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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
アイツの魔法
171/193

111.アイツの策は力業





 本日、晴天。

 古き先祖の地を『人間』より取り戻した私達。

 未だ私達を見下し、報復と口にしながら私達を狩ろうとする『人間』。

 そんな私達と『人間』の、決戦の日。

 もう、どちらが先に始めたのかは関係ありません。

 やらなきゃやられるって、皆は言います。

 どちらかが滅びる必要はないと、私は言いたい。

 もう争うことを止める為の転機は、自分達で掴まなければ。



 相手が戦う気を根刮ぎ刈り取る為に。

 私達には徹底的に、相手を叩きのめす必要がある。

 アイツがそう言ったと、こっそり教えて貰いました。

 アイツがそんなことを言うなんて、信じられません。

 でも私が眠っている間のアイツは、私の全く知らないアイツだったと。

 それが物凄く、寂しくて。

 何だかアイツのことが分からなくなりそうで。

 アイツが言いそうにない台詞を、アイツは平然と言ったのでしょうか。

 遠く感じる必要はないのに、遠く感じて。

 寂しく感じる事自体が、どうしても寂しくて。

 私はひっそり、昔のアイツを懐かしみました。

 昔のアイツも今のアイツも、根本は全く変わっていないはずなのに。


 気を紛らわせる様に浮いては沈む、雑多な感情。雑多な考え。

 その全てを振り払い、今この時だけでも忘れようと。

 私は思考を閉ざし、考える頭を戒めて。

 一心不乱に、手足を動かし働きました。

 どこか上の空になってしまう、自分の雑念に悲しく思いながら。




 魔族と人間の大規模闘争(第一回)はじまる。


 歴史に名を残す大戦になるだろうと、誰もが予想しました。

 ぶつかり合う魔族と『人間』の数、その単純な戦力差は約五倍。

 それを覆し、互角以上の戦いに持ち込めているのは、魔族の力量。

 種族としての力の差が、大陸で初めて巻き起こる戦争を激しいモノにしてしまう。

 簡単に決着は付かないでしょう。

 何が決定打になるかは知りませんが、この時の私は魔族のことを見くびっていました。

 自分の仲間達だというのに。

 自分の大事な幼馴染みがひっさげた秘策の存在を、私は知らなかったのです。


 …秘策と言いました。ええ、言葉だけです。

 まあ、実際には秘策というより、魔力に物を言わせた力業に近かったと思います。

 何しろアイツが用意していたのは、魔族の特性である高い魔力の活用という単純な策。

 それを最大限に活用し、人数が多いことを利用しての作戦。

 今までの魔族の誰も、誰一人として発想しなかった大規模魔術。

 誰も作ったことも、使ったこともない、新魔術の投入だったんですから。

 




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