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115.発動
珍しく、とても短いです。
膨れあがった魔力の固まりが大きく破裂し、弾け飛び。
闇色の卵が割れた中には、暗黒の雨が詰まっていた。
紫を帯びた、どろりとした闇色のソレ。
ソレが何なのか、きっとこの結果を造りあげたアイツにも分からない。
ただ、影一つすら残さずに。
この場にいた『人間』だけがきれいに。
痕跡すら見つけられないほど、跡形もなくきれいに。
何の名残も見せないほど、忽然と。
行使された魔法の力が吹き荒れた後には何も残らない。
全てが終わった時、戦場には『人間』らしきものは何も残っていなかった。
全て、全て。
生きていた証拠も見つからないくらいに。
『人間』と呼ばれる生き物は一人も残さず、全て消え去っていた。
それは文字通り、消滅。
忽然と掻き消された『人間』達は、闇の牙に噛み砕かれて。
切り裂き飲まれ、飲み下されて。
地の一滴すら残さず、カタチのない闇に食い殺された。
私達の中に本能的な恐怖と、驚愕、そして言葉にできない罪悪感を焼き付けて。




