だるいよね!
「……!?何で?何え!?」
穂は言った。悲鳴に近い声で、最後は言葉にもなっていない。
穂が俺の家に居るのはなぜか?と聞きたいみたいだな。変な話だが、あいつに家の合い鍵を渡しているのだ。信頼はできるし……。
既に誤解を生じているが、落ち着いて説明しなければ……。
「いや、これについてはだが「だまれ!!!」」
……。
穂は、例の鍵と箱みたいな物を俺に投げつけて部屋を出て行く……。
「追いかけな……。ごめん」
なぜ謝る?もうよく分からねぇー!
姉が部屋を出て行く。……。箱は弁当でしたか。
「恥ずかしいだろ……」
さて、急いで追いかけよう……。とは言っても、あいつの家は俺の近所。5秒もあれば行ける。
しかし……。家には居ないようだ。
ならどこだよ?取りあえず、電話……。いや、メールがいいか。知り合いに一斉に送信だ。
『穂を見たら教えてくれ!』
これでいい……。
とにかく走ろう……、走るしかない!
春の生暖かい風邪を受けながら、とにかく走る。穂が心配だし……、ほかに何か大事なことがある気がするんだ。
俺は、何かに気付けなかったんだ。
気がつけば、メールが二件来ている。
『ん?穂ならさっきまで遊んでたけど』
と、バスケ部の仲村。
『このメールには本文がありません』
と、福田……。また名前を封印されたいのか?
一体、穂は何処にいる?目が泣きそうだったからな。まずいな。
あいつが落ち込んだ時に何処へ行くのやら……。
バッティングセンターか!あいつはそれでストレスを解消するはずだしな。
「みのるー!いるかー?」
……。この中に今女の子は居ないな……。
ならどこだよ!?強く落ちていた空き缶を蹴り飛ばす。
俺が一番、穂を理解してると思ってた……。一番愛してると思ってた……。
ただ、そう思い続けてきた人を傷つけた。俺は糞だ。
せめて、穂は見つけたい……。ここで穂が見つからなければ、もう明日からは話すことも許されないはずだ。
……。なんだかんだで俺はずるくて卑怯なやつだな。こんな状況になったら、穂に会いたい。
あいつが大好きだ!なんて言葉を言うことは許されない。でも、あいつを見つけて言いたいことがあるんだ。
俺に選択肢は二つだ。穂を見つけて仲直りか、穂を見つけられずに引きこもりになる。
ま、その二つでは選ぶものは決まっている……。見つけるしかないだろ!失いたくない物の価値はでかいからな!
誰も、失わない……。
そんなかっこいい台詞を言っていたら、河原に一人の少女を見つけた。誰かは言わなくてもいいだろう。
「みのるー。おーい!」
「帰れ」
言葉を発すると同時に石を投げてくる。恐ろしい……。
「いや、なら一緒に帰ろうぜ!」
「あんたは……大好きなお姉ちゃんのところにでも行ってな……」
人て、……。性格が変わるよな!それも突然!最近になって学習したことだ。
「何言ってんだよ?俺が好きなのは「死ね!」」
言葉の最中に割り込んでくるとは……。
ついでに石をまた投げつけられる……。いや!数がおかしいって!なんで、5個同時?それを連続で!?
「待て!落ち着け……。落ち着け!」
河原に寝ている穂を止めようとするが運悪く、足場をなくし転がり落ちる……、そのまま川に転落……。
浅いからいいが、服はびしょびしょだ。
穂もさすがにこちらを心配しているが、近づいてくる様子はない。
仕方ない……。帰るか。世の中諦めが肝心なのかもな。明日からでもまだ遅くはない!
そうさ!今は危険すぎる!
そう考えて、帰ろうとしたらだ。
「……。も、もう、帰っちゃうの?」
……。……。一つだけ言わせて。
女子てだるいよな……。