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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
奴隷解放
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15.襲撃の朝、消されなかった落書き

 何故か就任してしまった現場指揮の大任。

 調子に乗って「親方」と呼んでくるお兄さんの御飯にこっそり眠り薬を仕込んだ夜。

 私はお兄さんの顔に思うさま落書きして、自分の鬱憤を晴らした。


 そんな、計画前夜のこと。

 まさか翌日、計画決行日…お兄さんがそのままの顔で出撃するなんて、欠片も思っていなかった。

 未開の秘境に住まう、稀少民族の占者みたいな顔になってしまっていたけれど…。

 アレはアレで『人間』への威嚇になるし、まあ、良いのだろうか。



 私達が羽根の人と合流してから、一月が経った。

 元々爆破魔さんが準備を進めていただけに、標的の情報は元から揃っていた。

 後は時期を狙って襲うだけという段階だった為、一月の間、私達はじっくりと『適材適所』について話し合った。時に拳を使って己の意見を訴えてくる相手には凶器で迎え撃ち、時に弁舌を駆使して己の不満を訴えてくる相手には薬を盛って制裁し、とにかく大変な一月だったとだけ言っておきましょう。

 一度押しつけたのは彼等だ。今更、不平不満は耳に入れてやりません。

 それでも有用だと思った意見には耳を傾けたし、私の乏しい経験を補う為の質問も沢山しました。何より、実際に戦うのは彼等なのだから。私には残念ながら戦闘能力がないので、口を出すだけ出しておきながら、戦いは全てお兄さん達に任せなければならない。

 それに対して心苦しい思いで一杯だったが、お兄さん達は子供に優しすぎた。

 大らか、なのでしょう。多分。

 戦わないのなら、その分は他で頑張ればいいと言うのです。

 彼等にはない発想と考えを持っているのだから、頑張って頭を悩ませろと。

 回復魔法が得意な人材は貴重だから、当日は頑張って治療に専念しろと。

 私は卑怯な子どもなので、彼等の言葉に大いに甘え、自分にできる事を精一杯に頑張ることにした。そう、自分にできることだけ。自分の仕事を全うすべく、彼等の異論も聞かずに、自己判断で仕事を割り振る。何しろ私の仕事は、彼等の計画担当。彼等の負担がどれだけ増えようと、私に任せると言ったのは彼等なのだから。

 ええ、言質は取りました。子供万歳。


 そうしてとうとう迎えた計画決行の日。

 私は素人なりにお兄さん達に仕事を割り振り、不安に胸を痛めていた。

 お兄さんは特攻、遊撃。爆破魔さんは破壊工作及び攪乱。

 そして飛べる羽根の人には連絡係兼、空からの支援をお願いしました。

 何とも大雑把な割り振りではありましたが、爆破魔さんが元々一人で破壊する為に準備していたアレコレを使えば何とかなりそうな感じにはなったと思います。

 私にすることは、もうありません。

 後は三人が無事に帰ることを祈り、帰ってきた彼等の傷を癒す為に準備をするだけ。

 本当に、彼等は帰ってくるのか。無事に帰ってくるのか。

 苛む不安と緊張で、今にも胃を吐きそうです。

 そんな私の隣で、「アー兄達なら心配するだけ無駄だって。大丈夫だろ」と言ってアイツが笑います。相も変わらず、曇ることのない太陽の笑顔。明るく、前向きさを忘れないアイツの笑顔。

 アイツはいつだって、私の不安を溶かすのが上手い。

 だから私は一時だけでも不安を忘れ、アイツと二人で大人しく待つことにしました。

 どんな結果が出るにせよ、私達にはもう待つことしかできないのだから。


 ええ、待つことしかできないはずでした。

 できない、筈だったんです。本当に。

 その、筈だったのに…。


 お兄さん達三人が出かけるのを後方から見送った私達。足手纏いは後方待機です。

 そんな私達ですが、何故か今…本当に、何故か、何故、何故なんでしょう…。

 私達は、どうした訳か現在、標的の『奴隷市場』にいます。

 早々に勝利して占拠した訳ではなく、これから売り物にされる立場として。

 本当に、どうしてこうなった…。


 

突然ですが、主人公捕まりました。


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