じようにしろと言ってきた。

 影山は言われたまま両手を広げると、左手の方にリナリアが頭を預けた。


 「ちょうどいい枕だ」


 「へぇ!? あ、えーっとぉ!?」


 リナリアは影山のその驚きなど一切気にすることなく同じく眠り、動揺が収まらない影山の元へ次はハーメルンがやって来て『ほぉ?』と何やら興味深そうにしたと思ったらもう片方の腕に頭をのせた。完全に影山は響と同じような状況になったのだ。


 動揺に加え動機も収まらない影山は高まる鼓動を抑える為に自分も寝ることにした、そうじゃないとおかしくなってしまいそうだったのだ。















 そしてその状況で置いてけぼりになった人物が一人。


 「私ってもしかして影薄いのかなー………」


 【神童】の二つ名を持つフラン・ヘルヴォール。彼女だけこの睡眠ブームに乗り遅れただ一人で呆然としていた。


 フランはそう呟くと梓の攻撃でベッドでへたり、そのままの状態で寝ているマリアの隣へと行き、この状況から逃げるかのように瞼を閉じて夢の世界へと潜り込んだ。

アリアとハーメルンが似ているっていうところがメタ発言じゃないのかって?

ははっ。そうだよ(開き直り)

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