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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
番外 青年達は生活習慣の違いに苦労中
60/193

地底世界の深き闇(松明厳禁灯りは無用)



 破壊された罠の位置から推測して、予想される襲撃者の位置を割り出す。

 いまだ不確かな推測ではあったが、襲撃はあるものとして考えることに誰も異論はない。

 連れてきている部下達は、そんなに数がいない。精々、25人といったところ。

 しかし、我々が陣取っているのは険しい岩山だ。

 要所要所に絞って兵を配置すれば、上手くいけば数の不利を補えるだろう。


 守りの手が届かない、手薄にならざるを得ない道は、今だけは余計だと俺達は判断した。

 守ろうにも手が足りないのだから、仕方がないだろう。

 守りきれないのならば、塞いでしまえとのメイラの言に従い、俺達は一時的に道を塞いだ。

 勿論、守りきった暁には再び復旧させるつもりだが、暫くは道を狭くさせて貰おう。


 『人間』の身体能力は、俺達よりも格段に劣る。

 その分、数で利を補うが、基本性能は誤魔化しきれない。

 道を土砂で封じ、ラティに魔力を吸収する銀の刺草を張り巡らせて貰えば封鎖完了だ。

 勿論、保険として罠も仕掛けておくが。

 『人間』の身体能力が制限される実状、閉ざされた道を踏み越える事はできないだろう。

 彼等は飛ぶこともできない。土の下にも潜れない。悠長に土砂を取り除こうとしたら、それこそ集中的に追い打ちをかけて一網打尽としてしまえばいい。

 封じた道のことは心配無しと判じ、一時的に俺達は忘れることにした。


 そう、地下世界への入り口は幾つかあるものの、場所が限られる。

 それぞれに至る道を絞って警戒していれば、充分に待ちかまえることができる。…はず。


 

 俺とアシュルーの頭は考えるという方面では残念な結果しか出さないが、この場にメイラがいて良かった。メイラは俺達に比べると、格段に物を考えている。メイラ曰く、俺達が考え無しなだけだそうだが、何事にも長短がある様に、適材適所は重要だと思う。考えるのは、俺達の仕事ではない。俺達の仕事は、誰かが考えた通りに違わず動くことだ。少なくとも、俺はそう思っている。

 それもメイラに言わせると、考える責任を他に押しつけているだけらしいが…

 それでも、俺達が自分で考えるよりは良いに違いない。

 俺は口でブツブツ言いながらもしっかり苦手を補ってくれるメイラに、深い感謝を捧げた。

 

 アシュルーの部下と俺の部下達の混合班で各所に配置分けしていく。

 彼等は上司に付き従って乱戦を繰り返す内に、どんどん上司に似てきている。

 即ち、力押し最強を旨とする、突撃集団へと成長を遂げていた。

 最初はアシュルーの豪快さに恐れを成していた者も多いが、今は尊敬の目で見ているのだから、終わっていると他の隊の者達には思われていた。

 そんな、突撃馬鹿達を抑える為に、俺の部下達がいる。

 俺はあまり物を考える方ではないが、上司の命には素直に従ってきたつもりだ。

 判断に迷った時にも、頼れる副官に充分に相談して物事を決めていた。

 そうしていたら、いつの間にか部下達は大変しっかりした慎重な人材に育っていた。

 うん。必要に迫られると能力が伸びるという、好例ではないだろうか。

 放っておいたら防衛地点を放り出して敵を探しに徘徊しそうなアシュルーの部下達。

 上司の代わりに物事を考え、無謀の恐ろしさを身に染みて学んでいる俺の部下達。

 混ぜ合わせたら、そんなにバランスも悪くないと思うが、どうだろう。


「しかし、見事に前衛専門の武芸馬鹿しかいませんね」

 困った様な顔で、ラティが呟いた。

 悪かったな。

 徒手空拳で戦うアシュルー。剣を得意とする俺。

 それぞれの部下も似た者なので、魔法を専門にする者がいない。

「何だか放ってたら、どこか孤立した班とか出そうで怖いですね」

「それを防ぐのは、お前の腕の見せ所だと思う」

「うわっ さり気なく僕をこき使うつもりだったんですね、ラフェスさん」

「何かないか?」

「…その辺の道端に銀の刺草を植えておきます。それに向かって話しかけたら、全部僕には聞こえるんで、僕が情報の統括役をやりますよ」

「助かる」

 これで本当に準備は整っただろうか?

 心許なくないだろうかと、俺は自分の不安を紛らわす様、愛用している刀剣類を持ち出した。

 いつ何時、剣が折れても直ぐに代わりが手にはいる様に。

「うわー…相変わらず、凶悪な武器の数々ですね。呪われそうな雰囲気が怖いです」

 武器を常備した俺を見て、呆れた様なラティの呟きが聞こえた。

 だがそんなもの、無視してしまえ。


 罠や大掛かりな仕掛けを得意とするメイラを最奥に配置し、前面に出た俺達が時間を稼ぐ中、なるべく多くの罠を設置して貰う。

 敵を迎え撃てと、俺とアシュルーには大雑把な担当が与えられた。

 だが、アシュルーの暴君振りを思えば、俺達の突破には根性が必要だ。

 攻撃力過多気味のアシュルーであれば、大概の敵は潰してしまうに違いない。

 その過酷なふるいを乗り越えて来るモノがいれば、俺が剣の餌食にしてやろう。

 それぞれの部下も担当に応じて道に配置され、一応の準備は整ったと言える。



 警告を発する為に地底王の元へ伝令を走らせ、俺は仲間達の顔を見回す。

 アシュルーも、メイラも、部下達も。皆、戦意は高い様だ。

 地底王にも援軍の要請をするつもりなので、最悪、それまで持ちこたえるのが目標だが。

 それを待つまでもなく、敵を殲滅したいと、部下達は思っている様だ。

 俺達はメイラが振り分けた担当場所へ向かい、全神経を研ぎ澄ませた。


 草木も眠る、深い夜。

 月も星も厚い雲に覆われて、今夜は見えない。

 部下の一人が、火打ち石を片手に尋ねてくる

「篝火でも、焚きますか?」

「明かりを灯せば、その分だけ闇が深まる。逆に敵の発見が困難になるだけだ」

「そぅそ、別に暗くったって困んねーんだから、気にすんな」

「うわぁ、アシュルーさんてば。その人、妖精の僕に気を遣ってくれたんじゃないのかなぁ」

 魔族みたいに夜目利かないのにーとぼやくラティは無視して、二人はひたすら襲撃を待った。


 暗い闇を敢えて照らさず、待ち受ける魔族達。

 幾らや身に潜めようと、活動している限り、その息づかいは隠せない。

 それでも闇に紛れるのが魔族という物であったが、今回は人数が多かった。

 故に未熟者から順に存在を感知されることとなる。

 『人間』の襲撃者、五十余名。

 彼等もまた、予定していた行程を魔族によって邪魔されたことに気付いていた。

「…ちっ 貴様等が勝手な行動を取るから、こうなるのだ」

「申し訳ありません」

 指揮官に判断を仰がず、罠を撤去してしまったことを、幾度となく責められる。

 しかしやる気のない青年に、そこまでの反省は見られない。

 この五十人を超す人数の中で、今回の任務の無謀さを理解しているのは、この青年だけ。

 故に彼だけは、どうにも志気を上げられずにいた。

「だが、魔族が張っているとなると少々厄介だな。あいつらの魔法には注意が必要だ」

 まさか今回、魔法に頼らないタイプの魔族しかいないとは知らず、指揮官が頭を悩ませる。

「ですが相手は馬鹿な魔族。結束の何たるかも知らない愚者の集団ではないですか」

「そうですよ。今までみたいに数と連携で押せば、我等の敵ではありませんよ」

 青年に言わせると考えの足りない同僚達が、血気盛んに意気を上げる。

 それを冷めた目で見ながら、指揮官がどのような判断を下すのか、一歩下がって見ている。

「ふん。そうだな…」

 指揮官の反応も、己達を過信しているらしく、悪くないと目が言っている。

「(あ、こりゃ駄目だ…)」

 味方に見切りを付けた青年は、がっくりと肩を落とした。

 冷静に自分達の実力を判断できない者ばかりという状況に、目の前が暗くなる思いだ。

「…ここは、早々に諦めるか」

 無駄なことは、しない主義だ。

 誰にも聞こえない様に呟き、彼は味方達から一歩を置いて孤立する。

 冷めてしまった彼は、任務達成を可能と夢見ている仲間達に溶け込めずにいた。

 こんなところで無駄に命を散らす趣味は、彼にはない。

 仲間達にはどうせ注進しても無駄だろうと判断し、彼等を見棄てる覚悟を決める。

 彼は命を今後も繋ぐ為、戦闘に紛れて自分だけ逃走する案を練り始めた。



なんだか話が中々進みません。

 

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