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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
決戦は避けられない
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番外 遠い未来で過去を思う

ほんのちょっぴり、アシュルーお兄さんの未来が出てきます。

あまり知りたくないよ!という方には引き返すことをお勧め。

内容も飛ばして問題ありませんので、ご安心下さい。



 魔族と、『人間』がとうとうぶつかり合った。

 その影響は大陸全土に及び、被害も大きく、ありとあらゆる生命に動揺をもたらす。

 以前からその徴候を感じとり、争いの火種を知っていた、他種族にさえも。

 いつかは正面から戦い合うことになると分かっていた。

 でも、彼等は知っていた。

 これが大陸が始まって以来、初めてのことだと。

 初めて起きた種族間の戦争…種族単位の、ぶつかり合いなのだと。

 未だ他種族と手を取り合って生きていた過去への思い入れ深く、憧憬も忘れていない。

 だというのに。

 魔族と『人間』の間に生じた亀裂は、修復不可能なのだと。

 事実を大々的に知らしめる、種族間の不和を象徴する出来事。

 そのことを目を背けようもない規模で、否応なく知らしめる。


 懐かしい過去を、伝承としてでも忘れてはいない。

 だが、その過去にはもう戻れぬのだと。

 微睡み、幸せに浸っていたいのに。

 血にまみれ、泥にまみれる未来が待っている。

 争い合うことが日常化して、既に久しいが。

 幸福だった過去には戻れぬ不幸を突きつけられ、多くの者が涙した。


 戦争という、争いの火種が燃え上がり、孵化した事象に。

 数数えきれない生命が燃え尽きようとする、この夜に。

 不毛すぎ未来だと知っていながら、避けられなかった。

 避けようともせずに、突っ走った者達。

 その背中を追いかけようにも、駆け抜けた時は早く、既に遠すぎて。

 これから生まれる不幸に、嘆きに、怨嗟に、殺戮に。

 悲しまないでいられる者は、いなかったのだ。









 それから、ずっと後のこと。

 ずっとずっと、後のこと。

 魔族の国が出来上がった後のこと。


 戦争の愚かさを若い者に言い聞かせ、語り継いでいく戦争経験者達。

 その中に一際紅い色に染まって、殺戮を繰り返した男が一人。

 彼もまた、年長者ぶって若くいとけない者達に戦争の愚かさを語る。

 実際には人一倍活き活きと、自分が楽しんでいたことを棚に上げて。


 ある日のこと。

 幼い愛娘を連れて兵達の訓練場に来た彼に、その愛娘が問いかけた。

 嘗ての部下達に未だに隊長と慕われる彼に、愛娘が問いかけた。

 アシュルーに、その娘のアーディラが、幼い顔を憂いに曇らせて問いかけた。

 

「ぱぱ、ぱぱ、どうしてヒトはあらそいあうのですか?」

「そりゃ、ヒトの私利私欲ってヤツが原因だな。一人一人がやりてぇこと、してぇことを我慢できねぇから、それがぶつかり合って争うんだよ」

「ヒトのおおきな我欲のなせる業なのですね」

「そんなもんだ」

「ぱぱ、ぱぱ」

「なんだ?」

「ぱぱがままに叩かれるのも、ぱぱの我欲がげんいんなのですか?」

「ばっか、あれは…っちげぇよ! あれは、あれはだ、なぁ…その……」

「隊長ー、娘さんに言い負かされてどうすんすかー?」

「それより俺は、お嬢さんの発育ぶりが末恐ろしいんすけど」

「確か未だ、お嬢さん…四歳、でしたよね?」

「おう。この間、誕生祝いしたばっかだからな」


 ちなみに魔族の成人は、50歳である。


「……アーディラのヤツ、最近王妃のことリスペクトしててな…」

「隊長…大変ッスね」

「お疲れ様ッス」


 遠い遠い、昔のこと。

 血にまみれ、泥をにまみれた過去のこと。

 血と夕陽に染め上げられた、あの赤い地で。

 そこに起こった陰惨な記憶。

 魔族と『人間』だけが引き起こした、虐殺の戦場。

 決して忘れることのできない、その記憶。

 大陸史上、たった一度の戦争。

 それを思い起こし、無邪気な娘の口にする、争いの無益さを心に浸して。

 争いを知らない若い魂を愛でながら、彼等は日常の何気なさの中に、争いを思い起こす。


 争いという言葉を聞くだけで、彼等はあの戦争を連想する。

 戦争という言葉を聞くだけで、彼等は血に染まった大地を思い出す。


 彼等は、記憶に蘇った忌々しい戦争に…

 深く疲れた様な溜息を零し、幼い娘へと、争いの無惨さを語り始めた。





現在、続きの書き方にちょっと悩んでいます。

内容や結果、筋道の大体の所は決まってるんですけど…


…ちょっと、続きを書くのに時間がかかるかもしれません。

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