『普通』の終り……
「やっと最後の敵倒したぜ~!」
いまいちなんのことか分からないだろ?
あれから3日。いまだに姉の風邪は治らない。その間、俺は学校を休まさせてもらっている。
そこで俺は初めて、真面目にゲームというものをした。
あの後、姉にやり方を聞いてみると、パソコンをやっていたおかげなのか、分からないが俺にも使えこなせた。まあ、成長したんだよな。
「おめでと……」
元気はまだ無さそうだ。俺の心まで痛む。しかしこの感じは何なんだろう?今までの俺であれば、確実に人事だと思って無視してたはずだ……。
「なら、たしか昨日から、RPGのネトゲーの、βテストが開始してるはずだからそれをやれば?」
???
いくら使いこなせたとは言え、RPGとか、β(?)とかさっぱり分からない。さすがにネトゲというのは分かるぞ。ネットゲームというやつだろ?
「『conqueror's mirror』というゲームなんだけど、ミラーて言われて今大注目のネトゲーみたいだよ」
さっぱりだ。とりあえず、ネーミングセンスが無いことは確かだ。
「アメリカと韓国で既にサービス開始してるみたいで、日本が昨日から」
よく分からない……。まあ、やれば分かるだろう!
「どれどれ……。これか!」
あった~!……?よくわからないが、ダウンロードすれば良いみたい……
「お~い!ダウンロードとか終わったのにできないぞ~」
分かりにくいぞ!インストールとやらはできたが、なんか訳分からない画面が出てきた。
「それ接続画面。会員登録したの?」
「してない」
キッパリ言ってやったぞ!
「そっか……。なら、もう一回さっきのサイトに入ってみて。会員登録できるから」
あれから、一時間がもう過ぎた……。やっとサーバーとやらに入れた。
「すげ~!このサーバーには100人もいるよ」
「多分、今はどこも100人で満員なはずだよ」
キャラクターには名前を付けられた。もちろん、『りょう』にした。
「で、今から何をすればいいの?」
「まず自宅を探して。そこにアイテムとかがあるから、武器とか選択」
自宅は……。何だ、もう目の前ではないか!
武器は……。まずはナイフでいいか。後、半壊した弓……。大丈夫なのか?
「で、武器選択終わったら?」
「ご飯食べたい!」
しかし、こいつは可愛いな。穂とはまた違った可愛さだ。 てか、人の話聞けよ!
「はいはい、わかったよ。もうパソコンは今度でいいや。一人じゃそろそろ限界」
そう言って、下へ降りていく。
しかし、最近の俺は姉に惹かれているのだろう。自分で言うのも何だが、何となく分かる。姉と二人きりでいることを楽しんでいる感じだ。実はそれもあり学校を休んでいる。
……、卵しかないな。まあ、卵ベースのお粥でいいかな。
ただ、その気持ちが俺にとって不快だ。今まで俺は、一途に愛している人だと思ってた。いや、今もだ。
それなのに、あの姉が来てから心が揺らぐ。俺の穂に対する気持ちは、その位の物だったのか?来たばかりの人に、長年の思いは壊されてしまうのか?
味の素入れなきゃ……。あと醤油。
俺は、穂を好きなのか……?
「おいしかった~♪」
徐々に食欲も回復してきたらしい。これなら明日は行けるかな?
「やっぱりね(もぐもぐ)熱が出たら美味しいものを食べなきゃ」
こういうところは穂に似てる。あのもぐもぐ感とか。
「料理は親譲りの上手さだね」
「ありがとよ」
「御馳走様でした」
「はいよ」
取りあえず、机の上に皿を置く。最近はいつもこうだ。
ピロピロピロリーン
メールだ。変な着メロだって?うるせ!
『亮君へ。今日もかおるんのお世話?がんばってね♪』
神きたぁぁぁあ!やっぱりあいつは神だな。うん♪神!
「じゃ、私は寝るから……」
こうして、姉は寝てしまった。
俺はこうやって、姉の寝顔を見ている。特に何も考えてはいない。すやすやと寝ている。
……。何も考えていないなんて嘘だ。完全に緊張している。相手は姉だ。でもその前に女子だ。
自分の立場になって考えてみろよ?突然、可愛らしい人と同居をしだすんだぞ。姉と言われても緊張はするだろ。
後、穂とは決定的に違う可愛さがある……。こいつは、まるでアイドルだ。いつでも笑顔だし、疲れてる時がないみたいだ。穂は普段からボケボケしてるし、こたつでゴロゴロしてるばかり。まあ、そこがあいつの可愛いところなんだが。
……。やっぱり、気持ちははっきりするべきだ。調べる方法ぐらいあるはずだ……。
姉に……、キスをすれば……?気持ちは分かるのではないか?意味不明なのは分かってる。個人的な欲求というものだって中にはあるはずだ。
でも、今はこれしか考えられない……。こうするしかないんだ。
……。
「ぅぅ……」
姉は完全に気づく。そりゃそうだ。この数日寝たきりだったし、すぐに寝れる訳がない。しかし、気にしなかった。
俺はそのまま姉の布団に入り、抱きしめたまま眠った……。
「ぁぁ……」
眠いね~。朝だからね~。
既に姉は起きているようだ。もしかしたらソファで寝てる可能性もあるが。
姉は、キッチンで料理を作っていた。体調はもう良いらしい。姉はこちらを向いて、言われたくなかったことを言いかける。
「あのさ、昨日の夜のことなんだけどさ……」
「思い出させないでくれ。すまなかった……」
「……」
なんとも酷いやつだ。勝手にキスをした上に、思い出させないでくれだと!?俺が女ならビンタだな。まあ自分が言った科白だが。
結局、キスをしたけど何も分からなかった。前みたいに寝てしまった。
とりあえず、結論はまだ出なさそうだ。昨日みたいな事はもうしたくない。
ピロピロピロリーン
メールか……。
『かおるんお風邪治ったんだって?じゃ、今日からまた一緒に学校行こう^^』
……。俺は、穂のことが好きなんだよな?
もういいか。取りあえず、細かいことは気にしないで今を生きよう。もう『普通』という道からは脱線してしまったんだ。それだったらそれなりに、人生を楽しむか……。
このときは気づけなかった。こんな曖昧な気持ちが人を傷つけていくことになるなんて……。