大手ゼネコンへ営業
朝の青山通り。
ビル街の一角にタクシーが停まる。
結城と政信がタクシーから降りる。
目の前に立ち誇る大きなビル。
玄関の周りには良く手入れされた植栽が植え込まれている。
植栽に囲まれて大理石に、金の文字で『西村建設』と掘り込まれた社名が。
ここは日本屈指の『大手土建会社』の本社である。
結城が走って階段を上がって行く。
黒いカバンを小脇に抱えた政信が後を追う。
結城が受付で女(受付嬢)と話している。
結城に追いついた政信は息を整えて、
「すいません」
情けない政信を一瞥する結城。
案内係がフロアーに出て来る。
「お待たせしました。ご案内します」
結城はわざとらしく、慇懃に、
「いや~、イヤイヤイヤ、お手数、掛けまあ~す」
結城と政信は案内係に先導されてエレベーターホールに向かう。
案内係はエレベーターのボタンを押す。
後ろで待つ結城と政信。
案内係の得も言われぬ芳しい香りが漂う。
結城は政信に耳打ちをする。
「品良くな! 何も喋んなよ」
「はい」
結城は政信を見てニヤッと笑う。
政信はポケットからそっと『デュポンのライター』を取り出し結城に見せる。
結城はその高価なライターを見て驚き、政信の手からそれを奪い取る。
ジッと見つめてる結城。
「・・・」
結城はライターを自分のポケットに仕舞い込む。
「あッ!」
案内係は後ろが騒がしいので清々(スガスガ)しい笑顔で振り向く。
結城と政信は何も無かった様に正面を向いて咳払いをする。
一階にエレベーターが降りて来る。
ドアーが開き、案内係がドアーの端を押さえ、
「どうぞ」
結城は、
「あ、恐縮でーす」
結城は政信にそっとライターを渡してエレベーターに乗り込む。
二人が乗り込んだのを確認し、案内係も乗り込み十五階のボタンを押す。
エレベーター内で結城が小声で政信の耳元に、
「靴ぐらい磨け!」
政信は自分の足元を見て、
「あッ!」
エレベーターは十五階で停まる。
ドアーが開く。
そこで上席担当の『美人秘書』が二人を出迎える。
案内係は上席担当の秘書に引き継ぐ。
「よろしくお願いします」
「かしこまりました」
後を引き継いだ秘書が、
「お待ちしておりました。ご案内します」
廊下一面に敷かれた、紫色のカーペット。
政信は担当の秘書(超美人)の後姿に目が点。
秘書は奥から二番目の部屋に二人を案内する。
ドアーには「社長応接室」の札が挿してある。
白魚のような手で拳を作り軽くドアーをノックする秘書。
「コンコン」
返事を待たずにドアーを開ける。
「どうぞ」
広い応接間には超豪華な応接セットが。
長いサイドボードの上には、備前焼きの花壺に季節の花が一輪、室内の派手さを押さえている。
「どうぞ掛けてお待ち下さい」
結城が応接室の中を見回し慇懃に、
「イヤ~、イヤイヤ、豪華なお部屋だ~」
結城と政信はソファーに座る。
美人秘書はニッコリ笑い、軽く会釈して部屋を出て行く。
つづく




