中盤②
「あなたたちは中学何年生ですか?」
「.........?」
え?という戸惑いの声すらも出ない。それでも答えることができないのは好都合かもしれないと思った。
じとっとあかりにアイコンタクトを送ってみるも、あかりときたらその人を凝視したままこちらを見ようとしてくれない。
「あー、えっと中2です。」
パニックで悟りでも開いてしまったのか、ただただ冷静に、あかりはそう答えたのだった。
もう終わりだと気づいた私は、仕方が無いのであかりに声をかけるのを諦めて一歩足を引いた。
足が自慢のあかりなら、何かあっても走って逃げることが出来るだろう。そう自分を説得して駅員さんを呼びに行こうとする。
「ぶぎょ!」
「ひっ……………!」
一歩、二歩と下がる私の様子を見咎めたその人は、また大きな声で同じ言葉を繰り返す。
もう構わないと諦めてもう一歩。
「ぶぎょ!」
もう一歩。
「ぶぎょ!」
曲がり角が近づく。
「ぶぎょ!」
あとちょっと。
「ぶぎょ!」
あと一歩。
ガン、と学校指定の鞄が背の高いサラリーマンにぶつかり、頭を下げながらその場で止まる。
あと一歩で曲がり角。そんな所で気を抜いて立ち止まった私は馬鹿だ。
「ぶぎょ!!!」
今までの何倍も大きく、駅のホーム全体に響くような大声でその人は叫んだのだった。