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(仮)人喰い  作者: 光希。
2/4

告げられた役目

2話目です。

何だかんだで1ヶ月以上空いてしまいました。


楽しんで頂けると嬉しいです(^^)


1話目を直したので、宜しければそちらもどうぞ。

真希に連れられて、周りの景色も目に入らないままにどれだけ走っただろうか。陽射しも強くなりだしたころ、真希が足を停める。

落ち着いて周りを見てみると、真希の家――美神神社の本堂があった。


「優ちゃん、靴脱いで本堂に上がって。」


「俺みたいな部外者が本堂に上がっていいのか?」


実は小学生の時に、本堂に上がろうとしたら真希にきつく怒られたことがある。そんな前科があるので一応確認する。


「いいの。

時間が無いから急いで。」


真希の顔から余裕が消えて、焦りばかりが目立っている。

本当に時間が無いようだ。急いで学校に履いてっているお気に入りのハイカットを脱ぎ、本堂に上がる。


「わぁ、すげぇ…」

本堂の扉を開けると目の前には巨大な仏像。

そしてそれは自分を縦に3人積み上げてやっとてっぺんに届く位の高さだ。

そして全て金で塗られている。

部屋全体も細かい所まで装飾が施されていてとても綺麗だ。

見とれているうちに白と朱の巫女装束に着替えた真希が長い紺の包をもって戻ってきた。


「こっちに来て。」


そう言って真希は仏像の前に座り、自分の前を差す。


「ここに座って。

今から話すことをよく聞いて。

今起こっているだろう事も…ちゃんと話すから。」


差された所に真希がしているようにきちんと正座する。

それを確かめて真希は話し出した。


「驚かないで聞いてね。

今から話すことは全て真実(ほんとう)だから。

―今から16年前。

この町に同じ日、同じ時間に違う場所で2つの命が誕生(うま)れた。

1つは町立病院で、もう1つはここ、美神神社で。

もう気付いてるよね。

それは私達2人のこと。

先代の巫女、私の母さんは夢でそれを知り、同時に2人の負う役目を知った。

母さんはすぐにその子をここに呼び、2人に繋がる名前をつけた。

それが"優"と"真希"。

…2人が壊れてしまわないように。」


「…え?

2人が壊れてしまわないようにってどういう事だ?

それに繋がる名前って?

文字がかぶったりしてる訳でもないのに…」


「ごめん。

…それは…まだ言えないの。」



なんとも言えない表情を浮かべて真希は俯いた。


何故答えられないのかを聞こうとしたがそれをしてはいけない気がして、替わりに違う言葉が口からこぼれた。


「その役目って?」


真希が再び顔を挙げて話し出す。


「人の心には闇がある。

それはそれぞれ違うけれど誰もが持っているもの。

…私も…」


その時真希の顔が一瞬強張った。

首を振り、間を置いてまた話し出す。


「それは何故か何百年に一度、他の人と共鳴して大きくなるの。

その時に増殖した闇を求めて異界から"人喰い"がやってくる。

その何百年に一度が今来はじめているの。人喰いは夢から入り込んで心を覗く。

覗いたらその人の心を喰らう。」


一旦話すのを止める。


「喰われた人はどうなるんだ?」


「…死ぬ…」


「はぁっ?

嘘だろ!?」


驚きのあまり、変な声が出てしまった。

そんな空想の中の、アニメやマンガの様な事が起こる、起こっているなんて信じれないし、信じたくもない。

嘘だと言って欲しい。


だがそんな願いも虚しく、真希の顔は真剣そのものだ。


「信じたくないだろうけど本当よ。

それを止めて人喰いを倒す為に私達がいる。

それが私達の役目。」


「そんな能力(ちから)俺にはないし、…人の命を担うような事俺には無理だ。」


「優ちゃんにならできる。だから選ばれたんだよ。

能力は今まで母さんが封印してたから。

封印を解けば何か分かる筈だから。

もう質問はない?

なかったら隣の部屋に。

"巫女の間"にいって。

母さんが封印を解く準備をしてるから。」


「待てよ。

俺には人の命を担うような事は出来ない。

そんなこと俺には無理なんだよ。」


「さっきも言ったけど、

優ちゃんなら出来るから能力が宿ったんだよ。

出来るから。

大丈夫だから。ね?」


真希が子供を諭すように言う。


「……でもまだ、俺には人の命を背負う覚悟はないから…

それでもいいなら、大丈夫なら、一緒に行くよ。」


「…ありがとう。

母さんが待ってる、行こ。」


真希がそういいながら仄かに笑い、立ち上がる。

立ち上がった後、その表情(かお)は笑っておらず、つよい()をして巫女の間を見つめていた。

その光景に、真希の姿にほんのすこし違和感を感じたが気のせいだったのだろうか。


そんなことを思いながら自分も真希に続いて立ち上がり、巫女の間の方を向く。


「優ちゃん。」


そう、真希から声をかけられた。


「何?」


真希の意図が掴めず、そうききかえした。


「優ちゃんは、独りじゃない。

一緒に、また笑いながら学校行こうね。」

――え?


不可解な台詞(ことば)を残して真希は襖をあけ、中に入る。

考え込みそうになったが、慌ててそれに続いて中にはいっていく。


巫女の間に入ると、あたたかい何かに包まれているような気分になった。


「2人とも、優君は久し振りね。

わたしの前に。」


おばさんから声をかけられると、真希は迷わずおばさんの前にすわる。

その隣に自分も腰を下ろした。


「落ち着いて目を閉じて。始めます。」


言われた通り深呼吸をしてから目を閉じる。


おばさんが何か(ことば)を紡いでいく。


「――っ」


突然身体に衝撃が走り、目を開けそうになる。


「開けないで。」


そうおばさんに言われ、開きそうになったのを急いで止める。


そうすると声が聞こえて来た。

水の様に澄んだ声。

その声に神経を傾ける。


『汝の能力(ちから)は"護り"の力。優しさは"護り"の力を強めるだろう。

選ばれし者よ。

この能力を授けよう。

願え、強く。

想え、心で。』


ゆっくりと目を開ける。

もといた巫女の間だ。


「優君も戻ってきましたね。

もう私に出来る事は少ないけれど…無事を祈ってます。

行きなさい。」


真希と顔を見合わせる。


「「はい。」」


なぜだろう。

まだ決心した訳でもないのに、自然と答えていた。


胸の奥にあたたかいものがある。これがきっと能力。


本堂に戻り、真希がさっき持って来た包を開く。

中には朱と藍色の刀と同じ色の勾玉のネックレス。

朱い方の2つを渡される。


「はい。

この剣は人喰いを斬る事が出来る。

戦うために。

勾玉はこれからずっと首から下げといて。

こっちは護る為に。

優ちゃんの能力は護りの力。

私の能力は希望の力。

まだそれが何かは分からないと思うけど、きっと分かるから。」


「でもまだ俺はっ…」


ギュッ―


「えっ…真希…?」


真希が俺を抱き締める。

いきなりだったので動きがとれない。


驚きと、それ以外のよくわからない気持ちがこみあげてくる。


「大丈夫。

私が側に、一緒にいる。…これからも。

だから…。」


真希が俺から離れ、にっこりと笑う。


少しの陰りを含んだ笑みで。



「…ありがとう…

…ごめん。」



そう言って立ち上がり、もう一度目を逢わせた。




(俺は、何か出来るのだろうか。

それはまだ分からないけど、その先に何かがある気がする。

だから俺は…)




そして2人で外へと走り出した。



新たな日々の始まり。

読んでいただきありがとうございましたm(__)m

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