32/34
(この視点は櫻井のものではない)
何だろう…気分が悪い。
退院したはずなのに。
人として見てなかったけど、お見舞いに来てくれた櫻井には感謝している。
千羽鶴を持ってきてくれたし、良いクラシック曲を教えてくれたりもした。
――そこから少し、記憶がない。
気が付くと、目の前にはロープの輪っかがあった。自然に足が進む。やめたいのに、抗えない。
椅子に立ち、輪っかを首に掛ける。
スマホを操作し、音楽アプリの再生ボタンを押す。
その瞬間、僕は椅子を蹴った。
息が苦しい。ロープを外したいのに外せない。
部屋に短調の曲が鳴り響く。
ふと思ったことを呟く。
「櫻井、ごめんな。」
――それが、僕の最期の言葉になった。




