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110 ネーガル島

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 今年は更新が幾分遅くなる事もあるかと思いますがどうか最後までおつきあい下さい。

 翌日、フィオレとドナは自分たちの船で、ユージとマリイはユージの快速艇で。そしてバルーダ伯爵とアンヌは伯爵の持ち船で。

 3隻が前後してデンフォルド王国のあるアルデンシア大陸へと向かう。一番速いのはユージの快速艇『アーカディア』。他の2隻に合わせてゆっくりと航行していた。

「マリイ、少し傷痕が薄くなってきたみたいだな」

「そうですか?」

 前日、バルーダ伯爵邸で一緒に風呂に入った時に確認したのである。例によってフィオレがすごい目つきでユージを睨んでいたが、別にやましいことのないユージは柳に風とその視線を受け流していた。

「先生の治療と、栄養つけてるおかげかな」

「先生にはほんとに良くしていただいてます」

「ああ、あの先生は本当の医者といえる人だからな。戦争時は俺もずいぶん世話になったもんだ」

 ユージがそう言うと、

「やっぱり、怪我とかもしたんですか?」

「ああ。それが戦争だかんな。だが、伯爵の指揮と先生の治療のおかげで、俺のいた部隊は死傷者が最も少ない部隊だったんだぞ」

「そうなんですか」

「ああ。いつか機会があったら話してやるよ」

 大陸が近づいてくると、うねりが高くなってきた。

「マリイ、お前は酔わないか?」

「はい、だいじょうぶみたいです」

「ふうん、お前は船に強いんだな。この先一緒に旅するとして船酔いしないってのは助かるぜ」

 船で旅をする際にいちいち酔われてはたまらないが、マリイは船に強そうなのでその点も安心出来るとユージは思った。

「も少し大きくなったら船の操縦も教えてやるかんな」

 まだマリイの身長では操舵輪に届かないのである。

「はい、楽しみにしてます」

 結局その日には大陸には着けず、大陸手前にあるネーガル島に停泊することとなった。

 ここはリゾート施設と軍事施設があり、人の出入りが激しい島である。それだけにいろいろな施設は充実していた。ユージ達は高級ホテルに宿を取る。


「ユージ、ちょっといいか?」

 ホテルの部屋割後、アンヌがユージの部屋へとやって来た。

「あ、先生、何ですか?」

 マリイはフィオレたっての希望で一緒に風呂へ行っていたので部屋にはユージ一人である。

「うむ、マリイのことだがな」

「マリイに何か?」

 少し心配そうな顔でユージが聞き返した。が、アンヌはそれに気づき、

「いや、何、深刻な話じゃない。こうして外に出た時は出来るだけいろいろなものを見せて、いろいろな経験をさせてやるべきだ、と言いたくてな」

 と言った。

「ああ、なるほど。わかりました、こころがけますよ」

 思えば、マリイは生まれてからずっと、狭い世界で生きてきたのだ。おそらく見るもの聞くもの珍しいものばかりだろう。学問だけが勉強じゃない、そうアンヌは言っているのだ。

「うむ、やはりお前に一番懐いているからな。ここは大陸が近いから娯楽施設も多い。家族向けの施設が確か近所にあったはずだ。夕食後行ってみるのもいいぞ」

「そうしますよ」


*   *   *


 夕食後、アンヌに言ったように、ユージはマリイを伴ってホテルの裏手にある娯楽施設に来ていた。言うなればゲームセンターである。

 魔法や魔法科学を利用したいろいろなゲームが揃っている。

「マリイ、何かやってみたいものはあるか?」

 初めて見るゲームセンター、マリイはきょろきょろしっぱなしである。なのでなかなか決められないようだったが、

「あ、あれって何なんでしょう?」

 指差したのはルーレット。もちろん賭けるのは現金ではなく、この施設内でのみ通用するコインだ。

「ルーレットと言うんだ。あの丸いのがルーレット、店側の人間が回してそこに小さな玉を入れる。そしたら客はこっちの好きな番号にコインを賭ける。ルーレットが止まった時に玉が入った番号に賭けた者が勝ち、だ。やってみるか?」

「はい!」

 施設に入った時にコインを買ってあるので、早速マリイとそこへ行く。ちょうど賭が開始するところだった。

「マリイ、どこに賭ける?」

「んー…5、です」

「よし」

 ユージがマリイの言った番号にコインを1枚置く。他の客も同様にいろいろな番号にコインを置いた。そして制限時間が過ぎ、コインを置くことが出来なくなる。やがてユーレットの回転が止まり、玉が入ったのは…

「5」

「わー! ユージさん、当たりました!」

 なんと一発で当ててしまった。当たったのはマリイだけだったので、1枚のコインが35枚になって返ってきた。

「よし、次は?」

「それじゃあ…21」

 これもマリイは当ててしまった。あっという間にコインが積み上がる。

 その次も、またその次も当てるマリイ。山と積まれたコインを見て、

「…マリイ、別の所へ行こう」

 周囲の視線が痛くなってきたのでそう促すユージに、

「はい、ごめんなさい…」

 なんだか済まなそうな顔で答えるマリイ。

「バカ、あやまるな」

 二人が次に向かったのはパズル。制限時間内に組み上げると、難易度に応じた賞品がもらえるというものだ。マリイはその賞品のぬいぐるみを見てやってみる気になった。

「あのぬいぐるみが欲しいです」

 それはかつてマリイが持っていた汚いぬいぐるみと良く似ている。持っていたぬいぐるみはバサラと共に消えてしまった。おそらく処分されたであろう。

「よし、やってみろ」

 参加料のコイン5枚を払い、マリイを座らせる。店員がパズルをマリイの前に置いた。50個のピースがある平面タイプのパズルだ。そして店員は魔力時計をスタートさせた。

 魔力時計とは、低レベルの光の魔石が短時間で魔力を放出して砂になる事を利用した時計で、放出の引き金(トリガー)を送ると、光を発すると同時に魔石の崩壊が始まって、一定時間が経つと光が消える事を利用した言うなればタイマーである。

 閑話休題(それはさておき)、スタートと同時にマリイはものすごい勢いでパズルを組み立てていった。後ろで見ていたユージにも出来ないほどのスピードである。

「すげえ…」

 店員も目を丸くしてマリイの手先を見ている。

 そして一度も間違うことなく、制限時間をたっぷりと残して、マリイはパズルを完成させた。

「あ、お、おみごと! では、賞品のぬいぐるみをどうぞ」

「わあ、ありがとうございます」

 満面の笑みでマリイはそれを受け取るのであった。

 あくまでもこの世界のルーレットですので、カジノとルールが違うこともあります。倍率とか賭け方とか。

 少しずつマリイの特技が明らかに。

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