休日……
人は、僅かな月日の間に変わってしまう生き物なのかもしれない。最初はどんなに優しく見えても、そんなものは罠にでしかないのだ……。
「ん?だから照れなくてもいいんだって~。別に何もおかしくないんだよ!私のことを『お姉ちゃん』て呼んでも!」
わざわざこの人の名前を言う必要もないだろう……。一応だが、俺の姉だ。
キスをしてから数日が経ったら、突然こうなった。まるで人自体が変わったみたいだ。
結局、姉のことが好きなのかは分からない。ただ、穂に関しては確信を持てる。好きだ。二人の事を好きになるなんてことがあれば、死にたいものだ。
「いや……。別に呼びたくないから」
こんな会話を学校でされたら最悪だ。まあ、さすがに学校ではこんなことは言
わないがな。
「も~!照れなくてもいいのに!あそこまでしたのに~」
……。こいつほんとに人が変わってないか?
「仕方ないから、今からデートする?」
いきなりだが、分かったぞ!こいつ今話題(?)のツンデレとかいう奴だな!本当は、俺がキスした時にもう恋してしまったのか。不器用は可哀想だな~……。
「分かったよ。で、どこ行くの?」
「ゲーセンかな……」
ゲーセンとは、ゲームセンターの事だ。念のため。
「いいよ。まあ、貴重な休みを家族で過ごすのも悪くはないな」
「じゃ!決まりね~」
「おりゃあ!おりゃ、おりゃ……」
姉は、モグラ叩きをしている。正直、あんなにも叩いていいのか分からない……。
「何これ!?これで今日の2位スコア?どんだけ一位は点高いんだよ~」
……。たしかに、あの叩き方以上に叩くというのは至難の技であろう。見てみたいものだ……。
「ま、ランクインしたからいいや。名前は、アイドルと……」
「何でアイドル?」
「……。理由は無いけどさ」
一位の名前は……。ふくたろう?ネーミングセンスが無いね~。
「じゃ、次行こう!」
「次は?」
「シューティングゲームだね」
シューティングゲームとは、正式名はわからないけど、よくゲーセンに置いてある、迫り来るゾンビだったりを撃ち殺したりするゲームだろう。
「じゃ、今回は二人でね」
「了解」
こういうゲームをクリアしたこと無いんだよな……。ま、大丈夫だろう。
「おりゃ~……」
マシンガンを何故か打ち続けずに、一回、一回、指を離す……。
「て、はぁぁぁあ?」
……。こいつ全ての弾を外すことなく、殺すのに必要な数だけ弾丸を当ててやがる……。これが常識なのか?
「うわぁぁぁぁああ……」
「あ!何しんでんの?この雑魚に殺されるなんて……」
僕は下手何ですよ。しかも自分の画面見てなかったし……。
どうも、こいつはかなりの腕らしい。見物客が周りに集まっている。俺の勘違いでは無いらしいな。
「あの子かなり上手くね!?しかも可愛いし……。ナンパするか!」
「いや、どうも連れがいるみたいだよ……。しかもこいつはヘタクソだな……」
余計なお世話だ!それに姉は渡さないぞ!後、こそこそ話は相手に聞こえないようにしろよ。うるさいゲーセンでも丸聞こえだ……。
「おいおい!もうラスボスだよ……。さすがに早すぎるだろ。てか一度もまだ死んでないとか……」
「てか、隣の地味男日本代表は何だか……。何であんなカワイ子ちゃんの彼氏が……」
変なあだ名付けるな!どんだけ最低なヤツらだ……。
「どっうだ~」
「な……!?」
画面を見て驚いた。ハイスコアでクリアしてやがる!それにこの早さはないだろ……。
「すげ~!ハイスコア出しやがった!」
「おい!五十嵐!」
「何だ?」
……。今の返事は無かったことにしよう。
「お!やっぱり五十嵐じゃん!」
「あ!ふっくん!」
「よ!」
こいつら、いつからこんな仲良くなったんだ?
「お前セコいな~。いくらサラダがおかわり自由だといっても、ハンバーグセット一つでその量はないだろ」
「お前は何だ!カレーばかりおかわりしやがって!人のこと言える立場か」
俺たちは夜ご飯も兼ねて、ファミレスに来ている。
サラダバーは旨いからいくら食てもいいだろ。別にカレーだっていいがな……。
「そういえばさ、姉貴はアメリカで何してたんだ?」
俺は姉のことを姉貴と呼んでいる。まあ、これが一番、無難な気がする。
「ん?アメリカでは勉強ばっかり。それ以外の時は向こうの友達と遊んでた。留学生用の寮みたいのがあったんだ」
「ふーん」
結構大変だったんだな。意外と遊んでばかりかと思ったが。あのゲームとかを見ても……。
「ま、向こうは向こうで楽しかったよ。こっちに来てからは、遊んでばかりだし」
向こうの方が、暮らしは充実していたのかもしれない……。ま、こんな話はどうでもいいか。
「ふっくんと亮介は仲良いの?」
「良いも、何もだな、親友だな。今までは……」
良いことを言うじゃねーか!ん?今までは……?
「今までは……?」
「……。このタイミングだから言うか!」
「何だか、恥ずかしいけどねw」
何二人で隠し事してるんだ?
あ!もう一つ聞かなければならないことを思いだした。
「何か、二人仲良すぎないか?」
「実はそれなんだけどさ……」
姉が言おうとする。
……。なかなか言おうとしない……
「何なんだよ?」
少しキツい言い方になった気がする。
「私達さ、付き合ってるんだ……」