表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

巫女の到来

作者: しろぎつね
掲載日:2026/02/23

南の魔女のシリーズです。

10か月ほど空いてしまいました。

明け方まで降っていた雨が止み、空が次第に明るくなってきた。

じきに晴れ間が見えるだろう。

メイドのカレンはいつものように主人を起こすために部屋の扉を開けた。

「あら、魔女様、お目覚めでしたか」

いつも寝坊助なのに珍しいと、カレンの顔に書いてある。

「今日は精霊の占いで北の方向が良いとあったんだよ」


食堂ではリザが料理を運んでいた。

「あ、先生。おはようございます」

「おはよう」

三人で食べるようになって食事時間が少しにぎやかになったなとミュウは思う。

「今日は北の方に散歩に行くのだが、リザ、一緒についてきてくれるかな?」

「お供しますが、珍しいですね」

「たまにはね」


朝食の後、魔女はリザを伴って北に向かって出発した。

「こちらの方面には初めて来ますね」

「まあ、何も無いからね~」

遥か北方には山脈がある。

その山脈には魔竜がいた。

リザが倒してしまった。

何事もなければ良いがなあ。

「いや、良い事もあるか」

ミュウはリザを見て言う。

「え、何がですか?」

首を傾げるリザに魔女は優しく微笑み返した。

「たまには二人で散歩をするのもいいものだろ」


長い時間歩いて森が見えてきた頃、リザが何かに気がついた。

「先生、先の森の中で誰かが襲われています」

「ほう、さすがだな」

その地点までの距離は1リア(約1km)以上。

普通の人間でそのような遠くの気配がわかるとは、リザは確かに一流の剣士だなとあらためてわかる。

「こちらに出てきます。どうしますか?」


+++


カチューシャはアイリの手を取りながら森の中を走っていた。

遠巻きに大きな狼が5頭。

カチューシャだけなら余裕だが、アイリを狙われると少し厳しい。

森を抜けて一度態勢を立て直さないと。


やっとのことで森を抜ける。

しかしそこにはすでに新たな7頭の狼が待ち構えていた。

アイリは足が止まってしまった。

顔も青ざめている。

カチューシャはそれでもアイリだけは絶対守ると覚悟を決めて構える。

狼たちが距離を詰めいよいよ飛びかかろうと動き始めた時、風が流れた。

黒の風が狼たちをなぎ払う。

狼たちは悲鳴をあげる間もなくほぼ一瞬で地に倒れた。

黒い風は一度人間の姿を見せると、今度は森の方に飛んでいった。

ほどなく狼たちの気配は全て消え去った。


呆然と立ちすくむ二人のところへ、ローブ姿の女性が歩いてきた。

「おお、間に合ったようだな」

ローブの女性は顔をニコニコさせている。

「先生、狼は片づけました」

いつの間にか森から戻っていた黒い影が言う。

黒い革鎧を着た剣士の女性だった。

なんて美しい人なんだろう、とカチューシャは思った。


「助けていただいてありがとうございます」

ローブの女性と黒い剣士に礼を言う。

「私はカチューシャ、こちらの女の子はアイリと言います」

少し落ち着きを取り戻したアイリがぺこりと頭を下げる。

「私は南の魔女と呼ばれている。この剣士はリザ」

ローブの女性の言葉を聞いてカチューシャは目を見開いた。

「南の魔女様ですか!?、え?、本物がこんなところに?」

狼狽するカチューシャと驚いて目をまん丸にしているアイリを見て、ミュウは苦笑して言った。

「まあ、まずは家に帰ってからにしようか」


+++


一行が家のところまで戻ると、カレンが玄関前で待っていた。

「お帰りなさいませ」

「よく帰る時間がわかったね」

「いえ、窓から見えていましたので」

「そか、じゃあカレン、お客様をお願いするよ。大きい子がカチューシャ、小さい子がアイリだ」

「はい。それではカチューシャ様、アイリ様、こちらへどうぞ」

カレンが二人を連れて行くのを見て、ミュウはリザに言った。

「それでは私たちはお昼まで休憩しようか」


+++


食堂に入ると既に皆集まっていた。

カチューシャとアイリは湯浴みしたようで、すっかりきれいになっていた。

カチューシャは水色の、カレンは黄色の衣装を着ていて二人ともかわいらしい。

リザとカレンが料理を並べている。

人が多いとなんだかわくわくするな、ミュウは思った。

「それではお昼にしようか。いただきます」


食事は温かいものが中心だった。

甘いカボチャのスープ、魚のムニエル、野菜もやわらかくしたものが中心で、子供でも食べやすいようにしてある。

まずは食べながら互いの自己紹介をした。

「私はミュウ。ここの主をしている。みんなから南の魔女と呼ばれている。こっちのメイドはカレン。何でも知っているから困ったことがあったらカレンに言ってもらったらいい」

カレンが軽く頭を下げる。

「そちらがリザ。遠い国から来たすごい剣士だ。北の森で見たと思うけど、とても強い」

「これ程まで強い人がいるなど思いもしませんでした。本当に危ないところをありがとうございました」

カチューシャがお礼を述べると、隣でアイリがうんうんと首肯している。かわいい。

「いやいや、間に合って良かったよ」

リザはニコニコしている。

「じゃあ、あらためて大きい子からいってみようか」

カチューシャは大きい子と言われるのに慣れてなさそうに話し出す。

「私はカチューシャと申します。東の国の村で村長の大姉様に仕えていました。今回こちらのアイリと一緒に南の魔女様のところに行く様、命を受けて参りました」

カチューシャはミュウに大姉様から預かった手紙を渡す。

「ありがとう、ではお嬢さん」

「アイリと言います。東の国でカチューシャさんと同じ村に住んでいました。南の魔女様にお会いするために来ました」

アイリは丁寧にお辞儀をする。

ミュウはうなずきながら話を促した。

「さて、二人がここに来たいきさつを教えてもらおうかな」

「では私の方からお話します」

カチューシャが答える。


ある日東の国に突然魔物が現れたこと、アイリが召喚獣を呼び出して追い払ったこと。

「そして、一連の騒動の原因を探るという名目で南の魔女様のところに来たという訳です」

「なかなか良い判断をされる人のようだな」

ミュウは手紙にさっと目を通して言った。

「リザはどう思う?。西の王国は動く?」

リザはしばし考え、

「そうですね、西の王国は魔獣のことを気にするでしょうね。その大姉様の予想はおそらく当たるのではないかと」

と答えた。

東の国ではアイリは守りきれないが、南の魔女なら西の王国にも負けない。

「また使者が来るかあ。使者が可哀想なんだけど」

「まあ、儀礼的には仕方がないことかと」

先日勇者たちを撃退したばかりだ、実力行使はないと思っていいだろう。

「とにかく、リザがとても強いからね。二人とも安心してここにいていいよ」

アイリがほっとする顔が見える。

強いのはあなただろうという目でリザがじっと見てくるが、気にしないことにする。


食事が終わる頃、ミュウがアイリに尋ねた。

「そうだ、アイリちゃん、君は召喚獣を自由に呼ぶことはできるかな?」

「えと、あの時はとっさの事だったので、どうやって呼べたのかわかりません」

アイリはすまなさそうに言った。

「いいよいいよ。多分少し修行すればできるようになると思うよ」

ミュウが自信を持って言うのをアイリは不思議そうに見つめた。

そんなにうまくいくのかしら。


「さて、話もとりあえず済んだから」

ミュウがにっこり微笑んで言った。

「アイリちゃんとカチューシャ氏の部屋をどこにしようかな?」


+++


カチューシャは大姉様への手紙を書いていた。

カチューシャとアイリは別々の立派な部屋をもらった。

こんな立派な部屋はもったいないと思ったが、ミュウは余っているからねと言って笑っていた。

無事目的地に着いたが、これからの事は一度休んでから考えよう。

そう思っていた時、扉を叩く音がした。

扉を開けると、アイリが小さくなって立っていた。

「一人で寝るのが心細くて。今日は一緒に寝ていい?」

カチューシャは優しく微笑みながら、

「いいですよ。今日は二人で寝ましょう」

そう言って、アイリを部屋に入れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ