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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:魔法学校に入学するようです
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転生組と生徒会のお話。

本編よりこの部分の方が悩むっていうあれ

 数週間経ち、学校での生活にも慣れてきた頃。

 授業と授業の間の休み時間に、響は廊下で一人の女子生徒が四人の男子生徒に囲まれていたところを目撃してしまった。

 制服の首元には二本の線が入っていて、クラスごとに色分けされ、Aが白、Bが赤、Cが青、Dが緑という風に色分けされていてことから、囲まれている女子生徒は青色なのでCクラス、囲んでいる男子たちは赤色なのでBクラスということが分かる。

 少し注目して見ていたからか向こうもこちらに気が付き、何故か知らないが響にヘイトが溜まっていく。



 しまったな、少々面倒くさいことになった。

 輩がぞろぞろとこちらにやって来て「何見てんだテメエ」とか「Aクラスだからって調子乗ってんじゃねえぞ」といった、いかにもなお決まりのセリフを口々に言いながらこちらを睨み付けてくる。

 ふむ、どうしようか。あまり荒事にはさせたくないから穏便に済ませよう。



 「別にあんたらに用はない。ただちょっと注意しようとしただけだ。こちらとしてはなるべく穏便に済ませたいから、おとなしく教室に戻ってくれると助かるんだが」

 「澄ました顔してなにいい子ぶってんだよ! 俺たちがどうしようが俺たちの勝手だろうがよ! ぶん殴んぞああん!?」



 輩Aがわめきたてる。

 どうせこうなることは分かってたけど、何というか本当にこういうやつらが実在するんだな、しかも異世界で。

 響はこのことが滑稽すぎて少々笑ってしまい、輩共がさらにギャーギャーとうるさくなった。



 「おおいいぜ? そんなに笑う余裕があんだったらよぉ。ちょっとかわいがってやんよ!」



 輩Aが響の顔めがけて拳を振るう。

 やはりこうなったか。

 響はため息を吐いて、顔めがけて飛んでくる拳を左手で受けとめてこちら側に引き、相手の顔面を右手で掴んで後ろに放り投げた。

 他の連中が呆気にとられたように、投げ捨てた奴の方を見て、またこちらを見る。きれいな二度見だったと後に響は語った。



 「……」



 響は男子生徒たちに無言の圧力をかけて大人しく退散することを祈ったが、どうやら逆効果らしく余計に怒らせてしまったようで、より一層うるさくなった。

 さっきの女子生徒は心配そうにこちらを見て、今にも泣きだしそうになっている。

 先ほどと同じようにこいつらも投げ飛ばしてやろうかと思っていると、一人の男子生徒がこちらに向かってきて一言言い放った。



 「おいお前ら、何やってんだ?」



 気だるそうにそう言う男子生徒を見て、輩たちの表情が驚きの表情に変貌し、「いや……これはその、何と言いますかその」という風に明らかに態度も変わった。

 こいつらの話し方からして恐らく親玉なんだろうが、なぜだろう、初対面なはずなのにどこかで見たことがある気がする。



 「お前らさ、こういう卑怯なことはするなって俺言わなかったっけ?」



 その一言で輩が蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。投げ飛ばした奴も何とか立ち上がって、あたふたしながら逃げていく。親玉らしき男子生徒が女子生徒の元へ歩き、手を差し伸べる。女子生徒はお礼をした後、自分の教室にそそくさと入っていった。そして男子生徒が俺のところへとやってくる。



 「悪かったな、さっきの奴らいつもあんな感じでよ」

 「そうだったのか。お前も大変だな、俺の方は別に問題ないから気にしなくていいよ」



 輩たちの親玉は意外にも結構紳士的な奴でだった。

 その男子生徒は次に自己紹介をした。



 「そう言ってくれると助かる。俺はケンスケ・エルフォード・クレラッタ。Bクラスだ」



 ケンスケ……?

 響はそこでようやく目の前の男子生徒が誰なのか気が付く。

 ケンスケ()という如何にもな日本風の名前、ガラの悪い奴らを一言で退散させるその威圧、間違いない。



 「俺はヒビキ・アルバレスト、よろしく、賢介()



 名前を聞いて男子生徒の表情がやや曇った、どうやら響と同じく気づいたみたいだ。

 まさか再会がこんな感じだとは、こいつらしいっちゃこいつらしいが。



 「お前、まさか水無月か?」

 「その通りだよ、久しぶりだな荒川」



 荒川賢介。

 元いた世界では素行不良で先生にマークされていた、俗にいう不良というやつだったのだが、周りから嫌われているということはなく、実際のところを詳しく知るものはあまりいなかった。

 だが今その理由がなんとなく分かった気がする。



 「素行不良とは聞いていたが、案外そうでもないじゃないか」



 さっきの女子生徒にさりげなく手を差し伸べ、「大丈夫か?」と心配していたことを、響はちゃんと聞いていた。

 現代の高校教師もあてにならないものだな、ただのイケメンじゃないかこいつ。



 「上っ面しか見ねえ教師共の言ったことなんか信用してんじゃねえよ、ったく。ほらそろそろ授業始まるぞ、教室戻んなくていいのか?」



 そう言えばすっかり忘れていた。そろそろ戻らないと怒られるな。

 教室に向かおうとしたところで、響は賢介から呼び止められた。



 「水無月。お前、今日の放課後開いてるか?」

 「放課後?」

 「ああ、転生組の奴らが結構Bクラスに溜まっててよ、一回顔合わせしといた方がいいと思うんだが」



 思わぬ偶然だ。

 しかも一か所に固まっているなればこちらとしては願ってもいないことだ。

 そうだな、早いうちに会っといた方が後々楽だろう。



 「分かった、Aクラスにもいるから伝えとくよ」

 「頼んだ」



 そう約束を交わして各々の教室に戻り、残りの授業を片付けた。放課後のことが気になって授業が右から左へするっと抜けていき、上の空になることがしばしばあったがそんなことはどうでもいい。



 「梓、聖也、お前らちょっと付き合え」

 「どしたの響?」

 「すまんが男はちょっと……」

 「そう言う付き合うじゃねえ!  いいからちょっとついて来い」



 頭の上にハテナを浮かべる二人を引き連れて隣のBクラスへ移動する。

 教室を除くと賢介の周りには数人の生徒が集まっていた。



 「連れてきたぞー」

 「ん、来たか」


 教室内に入ると、賢介の周りにいた生徒たちが響たちに気が付き、こちらへ体を向きを変えた。

 依然としてポカンとした表情の二人をそのままに本題に移る。

 教室には現在響たち八人しかおらず、静寂があたりを包み込んでいた。そしてこの静寂を切り裂いたのは、響たちを集めた荒川だった。



 「揃ったところで始めようか。異世界転生組の再会だ」

 「異世界転生って……!」

 「マジで!? おい響、ちゃんと言っとけよこういうことは!」

 「まぁ、サプライズってことで」



 狐に化かされたように驚く二人で、静寂が笑いに変わった。



 「そんなもんでいいだろ、ほら自己紹介だお前ら」

 「ああそうだったね!いやー顔がキョトンとしてるからおかしくておかしくて・・・!さて、それじゃあ僕からいこうか。僕はナギサ・ブランクバイト、元の名前は滝本凪沙。久しぶりだね三人とも」



 パッと見、女の子に見えていたのだが正真正銘の男の娘、中学時代の友人、滝本凪沙。



 「じゃあ次は私がいこうかな。えー佐伯智香改め、トモカ・プラムライトです。元気してた?」



 クラスでは影山と一緒に中心に立っていたクラスのマドンナ的存在、佐伯智香。



 「ん? 次うち? あー、エミリ・フィート・レッドでーす。あ、前のは藤島ね、よろよろー」



 ギャルで賢介の彼女であり許嫁の藤島絵美里。



 「え、ええっと、コトハ・ダグラスです! あ、えっと……三浦琴葉です、お、お久しぶりです!」



 向こうでもこっちでもおどおど気味の小動物系女子、三浦琴葉。



 以上八人の異世界転生メンバーが、ネメシスの世界で再び会うことが出来た。

 全員見た目や名前こそこの世界の感じになっているが、性格は変わっていないようで、クラスにいた頃と違和感はなく懐かしさが蘇る。

自己紹介の後、全員で少しばかり雑談しながら帰宅し、前の世界ではあまり話せていなかった賢介や琴葉と話すことが出来た。



 家に帰り部屋で魔術本を読んで、能力の調子を確認しているとドアがノックされクラリアが入ってきた。

 その顔はどこか複雑そうにも感じられた。



 「あーヒビキ、ちょっといいか?

 「どうしたんですか父様。そんなに改まって」



 どこか釈然としないその態度に響は疑問を覚えた。

 もしかして自分の自覚していないところで何かをやらかしてしまったのだろうかと内心響はハラハラしていた、がどうやらそう言うことではないらしい。

 クラリアは神妙な顔つきで次のことを言い始めた。



 「なあヒビキ、家族が一人増えるって言ったら、お前どうする」

 「どういうことですか父様、トチ狂ったんですか?」

 「いや真顔でひっどいこと言うなお前!?」

 「すみません少し取り乱しました」



 あぶねえあぶねえ。突発的に言うからつい。

 でもあれだろう、母様のお腹に新しい命が宿ったパターンだろうかきっとそうに違いない。

 ということは俺もお兄ちゃんになるのか、と思うとちょっと嬉しいと感じたのがこの時の響の素直な感想だった。



 「もしかして弟か妹が出来るんですか?」

 「あー……いや、そういう訳じゃあないんだがな。そのー……何というか」

 「養子パターンですか?」

 「そういう訳でもないんだ」



 じゃあどういう訳なんだ?

 養子でもなけりゃ兄妹って訳でもない……となれば、いやまさかな。



 「ヒビキ。学校では結婚については何処まで教わった?」

 「えっと、男女ともに十六歳から出来るということは教わりましたが・・・」

 「そうか、じゃあ結婚は何人までできるか教えてやろう。五人までできるんだ」

 「ああ……そう言うことですか。それ以上言わなくても分かりました」



 拝啓、地球の両親たちへ。親が一人増えました。

 やったねヒビキ君! 家族が増えるよ!

 問題は相手が誰なのかだ、見知らぬ人物にいきなりお母さんですよーとか言われても引き金に指をかけてしまうかもしれない。


 「それで、相手は一体誰なんですか父様」

 「安心しろ。お前の知っている人だ」



 親指を立ててサムズアップして笑う父様。

 銃の生成をこらえる息子。



 「で結局誰ですか」

 「カレンだ」

 「よし」


 攻撃魔法の一種で、相手を拘束する中級魔法「チェーンバインド」をクラリアに浴びせた。

 父様の体の周りを囲むように五つの魔方陣が床に現れ、そこから鎖が飛び出して父様の体に巻きつき、鎖の先端が床に刺さる。


 「うおっ! お前いつの間にこんなもの覚えたんだ!? 分かったちゃんと説明する! 今度カレンも交えて説明するから! てかよし()って何が!?」

 「父様」

 「なんでしょうか!?」

 「ちょっと街を散策してきますね」



 父親を拘束したまま気分転換に街に出ることにした。

 後ろから父様の声が聞こえるがきっと空耳だろう、それにクラリアならならすぐに拘束から逃れられると思うし。

 あ、でもあの魔法って確か魔力の総量によって鎖の強度とか拘束時間変わるんだっけか。まあいいか。



 まあ街に出たところで特に何もなかったからすぐ帰ってきたのだが、一時間くらい経っていたにもかかわらず、クラリアは未だ拘束されたままだった。

 出る時と違う点はエミルに「物事には順番ってものがあってね~?」とかって怒られていたくらいだろうか。

 その光景を見て響はそっとドアを閉じ、道場で一人素振りをすることにした。



△▼△▼△▼△



 それからというもの、カレンさんを見るたび若干よそよそしくなってしまっているが、当のカレンさんはまるで母親のような笑顔でこちらを見てくることが多々ある。

 ただしその笑顔が「ニコッ」って感じではなく「ニタッ」って感じの笑顔なので恐怖心を覚えることがしばしばあったのは内緒。



 他の奴らにも相談したが「ドンマイ」の一言で返されてしまった。

 未だそのことについての進展がないままのある日、授業終わりにフルーエン先生から、帰ろうとしたところを呼び止められた。



 「アルバレスト君、少しよろしいでしょうか?」

 「あ、はい。大丈夫です」



 よく分からないままフルーエンに連れられて到着したのは、他の教室よりも重厚な扉がある一室だった。

 先生がノックをしてその部屋に入ると部屋には上級生と思われる人たちが円卓に座っており、その奥には窓ガラスから光が差し込む一席の大きな机があった。

 円卓に座っていた上級生たちが一斉にこちらを見る、その数四人。



 「アリアさん。ちょっといいかな?」



 そして奥の机で窓側を向いて腰をかけていた人物が、ゆっくりとこちらの方へ体を向けた。



 「これはこれはフルーエン先生、一体どうしたんですか?」

 「この前言っていた、ヒビキ・アルバレスト君です。一度顔合わせしてみたいといっていたでしょう?」



 こちらをじっと見つめ、何かを見透かしたように「へぇ……」と呟きながらニヤニヤしているアリアと呼ばれた女子生徒。

 クリーム色のロングヘアー、蒼い瞳で、左目が隠れるほど長い前髪をヘアピンでまとめているその生徒は、机から降りて両腕を広げニヤリと笑いながら高らかに声を上げた。



 「歓迎するよヒビキ・アルバレスト君! ようこそ我らがラピストリア魔法学校生徒会執行部へ!!」

そろそろ戦闘パートかな?

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