罠にはご用心
俺の目の前に、綺麗な少女がいる。彼女の名前は五十嵐薫。俺の姉だ。黒髪に僅かに茶色が混ざっている髪の毛。その他は説明し難いが、アイドルに近い。見た目も性格もだ。彼女は最近、突然俺の前に姿を現した。そして俺はキスをした……。
まあ、過去の話はこの辺で止めよう。今までの話で、賢い奴なら既に数々の疑問があるだろ?
まず、姉なのに何で同じ学年?穂と姉は初対面のはずなのに無駄に仲が良いのはなぜ?
穂というのは、俺の幼なじみでもあり彼女にしたい人でもある。髪型は茶髪で、いつもボケボケしてる。どう見ても、姉とは真逆な奴だ。
ほかにも疑問はあるが、取りあえずこのくらいでいいだろう。これを確かめる
には、やっぱり穂に聞くのが一番だ。
姉が来てからは、2週間が経った。俺は今日まで、悪い魔法にかかっていたようだ。冷静な判断ができなかった。今日になって、冷静になったら疑問が数々浮かんできた訳だ。
ま、こんな長話はここまでだ。
今は待ちに待った、昼休み。飯だ。
「お前の飯、最近可愛くなったな~。あ……、作ってる人が変わったのか」
「まあな」
よくわからない返答をしてしまった。
「そうだ!穂!」
すると、席が隣の穂はこちらを向いた。
「なに~?」
「あのさ……、何であいつと仲良いの?」
「あいつ?」
たしかにそうなるな。
「あ、姉」
「かおるん?だって昔から仲良いよ。5歳ぐらいからの仲だよ。5歳ぐらいから手紙のやり取りして……」
弟には手紙もなかったぞ!
「後、何で同じ学年なの?」
「え?双子だからでしょ……。それは私に聞かなくても……」
!?双子だと。つまりあいつと誕生日が同じ!?
冷静に考えれば、そりゃあそうだよな。
「ありがと」
「へへ~。どういたしまして~」
なんかかなり嬉しそうだ。どうしたんだ?
「おい、五十嵐」
「なんだい名字君?」
あ……。ついついニックネームで読んでしまった。ちなみにさっきから一緒に飯を食ってるのは福田だ。
今さらだが、福田隼人。通称、名字だ。理由は知ってるだろ?説明するには長くなる。
「名字て、誰だ?」
さすがアホ番長。気付くわけがない。
「ん?そんなこと言ってないぞ」
「そうか。今日午後暇?」
「穂との用事が……ごめんな」
すると、後ろからいらない声が来る。
「あ!今日は私友達とカラオケ~」
……?おいおい、酷いな~。
「なら仕方ないだろ?今日一緒に駅行こうぜ」
「どこに?」
「お前が行くべき場所だ」
どこだ?まあ、穂が無理なら行くか。暇だし。
「なら、仕方ない。今日は付き合ってやろう」
先に結論を言わせてもらう。世の中何でも軽く言わないほうが言いよ!罠が溢れてるのだから……。
「どうだ!テンション上がって来たろ」
「……」
上がるどころか、言葉を失ったよ。
「お前たしか、Hな物が駄目なんだよな。前に玉置に似てるやつAV見せたら吐いたんだよな」
……。あのさ!お昼だよ!今!
たしかに俺はそういうものが駄目なんだ。あんな物を見る気持ちが知れない。名字はこれを見るのが大好きらしいがな。
そしてこいつは穂にそっくりな奴の〇〇を見せてきた(○○は察してくれ。言いたくもない)。
たしかに最初はノリノリだったよ。でも見たら熱は出るし、吐くし……。うぅ……、また吐き気が。
「でもな、大丈夫だ。ここには数々のお品がある。お前が欲しくなる物もあるはずだ!」
……。もうわかったろう。ここは少し怪しい道にありそうな店だ。多分○○とかしかないんだろう。見た目からしてヤバイから。
「俺、帰る」
すると、やつは俺の手を掴み
「来てくれ!俺買いたいものがあるんだ!」
お前が行きたいだけだろ……。さすがのこいつも一人では心細いらしい。
「分かった。100円でいいだろう」
「安くね!?」
……?十分100円でも高いだろ!
「アホ番長め!100円で何が買えるか知ってるか?」
「お前がアホだろ。ここじゃ、100円だと何も買えないぞ……」
何呆れてるんだよ。呆れたいのはこっち。誰かこの店で買うなんて言った……。さすがアホ番長。
「ほら、行くぞ!男達のオアシスへ~♪」
「おい!大丈夫か?完全に顔が崩壊してるぞ。にやけ過ぎだぞ。まだ店に入ったばかりだぞ」
最初はこのノリで突っ込みもできた……。しかし、出来ない状況へと追い込まれた……。
部屋中に広がる、いかがわしい声(サンプル映像が流れている)。周りにいる、目がヒョウと化した男達。
さすがに、こんな所に来てることが穂に知られたら、俺なら、死ぬな……。
「あのAV、もらうぜ……」
……!!8000円!!高い!!最近、姉の勧めでゲームを買ったんだがそれよりも高い!!
「あの、福田君?君はそれを買う金があるのかい?」
「今さ、3万あるから。今年のお年玉全部使う」
親戚の人達聞いたかい?こいつはお年玉を○○に使うらしい。最低な人だ。
「お前さ、顔色悪いよ」
そりゃあ、こんなところにいたら……。
「なら、3階にはまだ18禁でないものあるからそこ行くか。これ会計してくる」
手慣れてるな~。こいつ既に何回か来てるな。
「会員証はお持ちですか?」
「はい」
すると、店員はスタンプを押す。
「おめでとうございます。30ポイント貯まりました。特典の500円QUOカードです」
「どうも~♪」
あいつ……。がっつり来てるじゃね~か。何だよ30ポイントて!?
「何でこの三階はこんなにも女の人が多いんだ?」
……。自分で聞いたから仕方ないが、爆弾踏んだな。
「それはだな、ここの一部がレディースコーナーでだな……」
「もういい」
これ以降は、健全な男子に悪影響をもたらすだろ!
あれ……?名字がいない……?いまさっきまで俺と話をしてたろ。
「あれ……?もしかして、五十嵐?」
恐れていたことが起きた……。目の前には学校の同じクラスの女子がいるのだ……。
「もしかして~、五十嵐、真面目に見えて案外のムッツリ?」
「失礼な。な、訳ないだろ」
「学校では、こういうものに興味無さそうだけど、実は一人こんな店来てるんだ~」
面倒なことに、こいつは福田の彼女だ……。まさか福田と来たとは言えない。
「いや、待て。お前もこんな店に来てる時点でそんなことは言えないはずだ」
勝った!普通の女子はこんなジャンルは興味がない。明らかに俺の優勢。
「ここはお互いに、今日のことは誰にも言わないことで良くないか?」
「なら、やっぱりあんたが金を出しなさいよ。口止め金」
何を言ってるんだよ!?こいつは自分の状況を理解できないのか?
「あのさ、あんたこんな趣味バレたら、穂にふられるよ」
「別に世間の男子は皆こうだろ?」
「え?何を言ってるの?とぼけようとしても無駄。この階は、レディースかジュニアアイドルのコーナーしかないの」
結局、何を言っているんだ?
「つまり、あんたはレディースグッズで遊んじゃってる変態か、ジュニアアイドルに興奮してる変態のどっちかなの」
「えぇぇえ!?」
何ということだ!?どっち選んでも人生終了じゃん!
「まさかね~、五十嵐は信じてたけどね」
……。いいんだ。そうさ。
俺は、自分のことよりも、親友を守るよ。……。さて、どうやって暴露しようか!もう即効で、福田を電話呼び出ししてやるか。
「待て待て。実はだな……」
と、最後に名前を言い掛けたときに
「違う!こいつは悪くない。悪いのは俺だけだ!」
福田がやってきた。まるでこいつが仲間をかばう良い役みたいではないか……。
「隼人!いや、でもあんたら仲間でしょ!五十嵐をかばおうとしても無駄だけど!」
「違う!なら、これを見ろ!」
福田はついに、禁断の○○を、彼女に見せるのだった……。
「いいんだ……。良かったんだ……」
「泣くな」
この結果だ。結局、こいつはあいつと別れるとこになったのだ。お互い秘密を知ってしまい、気まずくなるからな。なんか、暴露しようとした俺が、スゲー悪役に感じるのは気のせいか?
ついでにこいつは、ショックな事が起きると、人一倍へこむのだ。一時的にだが……。
「いや、新しい彼女を作ればいいんだ!まだ人生止めるには早いぞ!」
こんな感じに……。てか、そんなに悩んでたのかよ!
「分かった。今日は仕方ないからお前の家で○○見てやろう」
勘違いするなよ!!別に俺は見たい訳ではないからな。
「なら、今日は大量に見ることになるからな~」
「へいへい」
もう一度だが言わせてもらう。世の中迂闊に喋らないほうが良いよ。罠が溢れてるから。
この後どうなったかは、君らの想像に任せるよ!