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003 解放

 ユージはマリイの案内で、『ワーデイ』にやってきた。そこは港町の裏通り、歓楽街の中では下等な場所。

 光の魔石によるさまざまな色の明かりが揺らめき、呼び込みの声がかまびすしい。

「ここか?」

「そう…です…」

 ユージの手に縋ったマリイが答える。

 と、呼び込みをやっていた男がそんなマリイを見つけ、

「お、マリイじゃねえか。お前、今までどこへ行っていたんだ!」

 そう怒鳴って捕まえようとした。その腕をユージは払いのけ、

「ちょっと待て、話がある」

 そんなユージに呼び込みの男は、

「何だ、お前は?」

 そう問いかけたものだからユージは怒り、呼び込みの胸ぐらを右手で掴み、持ち上げる。何と呼び込みの足が浮いた。

「客に向かってその口の聞き方はねえだろ? こいつのことで店長だか支配人だかに話があるんだ。わかったか?」

 そう言うとチンピラまがいの呼び込みは苦しさで顔を真っ赤にしながら、

「へ…へい、わかりました…」

 とやっとの事で返事をした。それでユージが手を離すと男はそこに尻餅をつく。ユージはそんな男の尻を蹴り上げ、

「さあ、案内しろ」

「は…はいっ!」

 格の違いを見せつけられた男はすっかり低姿勢になり、ユージを中へと案内した。

 が、マリイを連れたユージが中を歩いていると、

「お、マリイ、生きてやがったのか」

「てっきり野垂れ死んだと思ってたんだけどな」

「どっかへ売り飛ばされたんじゃなかったのか」

「役立たずのくせにまた戻ってきたのかよ」

 等々、悪口雑言が降ってきて、ただ俯いて歩くだけのマリイを見、内心舌打ちをするユージ。そのうちに一番奥の部屋へ着いた。

「ここです。…支配人、お客さんで」

 一番奥にあるドアの前に立ち、ドア越しに声を掛ける呼び込み。それに対して入れ、と中から返答があった。

「よし、御苦労」

 そこでユージは呼び込みを下がらせ、支配人の部屋へと入っていった。

 そこに座っていたのは中年の男。でっぷり太って頬の肉は弛み、脂ぎった顔をしている。

「私が支配人のチョロゥ=マッサですが、話というのは? そこのマリイのことですかな?」

 ユージはチョロゥと名乗った男の前に立ち、

「ああ。たまたまマリイを見つけてな。気に入ったんで引き取りたい」

「ほう。物好きなお方もあったものですな。…そうですな、10万ジェンではどうでしょうかな」

 ジェンは一般的な通貨の単位である。一家4人が普通に食べていくのにだいたい月1000ジェンくらいか。

 それを聞いたマリイは慌てて、

「ユージさん、いけません! わたしなんかのために!」

 そう言ったのだが、チョロゥはそれを制して、

「黙っとれ、マリイ。…いかがかな?」

 それに対しユージは、

「ふん、8万だな」

 そう答える。チョロゥは更に、

「9万5千」

「8万5千だ」

 最後に、

「9万、これでギリギリですな」

「よし、9万。金貨でいいな?」

 そう言ってユージは腰に下げていた袋から金貨を90枚出すとテーブルの上に積み上げた。

 まさか即金で9万ジェンを揃えるとは思っていなかったチョロゥは、

「ほほう…帝国金貨で90枚ですか、お見それしましたな」

 そう言いながらユージの持つ袋をちらと見る。そこにまだ金貨が大分入っているのを見逃さなかった。だがそれをおくびにも出さず、

「これが証文と鍵です」

 そう言ってマリイの証文と首輪の鍵を差し出した。ユージはそれですぐにマリイの首輪を外し、証文を破り捨て、

「よし、これで用は済んだ。邪魔したな」

 そう言ってマリイの手を引いてその部屋を立ち去ったのである。


*   *   *


 残ったチョロゥはちょっと考えてから呼び鈴を振る。すぐに黒い服を着た痩せた男が一人やってきた。

「お呼びですか」

「うむ、モタウリー、お前にやってもらうことがある」

 そう言って何やら耳打ちするチョロゥ。モタウリーと呼ばれた男は肯いて、

「わかりやした、任せて置いて下せえ」

 そう言って部屋を出ていったのだった。

 変な名前だと思った方へ。二人とも実在の人物がモデルなのですが、実名は不味いのでかなりアレンジしてます。どうせチョイ役だし。

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