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ホウレンソウ

 早朝の議員会館。


金井事務所の電話が鳴る。

政信が受話器を取る。


 「お世話になります。金井事務所です。・・・」


電話は通じている様だが、相手の声が聞こえない。


 「もしもし、金井事務所です。・・・モシモ・・・」


突然、受話器から金井の声。


 「あれはどうした」

 「あッ! おはようございます。アレ? あ、枝野君の件は『そう云う事なら校長が何とかする』と言ってました」

 「そんな事は分かってる。浦口の裏口だ」

 「すみません。先生のおっしゃってる事が分かりません」

 「医者の息子だッ!」

 「あ、大丈夫です。これから確認に行く予定です」

 「甘いモノは忘れずに!」

 「ハイ」

 「 で、勉強会の券の進捗状況は?」

 「養鶏組合が遅れてます」

 「そんな事は分かってるッ!」

 「? 先生、今どこにおられますか?」

 「うるさいッ! 東京からも請求しなさい」

 「え? あッ、ハイ」


金井は地元の事務所で『会議』を行っている様である。

金井と大川の声がする。


 「いや先生、鳥インフルで大変なんですよ。あまり接っ付くと『強要』に成ります」

 「それはソレだ。弱気じゃ事は運ばないぞ!」


政信が、


 「モシモシ? 先生?」

 「うるさい!」

 「あッ、お疲れさまです」

 「オマエはバカか? さっき起きたんだ。疲れてなんかない! あれを出せ!」


今日の金井は荒れている。


 「失礼しました! あの、アレって? 松永サン?」

 「バカッ! 結城だ!」

 「あ、結城さんは代理主席で、十時の九段会館へ直行してます」

 「代理? ・・・何の?」

 「農林事業振興総会です」

 「総会? うちの選挙区と関係あるの?」

 「嬬恋村農協の中村さんが来賓出席していると」

 「・・・。安藤の件は? アナタも立ち会ったんでしょうね!」

 「あ、ハイ」

 「ホウレンソウッ!」

 「ハイ。茂樹派の関係会社がゴネているそうです」

 「モテギ?」

 「あ、入札金額に納得いかないようで」

 「その土建屋は何て会社?」

 「一区の崎田サンです」

 「何ッ!・・・ああ、茂樹派か」

 「下請けには公明党さんが絡んで居ります」

 「あんれま~あ。うかうかしてたら寝首をかかれちまうぞ。安藤くんはその辺は調整してあるんだろね」

 「はい。崎田サンの方は結城さんが動くから心配はありません」

 「結城が? アレは強引だからねえ」


すると大川の声が。


 「先生、伊勢崎の富士重工には必ず顔を出して下さいね」

 「あッ、そうだ。何時からだっけ?」

 「十時半です」

 「何ッ! 今出ないと間に合わないじゃないか」


金井は受話器を握り、


 「あれに連絡を取って、私が『ホウレンソウ』はどうした? と言っときなさい」

 「ハイ」


電話が切れる。

                          つづく

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