表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(仮)人喰い  作者: 光希。
3/4

始まる戦い

ご無沙汰してます。


一応受験生だったので投稿控えてました。


楽しんでいただけたら幸いです(*^^*)



「―ッ」


突然こめかみに針を刺された様な鋭い痛みを感じた。


「真希っ、今何か…」


一旦走るのをやめ、真希の方を向く。


「うん、感じた。

あっち。」


そう言って右斜め前を指差す。

そちらの方向に神経を傾けると、確かにそこからトゲのある禍々しいモノを感じる。


―シャッ


「ん?」


真希が突然視界から消えた。

驚いて周りを見渡すと、自分がいる所から100m位離れた所で手を振っている。


「どうなってるんだ?」


確かに隣にいた筈なのに…


「優ちゃんっ

早くしないと置いてっちゃうよーっ」


そう叫ばれたが、訳がわからない。

早くしろと言われても、走って行ったとしても軽く20秒位はかかる。


取り敢えず真希のいるところへ行こうかと走り出したら、真希が戻って来た。


――それも軽く地面を片足で蹴っただけで。

明らかに普通の人間ができる事じゃない。


瞬く間に俺の目の前に来た真希は、首を傾けた。


「教えてなかったっけ?

これは能力(ちから)の一部、思い通りに体が動くの。"願えば"ね。

速く走りたいときにそう願えば速く走れる様になる。願ってみて。」


いや、教わってないから。と内心思いつつ言われた通りに願ってみる。


(…速く、速く走りたい。)


これで何か変わるのだろうか?


すると、パアッと一瞬自分の身体が光った。


この光が能力の印なんだろうか?


試しに軽く走ってみる。


「速っ」


瞬く間に見ている景色がかわる。


あっというまに100mは進んでいた。



「出来たでしょ。

こうやって能力を使うの。これで大丈夫?」


一旦停まった俺に追い付いてきた真希が聞いてくる。


「ああ、大丈夫。

急ぐか。」


また2人で走り出す。

何かを感じた方へ。

だが今度は能力を使っているのでさっきの何倍も速い。


能力の事は先に忘れずに教えて欲しいよな。

まあもう終わってしまった話だが。走りながらそんなことを考えたりしてみたりしていると…


―ガンッ


おでこに衝撃がはしり、後ろに転ぶ。



「…ぅいってぇぇぇー」



しゃがんで頭を抱えている、真希が寄ってきた。


「優ちゃんどうしたの?」


そう訊かれたが自分でもまだ状況が把握出来ていなかったので周りを見渡してみる。

前方に電柱。

どうやらコレにぶつかったようだ。


「あー…」


「優ちゃん、見損なったわ…」


真希が呆れたように首をふる。


「お、おいっ

これはただ考え事をしていただけであって…」


必死にこの恥ずかしい状況を打開しようと言葉を並べるがうまくいかない。


「能力を使ってるときに気を散らしてると制御できなくなるからちゃんと注意してね。」


「うっ…」


返す言葉が見つからない。せめて視線を逸らそうと左に目を向ける。


「あれ…?」


目を逸らした前には自分達の横を通り過ぎるヒト。

こっちを向いて一瞬不気味に笑い、何かを呟いていた。

見覚えがあるような…

思いだそうとするが何かが引っ掛かり思い出せない。


「…優ちゃん、優ちゃん、優、優っ、バカ優ちゃんっ」


「ぅわぁっ」


急に真希によばれびっくりした。


真希はさっきのアレに気づいていないようだ。


「もう、何回呼んだと思ってるの。

大丈夫?」


「…いや。」


あのヒトは一体なんだったんだろうか。


「ぼぉっとしてないで早く行くよ。

時間ないんだから。」


「あ、あぁ。」


応えて走り出す。

あのヒトが向かっていった方を見てみたが、もう見えなくなっていた。

残していった謎の呟きは"ゆう"と、俺の名前を言っていた気がした。

気のせいだろうか。


――――――――――――


人喰いに近付いているのだろうか?

突き刺すような痛みがどんどん強くなっている。


「優、前っ」


能力を使って走ることに慣れてきた時、真希が突然声を上げた。

その声音はいつもよりも深く、哀しげな響きを含んでおり、まるで違う人のものの様にも聞こえた。

それに応えて足をとめ、前を見てみると、そこには道をこちらに向かって歩いてる人がいた。


「え…」


人に黒いモヤがまとわりついている。

そしてさっき感じたのと同じ禍々しいモノを感じた。


「…っ」


直感が告げる。

――こいつが敵だと。


振り向き、何も言わずに真希に自分の直感が正しいのか問う。


「そう、あれが人喰い。

私達の倒すべき敵よ。

…本体ではないけど。

あの人に入り込んでいるだけみたい。

まだ間に合う。

喰われてしまった訳ではないから。」


「入り込んでるってどういうことだ?」


「ごめん、説明が足りていなかったね。

人喰いは心の闇を覗いたらその人と同化するの。

そうしないと心を喰らうことは出来ない。

だからまだあの人は大丈夫。」


「でも、どうすればいいんだ?」


「その為の能力でしょ。

能力を使って、あの人から人喰いを引き剥がす。

優ちゃん、行くよっ」


「行くよって…

だから能力をどうすればいいんだよ…」



真希が人喰いに向かって走り出し、剣を抜いて斬りかかる。

能力を使っているので凄まじく速い。


「はあぁぁっ」


そこには何の迷いもない。自分もそれを追いかけようとするが、最初の一歩が踏み出せない。


(行かないと。

でも、俺は…まだ…

どうすればいいんだっ…)

―ダンッ


鈍い衝撃音が聞こえる。

その直後


「うそっ」


心を決めれずに悩んでいると、急かすように真希の叫ぶ声が聞こえた。

驚いてそっちに目を向けると、倒れている真希の姿があった。

不意を突かれて反撃されたのだろう。


「真希っ」


体勢を立て直そうとしている真希に人喰いが襲いかかり押し倒す。

そして顔を真希の胸の辺りに近付ける。


「いやっ」


真希が必死に抵抗するが相手の力が強く、押し返せない。


真希を助けたいのに意に反して身体が動かない。


(くそっ…

行けっ、動けよ自分。

何迷ってんだよ。)


その時、あの水のように澄んだ声がまた聞こえた。


『願え、強く。

想え、心で。』


(あぁそうだ。

俺にはこの能力があるんだ。)


そう思った時、何かがすとんと収まった。


目を閉じて心を鎮める。


(真希を、真希を守る力が欲しい。)


そう願った。


『汝の想い、確かに受け取った。』


その声が消えた直後、またあのあたたかい光に包まれ

周りの景色が動き出した。

否、何の躊躇いも迷いもなく自分の身体が動き出しているんだ。

真希と人喰いの元へ走って行く。

時間(とき)が進むのが遅く感じる。

人喰いが攻撃しようとするのに気づき咄嗟に身を退こうとする。

その時人喰いに出来た一瞬の隙を真希が見逃さずその足を捕える。


「優ちゃんっ」


今だと真希が告げる。


「ああっ」


それに応え、人喰いにおもいっきり斬りかかる。


『っつ…』


斬った。

一拍おいて背後から人喰いの叫びが聞こえてきた。


『ぐあぁぁぁぁぁぁっ』


振り返ると人喰いが頭を押さえて呻いている。

そして右手で持っている剣が切り裂いたところから黒いモヤが吹き出している。


「やったっ」


…のか?


人喰いから吹き出し続ける黒いモヤが集まり、次第に人の様な形がつくられていく。


確かに自分は人喰いを斬った筈だ。


ではなぜ…?


ぐるぐると頭の中で考えていると、しゃがれている今まで聞いたことの無い様なおぞましい声が聞こえてきた。


『…よくもやってくれたな。

だがこれしきの事で俺が消滅するとでも思うなよ、小僧どもが。

…そうだ、お前ら、俺の新たな"依り"にしてやろう。さぁお前らの闇を見せてくれ?

強い力を持った者の闇は極上だ。』


人の身体がどさっと崩れ落ちる。

黒いモヤは全て抜け出て人の様な形をつくってゆく。


『だがお前らは強い。

2人もいては手に余る。

1人ずつにしてやろう。

…そうだなぁ…

よし決めた。

女の方が俺好みの味だから男のお前からにしよう。』


ゾクッと優の背に冷たいものが駆け登る。


…こいつ、ヤバい。


身の危険を感じて後退る。


「優ちゃんどいてっ

はあぁぁぁぁぁっ」


そこへ真希が走りながら人喰いに攻撃を仕掛ける。


跳躍し、斬りかかる。


「やぁっ

…っ避けられた!?」


真希が斬ったと思った人喰いは、後ろにいた。


「真希っ

危ない!!後ろだっ」


「えっ!?」


自分の発した警告に反応して真希は後ろを向いた。


人喰いが真希の腹に拳をいれる。


「ぐはっ…」


「真希っ」


真希のうめき声と自分の叫びが重なる。

人喰いが崩れる真希をそのまま押し倒す。

抑え込み、胸の辺りに顔を突っ込もうとする。

真希は必死に足掻いているが人喰いの力が強く、抜け出せない。


後ろに回り込み、人喰いの背中を狙う。

呼吸を整え、斬りかかりに静かに、そしてゆっくり走り出した。


カツンッ


2、3歩行ったところで小石にあたった。


―しまったっ…


そう思ったがもう遅い。

人喰いが気付いてしまった。

こちらを向き、ニヤリと笑う。


『おやおや、こちらの女がどうなってもいいのかね?"依り"にする前に殺してしまうよ。』


そう言って手を鎌のような形状に変え、真希の首にあてる。


「ッ…」


「優ちゃんっ

私はいいから!!

早く、早く斬ってっ」


真希が叫ぶ。


くそっ…

どうすればいいんだ

このままじゃ真希が…


その時、真希の胸元が光った。

能力(ちから)を使った時と同じ、あたたかい光だ。


よく見ると、それは真希の持つ藍色の勾玉から発されていた。


『ぐあぁぁぁぁぁっ』


人喰いの姿がぐにゃりと歪む。


なぜあの光が勾玉から…?


「優ちゃんっ」


自分の名前を呼ぶ真希の声ではっと気づく。


そうだ。

早く人喰い(やつ)を倒さないと。

真希を守らないとっ


剣を掴み、人喰いに向かって走る。


真希を守りたい。

それだけを想って。


「真希を離せぇぇぇぇっ」


胸の中深くのあたたかさがどんどん増していくようだ。

感じるちからが強くなっていく。


「やあぁぁぁぁぁっ」


人喰いに斬りかかる。

ザクッという音とともに斬った感覚が手に伝わってくる。


後ろを振り向くと、人喰いが真っ二つに裂けていく。そして、ザァッという音とともに崩れていった。


―やった。

そうだ。

真希、真希はっ?


辺りを見回すと、人喰いに入り込まれていた人の所にいた。


「真希っ怪我は?

大丈夫か?」


急いで駆けていき、声をかける。


「怪我は大丈夫だよ、このくらい。」


そう言って微笑んだ。

いつもと同じように。


真希は所々擦りむいていた。

打ち身もあるだろう。


「ごめん、俺のせいで…」


…今日も、前も…

あれ、前。

前っていつのことだ…?


「優ちゃんのせいじゃないよ。

あれ、どうかした?」


真希がうろんげに見つめてくる。


「あ、ごめん。

何でもない。

そう言えばこの人は?」


真希にはいろいろと考えていると気付かれてしまう。それを隠す様に話を変える。


「この人は大丈夫。

まだ喰われてはいなかったみたいだから。

さっき神言唱えておいたからもう闇に、人喰いに喰われたりしない。

そのうち目を覚ますよ。」

―やっぱり一応巫女なんだな。


「なら良かった。

…ってそう言えば学校抜けて来ちゃったのは大丈夫なのか?」


「あっ、やばっ。

早く戻ろ、鞄置きっぱなしだよ!」


「走れーっ」


その声とともに走り出す。

真希を、真希と過ごす時間を守るためにも強くなりたい。

そう思った。


でも、さっきのアレはなんだったんだろう…?


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!


また頑張りますので、次話も読んでいただけたらなと思っていますm(__)m


では


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ