42.『ロセン奴隷街』
なんだかんだで結局、心配な人達を一纏めに置いて行くことにした私達。
一人で留守役を任せる想定だから心配になるんだ。
纏めて一緒くたに置いていけば、互いに相殺し合って暴走の度合いも抑えられる…筈。
自分だけだと思うから、暴走する人も多くなる。
ここは一つ、互いに面倒を見合う形で置いていけば、上手く足を引っ張り合ってくれないだろうかと、仲間に対して考える様なことではないけれど、浅知恵を働かせた訳で。
全員置いていきますと宣言した時の、あの、彼等の顔。
ブーイングが凄かった。
その後、戦力に不安のある状態で、アイツの護衛をまともにこなせるのかと、正論で説得を試みる者…数名。自分を連れて行かないと、帰ってきた時に『砦』がどうなっているか分からないと脅す者…数名。更にこっそりついてきて暴れようとする者、数名。
何故に皆、こんなに暇人なのかと頭を抱えたくなった。
結局、複数の種目で勝ち抜き戦を行い、更にお互いを潰し合わせての選考を行った。
誰を連れて行っても同じ気がすると言ったら、皆さん、とてもやる気を出してくれて。
最終的に残ったのは、何気なく要領の良い羽根の人。
羽根の人の参戦が決まって張り切ったのが、他者を貶めるのが得意なストーカーさん。
お兄さんの御飯に薬を盛ってまで参加する意思を見せてくれた、二人に決まった。
当初の予想を遙かに裏切り、お兄さんは策略とストーカーの薬の前に敗退した。
予想外の結果を聞いて、「大暴落だ!」と叫んで地面に身を投げ出している者の姿をそこかしこで見かけたけれど、アレは何だったんだろうか…。
それは何となく、私が知らなくてもいい事の様な気がした。
大陸の人種事情を鑑みるに、規格外としか言い様のない『人間』の人口。
それに比べて、魔族の人口は『人間』に減らされてしまった。
お陰で『解放軍』に多くの魔族が参加してくれても、その総量は『人間』に遙かに劣る。
今回も遠征と銘打っているが、基本としては『解放奴隷』を戦力として現地調達する予定だ。
その為には先ず、その『奴隷』達に渡りを付けなくてはいけない。
今回はそれも影君の紹介してくれた『混血』達が請け負ってくれるという。
あまりに気安くお願いを聞いてくれると、うっすら不信感も浮かぶけれど。
そこはアイツが信用しようと言ったから。
何だかんだで、アイツのことは信頼している。アイツの、勘も。
特にアイツの人を見る目はある方なので、偶に運試しでは済まない様な人事で悩んだ時は一か八かでアイツに相談することにしている。本当に、アイツを信頼しているので。
アイツは、今回もあまり悩まなかった。
ただ「なんとなく大丈夫な気がする」というふわっとした答えに少しだけ頭痛がした。
先に現地入りし、『奴隷』に紛れての情報収集と『奴隷』達との繋がりを請け負ってくれた混血の魔族達。彼等と落ち合う予定は、『ロセン』の『奴隷害』…。
あまりに『奴隷』が多すぎ、集まりすぎた『ロセン』。
他の『奴隷市場』は既に私達に潰されているので、その分の『奴隷』も『ロセン』に集められ、『奴隷』の人口は飽和状態になりつつあると報告されている。
『奴隷』達を留める場所を一つ所に固めた結果、あまりに多すぎて『ロセン奴隷市場』の拡張を余儀なくさせたと言う。けれど拡張では追いつかず、今では『奴隷専用』の街に変貌している。
あまりに様々な、多くの者達が首輪を嵌められ、押し込められた場所。
周囲を高い鉄柵と格子鉄線に阻まれ、複数立てられた監視の目も厳しい。
首輪にかけられた呪いによって制限をかけられた、『奴隷』達の『放牧場』。
だけど、秘かに紛れ込むのに、これ程目立たずにいられる場所もない。
私達の間諜として働く混血の魔族達とは、其処で情報の受け渡しをすることになっていた。
最も目立たず、人目を忍ぶ行動に最も長けたストーカーさんと影君の二人が向かう。
作戦の決行に合わせて、どこでどの位の『奴隷』達が決起するのか。
また、現状でそれを可能とする者がどのくらいいるのか。
その確認と、幾つかの決め事をする為に。
本当を言うと、計画立案に関わっている私が直に確認に行くのが一番良い。
でも、危ないからと言う理由で、勿論私は同行を許可されない。
代わりに俺が行こうか、と親切そうに言ったアイツには、肘を食らわせてやった。
私が行けない、だからと言ってお前が行ってどうする…?
未だに自分の立場をしっかり自覚できていないらしいアイツ。
アイツとはいつかきっちり、拳を交えてでも『お話し』する必要があるのかもしれない。
さて、パドレによってお兄さんが御飯に盛られた薬とは…?
① 下剤
② 笑い茸エキス
③ 痺れ薬
④ 眠り薬
⑤ 幻覚剤
ざっとこれだけ候補が頭に浮かびました。
そのどれかは、お好きなものをお選び下さい。
ただ、どれを選んでも相当なグロッキー状態に陥ると思われます。




