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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
夢の中であいましょう
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79.変わったはずなのに、変わって無くて




 夢の中に『影』として現れたアイツは、大分様変わりしている様でした。

 でも、アイツです。

 アイツだと、私には一目で分かりました。

 薄くぼんやりとした『影』だけど。

 夜色の髪と月色の瞳は、それでも薄まることなく輝いていた。

 わたしの知るアイツとは違って、瞳の色が沈んでいたけれど。

 それでも、アイツだと思った。

 それだけで、充分だった。


 変わった事なんて、些細なことで、大したこと無いって思えた。

 だから躊躇いはない。

 勢いも充分。

 こんな子供みたいな振る舞い、常の私ならしないけれど。

 むしろやるならアイツの方で、私はいつもされる側。

 だけど偶には良いでしょう?

 私がやっても良いでしょう?

 アイツだって、偶にはされる側に回ると良いんです。

 勢いを殺しきれなかったら、後頭部が痛い思いをするんですから。

 この夢の中、精神体で痛みも何も無いですけれど。

 それでも、会えた感動を、嬉しさを。

 全身で現すなら、コレだと思いました。

 

 だから勢いそのままに、私は行く。

 私はアイツらしくない暗い瞳の『アイツ』に、思いっきり飛びついたのです。


 夢の世界の他の『影』達は、私が側で何をしても無反応でした。

 でも、違いました。

 他の『影』とは、違いました。

 私に対して、初めて反応が返ってきたのです。

 それも、アイツから。

 私が飛び込んだ先で。

 いきなり抱きついた私に、アイツの『影』が驚愕で目を見張るのが、確かに見えました。

 暗い暗い、アイツらしく無い表情の中で。

 初めて『影』のアイツの瞳の中に、光が見えた瞬間でした。



 そして私はそのまま、勢い任せにアイツの首に腕を回し…

 最初に探す事にした時から心に決めていた、暴挙を決行したのです。

 

 思いっきり、全身全霊で首を絞めました。


 この時、精神体の身体には無いはずの腕の感触が、アイツの首の感触が、確かにしました。






 私の勢いでぺっしゃりと潰れ、突っ伏したままぐいぐいと首を締め上げられて。

 いきなり予想外の展開が怒濤の如く押し寄せた為か、アイツは目を白黒させていて。

 あまりにも衝撃を感じた為か、表情が記憶よりも若干幼い。

 外見…というか、図体は記憶にないほど大きく成長しているのに。

 その顔を見て、随分と変わってしまったのに、中身は変わらずアイツだと実感しました。

 それがとても、嬉しくて。嬉しすぎて。

 私は思わず、アイツの首に回した腕へ、更に力を込めました。

 私は引きつるアイツの顔に、久しぶりの充足感を感じていた。

 

 ああ、久しぶりね。この感覚…。


 思えばアイツにお仕置きをするのは、一体いつ以来か。

 最近はちょっとマシになってきた気がしていたのに、忘れた頃に思い出したが如く、アイツってば馬鹿をやらかすんだから。殴って止めるにも、私だって手が痛くなると言うのに。

 その点、首を絞めるのは何処も痛まないので、軽いお仕置きにはもってこいです。

 実際の所はどうなのか分かりませんが、感覚の上で『首』と判断したものを締め上げます。

 今、私とアイツの身体って、傍目に一体どんなことになってるんでしょうね?

「ぐ、ぐぅ…っ」

「グター? とってもお久しぶりで私も再会を喜びたいんだけど、とてもそう言う訳にはいかない情報を入手してしまったの。私、どうしたら良い…?」

「と、取り敢えず…うで、腕を…首から、外し、て、くださ…い………っ!!」

「お願いします、と言ってくれたら考える」

「おっお願い、します…っ」

「どうしようかしら…?」

「待って、リンネさん! この期に及んで「考えるだけ」とか、止めて!」

 ほんの少し、戒めを緩めるとアイツは藻掻いてバタバタと暴れました。

 暴れるくらい、苦しんでいる様で何よりです。

 ですがコレは折檻なので、甘さと情けは無用です。

 私はアイツがもう勘弁してくれと、涙目になるまで締め上げました。






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