神か悪魔か
あるところに、身長に悩む男がいた。
容姿も経済力もそれなりで申し分ないのだが、背の低さがどうしてもコンプレックスとして付きまとう。
男はあるとき悪魔にお願い事をした。
「どうか私の身長を伸ばしてくれ」
悪魔はにんまりと笑って応えた。
「いいだろう。ただしお前の身長を一センチ伸ばすごとに、寿命を十年もらうぞ」
それを聞いた男は憤慨した。
「一センチで寿命十年だと!? とんでもない! 少し伸ばしただけであっという間に死んでしまうじゃないか!」
しかし悪魔は涼しげな顔で言った。
「嫌なら別に構わないさ。だが、寿命を払うだけで身長が伸びる。こんな楽なことはそうそうないと思うがね」
「冗談じゃない。願い事はやめだ」
「ふうん、まあいい。気が向いたらいつでも受け付けるぜ」
男は次に、神様にお願いごとをした。
「神様、どうか私の身長を伸ばして下さい」
神様は優しく微笑んで言った。
「いいでしょう。あなたの願い事を叶えます」
しかし男は不安そうに訊ねる。
「神様も代償として私の寿命を取り上げるのでしょうか?」
その言葉を聞いた神様は、まさかとばかりに首を振った。
「そんなことはいたしません。あなた方の救いを求める心が願いの糧となるのです」
安堵する男に神様は続ける。
「毎日祈りを捧げなさい。そうすれば十年ごとに一センチ身長を伸ばしましょう。祈る心が願いを叶える。こんなに素晴らしいことはありません」