20/34
転換
あの日から、僕と二条さんは付き合っているのに若干距離を置くようになった。その理由は明確だ。
僕は、付き合うのを期に歌い手を辞め、声優としての人生をスタートさせた。
その時、ある事実も知った。
二条さんは、アイドルであるということに。
声優とアイドルの恋愛事情なんか興味がない人は多いが、いわゆる週刊誌などはプライバシーの侵害なんか知らないかのように書きまくる。
だから、普段は距離を置いて、こっそり交際することにしたのだ。
そんなある日の夜。
僕は二条さんと待ち合わせをして、一緒に出かけることにしていた。
しばらく待っていると、二条さんがやってきた。僕は髪をかき乱して前が見えづらいようにして(週刊誌に顔を載せたくないという意志から、少しでも顔を隠すようにしている)「それじゃあ、行こうか。」と言う。
最初は恥ずかしがっていた手を繋ぐことも、今ではまったく恥じらわない。
そうして徐に歩き出そうとした、その瞬間。フラッシュの光が見え、シャッターを切る音がした。僕はすぐに気づき、二条さんの手をしっかりと握って走り出した。
僕はその時察した。
「これ、スキャンダル扱いされるな」と。




