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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
旅立ちは夜の森
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1.夜中の出発・闇の中

 この時点で登場人物は子供です。

 ちょっとお馬鹿な発言もありますし、主人公が思い切り友達を貶していますが、そこは子供なので。遠慮のない軽口だと思ってください。

 僻地の山間、森に隠された私達の隠れ里では、『人間』から逃れてきた魔族を中心に

細々とした生活が営まれていた。里で生まれた私達は危険を理由に里から『外』へ

出されることが無かったので、私はひっそりとした空気の中、身を潜める様に暮らしていた。

 それでも全く『外』や『人間』についての情報を知らないという訳ではなく、

見たことは無くても知識として知る機会はあった。毎年の様に、『人間』の迫害から逃れて、

里には傷ついた魔族が辿り着いていたからだ。

 ようやく得た安住の地に、彼等は物知らぬ子供達へ熱心に繰り返した。

如何に『外』が殺伐としており、『人間』が心ない恐ろしい生き物であるかを。

 そういう人達と接し、姿を見るに付け話を聞くに付け、私達は自分達が・・・

魔族という種が置かれている状況を実感せずにいられなかった。

 そんな環境の中、『人間』への警戒心は自然と育っていた。

 私は話しに聞くだけで姿も見たことのない『人間』が、想像もしたくない程に恐ろしくて

ならなかった。『外』への好奇心は封じられ、いつ『人間』が攻めてくるかと怯えていた。


 そんなある日、隣の家のお馬鹿なヤンチャ坊主が言った。

「ニンゲンがクニとかいう集合体になって、クニになったから俺達には手に負えないって

言うのなら、俺達もそのクニっていうのになったら良いじゃん。

そしたら俺達、はっきり言って最強だろ?」

 馬鹿の到達した結論は、単純なりに真理だと思った。

 馬鹿は馬鹿なりに深く考えているのだと、かなり失礼なことを思いつつ、

私の目からは鱗がボロボロ落ちた。それはもう、ボロッボロと。

本当になんで今まで誰も気付かなかったのかってくらい。


 それからはもう、怒濤の勢いだった。

 むしろ、勢いだけで全てが進んだ。

 正直な話、急展開に感情が追いついてはいなかったけれど、自分の考えへの意見を

求めてくる馬鹿に同意を示したら、何故か馬鹿と共に旅立つ事になっていた。本当に何故だ。

 国造りに賛同し、協力してくれる仲間集めの旅だそうだが、それを私と馬鹿の二人で始める

必要があるんだろうか。誰か信頼できる大人に任せれば良いのに。

 おまけに里に起きる後のことは全て友達に丸投げだった。

内緒で勝手に二人旅立つことの事情説明も、今後の説得も、全て友達(里長の息子)に押しt

・・・任せ、それ以外の誰にも言わずにこっそり夜中の旅立ちとか・・・。

 夜逃げですか? 家出ですか? むしろ拉致ですか?

 確実に大人達は心配し、激怒すると思う。それを黒い笑顔で

「後の心配は要らないよ。周囲の洗脳は任せてくれていいから」

と言い切った友達にも心配と不安が募るが、彼が有能であることは間違いないので任せるしかないだろう。


 友達が腹黒いだけで、何となく前途が闇に閉ざされている様に錯覚する。

 …幸先が、色々と不安だった。

 主人公達はこの時点だと人間換算で十歳前後くらいです。

 どう考えても、立派な家出です。

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