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117 手がかり

 貴族の夕食会らしく、食事中はあたりさわりのない会話のみに終始したが、食後のティータイムとなってからは、いろいろな会話が飛び交うこととなる。

 そのなかで、ユージはさりげなく、星の欠片(スターダスト)の話題を振ってみた。事情を知っているフィオレも話を合わせてくれた。

「ふむ、星の欠片(スターダスト)、か。聞いたことはある。父も幾つか持っていたと思うが、私は生憎と宝石の類には興味がないのでな、所持してはおらん」

「でもお父さま、あたしも興味有りますの。お頼みすればお祖父様は見せて下さるかしら?」

「そうだな、フィオレが望むなら見せてくれると思うがな。なんだ、興味有るのか?」

「ええ、それはやっぱり」

 すると夫人のジョゼフィンが、

「ふふ、フィオちゃんも女の子らしくなってきたのね。だれか気になる人が出来たのかしら?」

「お、おお、お母さま、そんなのじゃありませんわ!」

 何故か頬を赤らめて慌てるフィオレを、母親ジョゼフィンはにこにこ笑って見ていた。

「ユージ君はどうして星の欠片(スターダスト)に興味が?」

 ここは正直に話した方が得策と、

「実は、このマリイが、母親の形見である星の欠片(スターダスト)を騙されて奪われてしまったんですよ。それで、今俺達はそれを探しているんです。その手がかりが何か掴めないかな、と。フィオレお嬢様はそれを知って協力して下さってるのです」

「なるほどな、確かに父はそういう石に興味を持っているし、集めてもいる。そしてそう言う情報網も持っていたはずだ。よろしい、私からも紹介状を書いてあげよう。…フィオ、休みの間にお祖父様のところへ顔を出す予定だな?」

「あ、はい、お父さま」

「うん、その時、私からの紹介状と共に、お前も付いて行って口添えしてあげなさい」

「はい、わかりました」

 バルーダ伯爵が意図した通りの流れになったので、ユージはあらためて伯爵の先見の明に感服していた。


「お館様、よろしいでしょうか」

 とその時、執事の1人が発言を求めたのである。確か自分達を部屋へ案内した執事だった、とユージが思っていると、

「うん? 珍しいな、お前が割り込むのは。かまわんぞ、言ってみろ」

「は。では。…一昨日ですが、当家にその星の欠片(スターダスト)を買わないか、と持ちかけてきた奴がおりまして。お館様は興味を持たれないのを存じておりましたので追い返したのです」

「!?」

「…その男の人相や特徴は? 憶えていますか?」

 急き込んでユージが尋ねる。

「はい、ダンカンと名乗っておりましたがおそらく偽名でしょう。犬の亜人でした」

「そ、それで他に特徴は?」

「痩せて背の高い男でした。年の頃は30前後でしょうか」

 その他の特徴を聞き、ユージはその男が闇ブローカー、バサラであると確信した。思った通り、星の欠片(スターダスト)蒐集家に近づいて来たようだ。もっとも、星の欠片(スターダスト)に興味を示すのは同じギンガム姓でもクアトロ子爵ではなく、侯爵の方だったわけであるが。

「……」

「それではお父さまお母さま、明日にでもお祖父様にご挨拶しに伺うことにします」

 フィオレはユージの様子から何事かを察したようで、そんな提案をした。

「そう? もう1日くらいおうちでのんびりしていてもいいのよ?」

 事情を知らないジョゼフィンがそう言ってくるが、フィオレはやんわりとそれを断り、明日の昼過ぎに発つことを決めたのである。ユージとマリイは心の中でフィオレに感謝した。

 それから後は、ユージの旅の話や、フィオレの学校での話、そしてジョゼフィンのたわいない社交界の話などで終始したのである。


*   *   *


 ユージとマリイはあてがわれた部屋で寛いでいた。

「やっと手がかりが掴めたな」

「はい」

「明日、か。ギンガム侯がお前の星の欠片(スターダスト)を買い取っていたら探す手間が省けるんだがな」

「でも返してくれるでしょうか」

 心配そうなマリイ。

「ああ、その心配もあるな。だけど、どこにあるかわからないよりはずっとマシと言うもんだぜ」

 その時、ドアがノックされ、どうぞ、と言うとドアが開き、

「おじゃまするわね」

 フィオレが入ってきたのである。

「フィオか、さっきはありがとな」

「ああ、お祖父様の所へ行く話。いいのよ、そんなこと。どうせ休み中には行くことになってるんだし」

「それでも、ありがとうございます」

 そう礼を言うマリイに、

「マリイちゃん、いいんだってば。それより今夜、あたしの部屋へ来ない?」

「え?」

「今夜くらい、一緒に寝ましょうよ?」

「あ、あの…」

 困った顔でユージを見つめるマリイ。ユージは苦笑いして、

「お前が決めていいぞ。嫌なら嫌って言っていいんだからな」

 するとフィオレも、

「そうよ。あたしも無理強いとかする気だけはないから」

 そう言われたマリイは俯いて、

「…今夜だけでしたら」

 と言ったものだから、

「ホント!? 嬉しいなあ。それじゃあ早速!」

 と言って、引っさらうようにしてマリイを連れ、部屋を出ていってしまった。あとに残ったユージは、

「…やれやれ」

 と溜め息を一つ。

「フィオもきっと寂しいんだろうな」

 マリイには不思議と、一緒にいる者を寛がせる何かがある、と頭の片隅で思うユージであった。

 マリイが意識してるわけではありませんし、ワーディにいたときはそんなスキル(?)使えたわけでもありません。その辺は伏線と言うことで、おいおいと。

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