表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/50

密 談

 議員会館が夕闇に包まれる。


結城、政信、安藤の三人が応接室で『密談』をしている。

テーブルの上にはダンヒルのタバコ、ケーキ、コーヒー、お茶が置いてある。

事務室から松永の声。


 「すいませ~ん。お先に失礼しまーす」

 「お~う! ご苦労さん。後で神田の旨い焼鳥屋に連れて行くから」

 「え~、 信じて良いのかなあ」

 「俺はウソはかないよ」

 「本当ですか~。じゃ、お疲れ様でした」


松永が事務所を出て行く。


 事務所には三人が残る。

結城は空のコーヒーカップを持ち、ソファーを立つ。


 「ちょっと、熱いのに替えるべえ」


結城は安藤のコーヒーカップを見て、


 「替えましょうか」

 「おお、そうね」


結城はカップを二つ持って事務室に行く。

応接室に安藤と政信が残る。

政信は安藤を見て、


 「・・・失礼な事をお聞きしますが、仕切りシキリヤってどんなお仕事ですか?」


安藤は突然の問いかけに、


 「シキリヤ!?」

 「松永サンから、『仕切り屋』と聞きましたけど」


安藤は力強く、


 「僕は仕切シキってなんかないよ。流れを調整しているだけだ」


政信は首をカシげる


 結城が入れ替えたコーヒーを持って、ドアーの開いた応接室に入って来る。

政信を見て、


 「オメー、飲むんだったら自分で入れて来いよ」

 「ハイ」


結城はテーブルにコーヒーを置いて、ソファーに座る。

安藤が結城を見て、


 「わるいねえ」


結城は入れ替えたコーヒーを一口、口にして、


 「で?」


安藤はダンヒルのタバコを一本抜き、抜けた歯の間に入れる。

政信はすかさず例のライター(ディユポン)で火のサービス。


 「おう!」


政信をニラみ、タバコを深く吸い込み歯の間から煙を出す。

政信はウツいてジッと笑いを堪える。

安藤がおもむろに話始める。


 「実はねえ、あるヤツから依頼されて」

 「あるヤツ?」


安藤が政信を一瞥ベツ

結城は安藤を見て、


 「ああ、コイツなら大丈夫。口は固てえから」


結城は政信をニラむ。


 「あ、ハイ」


安藤はまたタバコを深く吸い、天井に向かって歯の間から煙をゆっくり吐き出す。

そして急に身体を前に倒す。

それに続いて結城と政信も体を前に。

安藤はおもむろに話始める。


 「拡張工入れて資材高騰で予定価格十億六五〇〇、五社呼ばれて今回のチャンピオンは大成・徳高のJVが九億七三〇〇で落とす予定」

結城が驚き、

 「なんだい、もうそこまで話が進んでるんですか」


安藤は結城と政信をチラッと見て溜息まじりに、


 「ただ、一社がどうしてもねえ。このままだとモグラ叩きだ」

 「? で、その一社って云うのは?」

 「群馬の崎田と神奈川のフジミ工業のJVなんだよ」

 「サキタ? 茂樹派(旧竹志田派)か。めんどくさいのが絡みましたね」


政信が、


 「モテキ?」


結城はいぶった化な顔で政信を見て、


 「 オマエは少し黙ってろ」

 「あ! ハイ」


安藤は話を続ける。


 「そのめんどくさい会社ですよ」

 「崎田に変な噂でも流れてるんですか」

 「いや、実はフジミの方なんですがね」

 「フジミ? 神奈川のフジミかあ。聞かねえ名前だな」

 「いや、俺はそんな事どうでも良いんだ」

 「え?」


政信は安藤と結城の会話を目を丸くして聞いている。


 「私が頼まれているのはその下の『下請け業者』なんですよ。どうせ、フリーに成っても『二五』を切ったら『不調』で流れる。崎田としても、前々から上手くやっている裏仲間だ。昨日今日キノウキョウの新参者じゃねえし、一応フリーに成っても仁義だけは通すでしょう」

 「で、頼まれている下請け業者っていうのは?」

 「東京の日下工業という所です」

 「クサカ? どっかで聞いた事があるなあ」

 「堀田サンの所の秘書が顧問をしている会社ですよ」


結城は驚いて、


 「ええ、堀田の! 津山が顧問だったのかあ。なるほど」

 「そう。で、かりに、叩き合いに成っても八億三〇〇〇止まり。落札業者の利益をマックスで三割とすると、こっちの見積もりじゃ六億七千から七億」

 「え~えッ! 七億? 七億で出来るんですか?」

 「大丈夫でしょう」


安藤は軽く答える。


 「面白オモシれえ。て云う事は崎田の息子を何とかコンペに引きずり込み大成・徳高で丸く収めれば良いという事かな?」

 「それが出来れば、それこした事はないんですが、不二壬フジミの『焦げ付き』は幾らあるのかなあ」

 「コゲツキ?」


結城は驚いて安藤を見る。

安藤は意味深イミシンな表情で「ニッ!」っと笑う。

結城が安藤のシナリオにハタと気付く。


 「そうか! よし、乗ったッ! で、入札日は?」

 「五月の連休が明けて直ぐ」

 「五月の連休明け?」


結城は代議士の机の裏壁のカレンダーを見る。


 「三ヶ月後か。具流! 面白く成って来たぞ。安藤さんッ! 美味オイシイしい話を有り難う御座います。来週の火曜日迄、待って下さい」

 「・・・一週間か」


安藤はタバコをクリスタルの灰皿に強く押し消し、結城と政信を見る。


 「分かりました。上手く行けば、大きいですからねえ」


安藤が席を立つ。

結城もそれに続き席を立ち、右手で厚い握手を求める。

安藤はそれに応え、差し出された右手を握る。


 「じゃッ」


政信も我に返り、席を立つ。


 「あッ、ご苦労様です!」 


安藤は何も言わずに応接を出て行く。

結城が笑顔でもみ手すり手で安藤の後を追う。


 「いや~、いやいや、安藤さんには負けるなあ。有難うございま~す」


安藤は振り返らず事務所のドアーを開けて退所して行く。

ドアーが静かに閉まる。

政信は映画のワンシーンの様な雰囲気に、


 「格好良いですねえ」


結城は政信を見て、


 「? どこが」


事務室の電話が鳴る。

政信が受話器を取る。


 「お世話になります。金井事務所です。もしもし、・・・もしも!?」

 「うるさい!」


金井である。

政信は恐縮して、


 「あ! お疲れさまです」

 「疲れてなんかない。バカ者が 」

 「失礼しました」

 「何をしてる」

 「はい、今、安藤さんとの打ち合わせが終りました」

 「結城に代わりなさい」

 「ハイッ! 結城さん、本人から一番です」


政信が電話を応接室に切り替える。

結城は得も言われぬ顔で応接の受話器を取る。


 「ハイ! 代わりました」

 「いいね。あまり深く掘らない事。今は周りの眼が厳しいからね」

 「ハイッ!」

 「で、大川クンから電話はあった?」

 「オオカワ? あ! まだ無い様です」

 「マダナイヨウです?」

 「あ、すいません。土屋くんに替わります」


結城はソファに座る政信に受話器を渡す。

政信が驚いて、


 「えッ!」


結城は小声で、


 「大川から電話が有ったかとよ。適当に答えとけ」

 「はい」


政信が元気良く、


 「ハイッ! 電話かわりました。大川さんは鋭意努力しているとの事です」

 「何ッ?」

 「あ、丁寧に進めているそうです」

 「アンタ、時々わからない応え方をするね。結城に替わりなさい」

 「ハイッ!」


政信が結城に受話器を渡す。

金井の怒った声が漏れる。


 「どう成っているの?」

 「あ、だから緊張感を持って・・・」

 「バカ者ッ!」


電話が切れる。

                          つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ